雑誌も含めて市場規模3000億円超え…「電子書籍ビジネス調査報告書2019」発売

2019/07/23 12:51

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2019-0723株式会社インプレスのシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は2019年7月23日、電子書籍の動向、電子書籍に関する市場規模の推計結果を発表するとともに、その内容を詳細にまとめた出版物【「電子書籍ビジネス調査報告書2019」】を同年7月31日に発行すると発表した。今回はそのリリースで公開された、同調査における一部要項を基に、日本の電子書籍市場動向を確認していくことにする(【発表リリース:2018年度の市場規模は2826億円、海賊版サイト閉鎖を受けて前年比126.1%の大幅増 -電子書籍に関する調査結果2019-】)。

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今調査によれば直近2018年度(2018年4月1日から2019年3月31日まで)の日本国内における電子出版市場は3122億円。これは電子書籍市場に電子雑誌市場を加えたものだが、電子新聞、教科書、企業向け情報提供、ゲーム性の高いもの、さらには書籍や雑誌提供時の通信費、端末本体価格、各種制作費用、広告費などは該当しない。他方、定期購読や月額課金モデル、月額定額制の読み放題の仕組みによる課金は含む。

↑ 電子出版市場規模(確定分のみ、2014年度以降は電子書籍は機種別区分をせず一括、億円)
↑ 電子出版市場規模(確定分のみ、2014年度以降は電子書籍は機種別区分をせず一括、億円)

↑ 電子出版市場規模(確定分のみ、電子書籍の内訳、億円)
↑ 電子出版市場規模(確定分のみ、電子書籍の内訳、億円)

パソコン向け電子書籍市場は当初全体に占める比率も大きかった。当時の携帯電話(従来型携帯電話)では「携帯電話で書籍を購読する」との概念そのものがまだ受け入れがたいものがあったのも一因。しかし従来型携帯電話の普及と性能アップにつれ、パソコンは全体に占める比率を下げていく。さらに機動力の低さもあり、モバイル端末全般に押される形で、2007年度をピークに市場そのものも縮小する。無料化が進んだのも「(金額面換算の)市場」が縮小した原因の一つだろう。

モバイル端末では当初従来型携帯電話による市場拡大が続いていた。以前ブームとなり、若年層から絶大なる支持を受けた「ケータイ小説」を覚えている人も多いはず(中には自ら執筆した経験を有する人もいるに違いない)。ところが2009年度あたりからスマートフォンやタブレットなどの新世代の端末の普及に伴い電子出版への展開も進み、それとともに従来型携帯用の市場は縮小していく。2010年度がピークとなり、以後は急速にその規模を縮め、2012年度ではスマートフォンやタブレット型端末などの新世代プラットフォームに市場規模の上で逆転されてしまうことになる。

2014年度分からは電子書籍において公開資料の限りでは機種別が行われていない。これは従来型携帯電話による電子書籍の提供が縮小の一途をたどっているのに加え、機種限定の提供サービスが減ったことなど、機種別区分の必要性が薄れた、意味を成さない実情に対応したものと考えられる。

直近分となる2018年度分だが前年度と比べ書籍の伸びはプラス約26%、それに対して雑誌はマイナス約6%の減少を示した。書籍が大幅な伸び率を示したことについてリリースでは「社会問題化していた海賊版サイトが2018年4月に閉鎖されて以降、多くの電子書籍ストアが多額のマーケティング予算を前倒しで投入したこと、結果的には海賊版サイトが電子書籍の認知度向上につながったことも遠因となり、新規ユーザーの増加や平均利用金額の増加につながり」とコメントし、一連の海賊版サイトの騒動とその結末が、電子書籍の売上に大きく貢献した(元々あるべき姿に戻した)と説明している。

他方電子雑誌は計測期間の限りでは初めて前年比でマイナス。リリースでは何の説明も無いが、後述する今後予想でも前回年発表時分と比べて一層下方修正されており、市場規模の観点においては市場規模の拡大は望めないとの認識なのだろう。

今件発表資料ではこれまでの調査結果や業界動向を基にした、インプレス総合研究所による今後の市場動向予想も語られている。

↑ 電子出版市場規模(2019年度以降は予想、億円)
↑ 電子出版市場規模(2018年度以降は予想、億円)

↑ 電子出版市場規模における前年度比成長率(予想含む)
↑ 電子出版市場規模における前年度比成長率(予想含む)

先の震災による流通網の混乱や紙・インクなどの素材不足による印刷冊数の減少をカバーするための電子書籍化による提供をきっかけにした、電子媒体化への加速、2011年度から2013年度にかけて急速に進んだ携帯電話市場におけるスマートフォンへのシフト化に伴うシェアの変化や市場規模そのもの拡大など、予想がつきにくい要因により、電子出版市場はこれまで何度も大きく様変わりしてきた。今後も類似の情勢変化で大きく様式が、スタイルが、方向性が変わる可能性がある。今件予想はそれらの「ゆらぎ」によるイレギュラーな変動は盛り込みようが無く、あくまでもこれまでの状況変化が今後も継続したらとの仮定に基づいたものだが、十分に参考になる値ではある。

電子雑誌の伸び率だが、予想値を見れば分かる通り、2018年度は計測期間内では初めて前年度比でマイナスを示し、それ以降もしばらくはマイナスを示し続ける、つまり市場規模は縮小するとの予想が出ている。読み捨て需要が大きく、無料提供のパターンが多い雑誌は電子雑誌におけるビジネスとしては難しいというところか。

法人、コミュニティサイトを問わず、ビジネスモデルの一環として、無料で電子書籍・電子雑誌を(一部)提供し、その上でプラスα版や完全版を紙媒体として発売する手法も増えている。電子媒体に紙媒体同様の対価を支払うことに抵抗感を覚える人もまだ多い。そこで電子媒体を試供版・プロモーション素材と割り切り、紙媒体を実対価が期待できる商材メディアとする手法である。この場合、コンテンツの量は確実に増えるが、電子出版「市場」規模はそれほどの伸びは見せなくなる。電子雑誌市場が縮小する予想が出ているのは、あるいはその「お試し版的な情報公開の場」として、電子雑誌を位置づけるとの認識が少なからず、特にコミック系にあるからなのかもしれない。

インターネット界隈は各種技術の発達や市場動向に伴い、大きく様変わりしていく。電子出版市場は周辺業界を巻き込む形で、出版物全体としての概念、様相も少しずつ、そして確実に変化を続け、従来の紙媒体における市場の概念を超え、領域拡大を遂げていくに違いない。


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