テレビ回復、ネット堅調続く、残り3マスは…(経産省広告売上推移:2014年7月発表分)

2014/07/11 08:30

経済産業省は2014年7月9日付で、「特定サービス産業動態統計調査」に関する2014年5月分の速報データ(暫定的に公開される値。後程確定値で修正される場合がある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。それによると2014年5月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス2.1%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象としている業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「雑誌」がマイナス6.1%と、一番大きな下落率を示している。またその「雑誌」を含め4マスでは「テレビ」以外の3項目までがマイナス値を記録した。一方「インターネット」は前月における前年同月比とほぼ同じプラス幅を示し、堅調さを見せることとなった(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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主要項目は新聞、雑誌、ラジオがマイナス


今件記事で精査しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、それらの記事の集約ページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。

まずは主要5項目の動向について確認の意味も含め、グラフ化を行う。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年4月-2014年5月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年4月-2014年5月)

今件データは前年同月比を示したものだが、同時に前月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分となる2014年4月分のデータ(先月記事で用いた速報値の後に発表される、確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている場合もある)と並列してグラフ化している。今回月では「新聞」がプラスからマイナスに転じ、「テレビ」はマイナスからプラスに転じた。前月の記事で「4月の広告費は年度方針の動きが出やすい」との言及をしたが、「雑誌」は前月同様大きなマイナス値を示したままであり、懸念は高まるばかり。前年同月に当たる2013年5月が大きなプラス値を示したがための反動でも無く(該当月はマイナス2.0%)、雑誌業界の不調ぶりが改めて認識される。

該当月、つまり2014年5月における大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【ネットが堅調、テレビが奮闘、あとの3マスちょっとダメ(電通・博報堂売上:2014年5月分)】で個々の相当する項目の動きを確認すると、博報堂の「雑誌」がイレギュラー的な動きを示しているが、概論的には今回の経産省のデータと似たような、つまり4マスでは「テレビ」以外が不調、「インターネット」が堅調という流れとなっており、データの類似性・連動性が改めて確認できる。もっとも電通・博報堂の動向では「雑誌」よりも「新聞」の方がマイナス方面の動きが大きく、紙媒体の市場は苦境に追いやられていることに違いは無いものの、場面によりさまざまな動きが生じていることを想像させる。

ちなみに4マス+ネット以外の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年5月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年5月)

「震災以降の電力に絡んだ制約の大きさを受け、従来型広告は息を吹き返した」といういつもながらの言い回しは今回はまったく当てはまらず、「屋外広告」「海外広告」を中心にダイナミックな下げ幅をグラフ上に描いている。もっともこれは多分に前年同月において、思いっきり大きな伸びを示したことによる反動の部分が大きい。

例えば「屋外広告」「海外広告」は前年同月ではそれぞれプラス78.6%、プラス47.2%であることが確認できる。2年前同月比を試算するとそれぞれプラス8.1%、プラス27.0%。突然一般広告が縮退を始めたわけではない次第である。

インターネット広告の対新聞優性は続く


今回も該当月(2014年5月分)における、各区分の具体的売上高のグラフ化を行う。各項目の市場規模をざっとでは推し量れるのがポイント。広告代理店業務を営む日本企業は、電通と博報堂が最大手ではあるが、その2社がすべてでは無い。さらに各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されているわけではないので、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。例えるなら東京と大阪だけで日本のすべてが表されているわけではない、ということだ。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年5月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年5月、億円)

ここ数年は金額面では「インターネット広告」が「新聞」を超えており、最後のイレギュラー的な反転は2014年1月分に起きたのが最後(【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2013年)(最新)】も参考のこと)。今回月もまた、「インターネット広告」が大きく伸び、「テレビ」に続く立ち位置を占めている。「新聞」との額の差は80億円近く、約1.3倍にまで差は開いている。もっとも「新聞」は最近手堅い動きを示すことも良くあり、一方で「インターネット広告」はその機動力の高さから値幅が大きい動きを示すため、何らかの偶然も作用することで、立ち位置の入れ替わりが短期間的に起きる可能性は否定できない(例えば選挙などで新聞の需要が増えた場合、そのような事態が発生するかもしれない)。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年5月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年5月)

さて、次のグラフは今件記事で対象としている5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。従来型広告が大きく動き、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。概要的な流れをつかむのには適している。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年5月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年5月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する場合が多い。つまり金額は少しずつ減っていることになる。少なくとも広告費の上では両メディアの低迷が、短期的なものでは無く、長期的なものであることが改めて認識できる。奇しくも両媒体は紙媒体であるという共通性を有しているが、デジタル系メディアの伸長を考慮すると、その影響を受けての動きであることは否定できまい(一部はコンテンツそのものが紙からデジタルに移行し、それに合わせて広告もシフトした事例もあるだろう)。

濃い藍色で記された「ラジオ」は、「新聞」や「雑誌」よりも低明度が大きい。具体的には「0%」より下の領域にばかり位置している。これはすなわち、前年同月比でマイナスが続いている、いいかえれば売り上げが減少し続けていることになる。

一方気になる動きとしては、2012年後期以降の流れがある。それ以前と比較すると、「インターネット広告」の激動を中心に、激しい上下感がなくなり、ゆるやかな動きに収まっている。各メディアのパワーバランスの大調整が終わり、細かな調整期に入ったと見るべきだろうか。全体値を示す赤い太線がプラス領域にある期間が長くなったことも合わせ考えると、各広告間の立ち位置に関して微調整を続けながら回復しつつあると、昨今の状況をまとめることができそうだ。



「雑誌」の軟調さは前月でも言及したが、今回月も再び主要項目では最大の下げ幅を記録しており、まさに抜き差しならぬ状況といえる。金額そのものは月次で73億円強と決して小さな額ではないのだが、昨今の雑誌を取り巻く環境の変化と合わせ見るに、色々と複雑な想いが去来する。

無論これが同じく先月指摘の通り、消費税率の改定に合わせて生じたイレギュラー的なものである可能性もゼロとはいえない。同じく直接消費者が対価を支払って購入する「新聞」もまた小さからぬマイナス値を示しており、共通性があるからだ。つまり「消費税率改定に伴い、購読者が減るかも?」「媒体力が減るかも?」「ならば広告出稿の優先順位を下げるか」という次第である。

そして雑誌も新聞も定期購読スタイルが多いため、購入側が一度購入を止めると、それは継続してのものとなるため、仮に影響を受けて媒体力が減った場合、それは継続することになる。ちなみに先日伝えた電通・博報堂の最新分、すなわち2014年6月分の動向では、やはり4マス中では「テレビ」のみが好成績を挙げており、「新聞」「雑誌」は双方とも大きなマイナス値が示されている。

ともあれ特異な動きを示している「雑誌」と「新聞」には、これまで以上に注意を払いたいところだ。


■関連記事:
【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(下)…ネット以外動向概況編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【前年比プラスの1.4%・総額5兆9762億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2014年)(最新)】

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