ネットの堅調さとテレビのどうにかプラス感、残りの3マス「がんばりましょう」(電通・博報堂売上:2014年6月分)

2014/07/10 11:30

博報堂DYホールディングスは2014年7月9日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2014年6月分となる売上高速報を公開した。また電通ではそれに先する同年7月7日付で、同じく同社6月分の単体売上高を発表している。これで日本国内の二大広告代理店における2014年6月次の売上データが出揃うこととなった。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、さらには各種指標を当サイト側で独自に算出し、その値を基に各種広告売上動向、そして広告業界全体の動きを確認していくことにする。

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ネットは大きく背伸び、テレビはそこそこプラス、新聞・雑誌・ラジオは…


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録している。必要な場合はそちらで確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年6月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年6月分種目別売上高前年同月比

震災で一時的な変化、さらには中長期的な影響が生じた面もあるが、広告市場のトレンドは大よそインターネットが広告媒体として認識され、変容が見え始めた以降の流れを継続している。新聞・雑誌・ラジオ・テレビで構成される従来型の4マス(マスメディア)は相対的・絶対的に勢いを減じているものの、テレビは高齢化社会の恩恵を受けてやや持ち直しの中にあり、他方インターネット広告は大きな成長を続けている。また新聞も不規則な動きではあるが復調の兆しを示している。一方4マスとインターネット「以外」の従来型広告では、震災以降の電力消費に対する及び腰な状況を反映し、良い流れを見せている。

今回6月分では、従来型4マスのうちテレビのみがプラスを示している。テレビは市場規模が大きく、比率としては小さくても広告市場全体に与える影響は大きい。結果、電通の総売り上げを大きく底上げする形となった。一方新聞・雑誌・ラジオは不調。ここしばらく堅調な動きを示していた新聞の電通での下げ方がやや目立つが、前年同月の反動はごく一部でしかない(2年前比ではマイナス11.8%となり、雑誌の2年前比マイナス11.9%とほぼ横並びとなる)。

インターネットは今回月は両社とも順調。特に博報堂が大きく伸びているが、これは前年同月の反動では無い。両社とも1年前における前年同月比はプラスであったことから、加速度的な上昇を示している。仮に2年前比を試算すると、電通はプラス27.2%、博報堂にいたってはプラス49.2%に達する。日々前進、しかも日に日にその歩幅が大きくなっているイメージである。

従来型広告では博報堂の「その他」、電通の「OOHメディア」をのぞけば大よそプラス。この博報堂の「その他」におけるマイナスぶりは前年の伸び(前年同月はプラス17.0%だった)の反動によるところが大きい。

↑ 参考:電通2014年6月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2014年6月度単体売上(前々年同月比)

電通の2年前比を算出すると、大よそ昨今の広告市場の動向を表した方向性を示している。具体的には「4マスではテレビ以外は軟調」「インターネットは好調」「従来系広告はそれなりに堅調」という形である。

電通の今回月における過去からの総額推移


次のグラフは電通の今世紀における各年6月の広告売上総額推移を抽出し、折れ線グラフにしたもの。同じ月の経年売り上げ推移であることから、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じること)にとらわれることなく、年単位での売り上げ推移、そして広告市場の情勢を推し量れる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年6月、億円)(-2014年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年6月、億円)(-2014年)

6月分の動向を見る限り、2007年夏に体現化しはじめた金融危機、さらにはリーマンショックによる広告費の減退、持ち直しを見せ始めた時に生じた震災の影響による広告市場の縮小ぶりは2011年に底打ちし、以降は少しずつ復調状態にあるように見える。もちろん直近の2014年でもまだ金融危機前の水準には手が届いておらず、さらなる回復が求められることには違いない。

なお冒頭で大きな縦長のグラフにより両社の前年同月比の動向を記しているが、これを印象のみでとらえて、電通と博報堂の間、さらには同一社内の項目間での具体的な金額面においても、同じ意味を示していると勘違いする事案が生じている。例えば今回月ではインターネット広告の前年同月比の幅は、博報堂が電通の約2倍だが、これをもって「博報堂のネット広告費の額面増加額は、電通の2倍だ」と考えてしまうというものだ(電通が100億円のプラスなら、博報堂は200億円のプラスと考えてしまうもの)。これは正しい把握ではない。

下記に金額面から見た具体例をまとめてグラフ化しておく。項目別では成長著しいインターネット分野の市場規模だが、従来型4マスの最大勢力であるテレビと比べると数分の一でしかない。

↑ 電通・博報堂DYHDの2014年6月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2014年6月における部門別売上高(億円、一部部門)

また、電通と博報堂間では売上総額で約2倍、「その他」部門でも数倍以上もの差がある。得手不得手も一因で、項目種類別では差をかなり縮めている場面もあるが、両社の許容範囲、規模の違いは確実に存在している。



広告市場は景気動向と大きな連動性がある。金融不況時には大きく市場が縮小し、両社とも額面を大きく減らしていたのが好例である。その観点では2014年4月の消費税改定に伴う消費の委縮、そしてそれを引き上げるトリガーとなる今夏のボーナスやそれらの動向に大きく影響する夏の気候が気になるところだが、先日発表された景気ウォッチャーの最新情報【先行きDI減退、その理由は…2014年6月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落】などによると、やはり冷夏に対する警戒感は非常に強く、これが実体化すれば景気が冷え、結果として広告市場も縮小する可能性はある。

現時点では長期予報も気温において「8月西日本高め」「9月西日本低め」となり、大よそ例年通りとの予報にシフトしている。実際の気候はまた別の話だが、以前と比べれば景気面での先行きは明るく、その分広告市場への期待も大きくなる。一方、冷夏で無ければ少なくとも例年並みの電力消費量が予想され、それは【「今年も数値目標なし」…2014年夏の節電要請内容正式発表】で説明した通り昨年以上に厳しい電力事情と合わせると、電力を多分に使う部門の広告が、より厳しい環境に置かれることになる。夏が暑ければ一様に広告市場はハッピー、というわけにもいかないのが昨今の事情といえる。

今回月では特に4マス中、紙媒体の軟調さが目立つ。昨年同月からの反動でも無く、中期的な減退度合いが数字となって表れている感は否めない。デジタルメディアの浸透が進んでも、紙媒体には紙媒体なりの良さがあり、それを活かした切り口の広告を見出せれば、少なくとも現状維持はかなうはずではあるのだが。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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