ネットが堅調、テレビが奮闘、あとの3マスちょっとダメ(電通・博報堂売上:2014年5月分)

2014/06/11 11:30

博報堂DYホールディングスは2014年6月10日付で同社グループ主要3社の博報堂、大広、読売広告社それぞれの2014年5月分となる売上高速報を公開した。また電通ではそれに先行する同年6月6日付で、同じく同社5月分の単体売上高を発表している。これにより日本国内の二大広告代理店における2014年5月次の売上データが出揃う形となった。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、さらには各種指標を当サイト側で独自に算出し、その値を基に各種グラフを生成し、各種広告売上動向や広告業界全体の動きを確認していくことにする。

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ネットが大きく伸び、テレビは好調、新聞・雑誌・ラジオは今一つ


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件シリーズのバックナンバーは【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録している。必要な場合はそちらで確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年5月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年5月分種目別売上高前年同月比

震災で一部変化があったが、広告業界のトレンドは大よそインターネットが広告媒体として認識されはじめたあたりからの動向を踏襲している。新聞・雑誌・ラジオ・テレビで構成される従来型の4マスは概して相対的・絶対的に勢いを減じているが、テレビは高齢化社会の世情を受けてやや持ち直しの機運を有し、またインターネット広告は大きな成長を続けている。さらに昨今では新聞がやや復調の兆しを示している。一方4マスとインターネット「以外」の従来型広告も、震災以降の電力多量消費に対する及び腰な状況を受け、良い流れを見せつつある。

今回5月分では、従来型4マスのうちテレビが好調。テレビは市場規模自身が大きく、プラス7%前後でも全体に与える影響は大きい。一方それ以外の新聞・雑誌・ラジオは不調。博報堂で雑誌とラジオがプラス領域にあるが、雑誌はともかくラジオは前年の反動に過ぎない(2年前比ではマイナス6.2%)。

インターネットは今回月は両者とも非常に良い値を示している。前年同月の両社の動向を確認すると、それぞれプラス6.7%・プラス15.0%であることから、「前年同月がマイナス値だったので、その反動を受けて」という話では無く、むしろ「そこからさらにこれだけ伸ばしたのか」との驚きの値ともいえる。2年前比を試算すると、それぞれプラス45.2%・プラス49.6%。2年間で4割から5割近くの躍進と表現すれば、いかに大きな歩幅で歩んでいるかが理解できよう。

従来型広告では博報堂の「その他」をのぞけば概ねヨコヨコかやや弱め。これは前月からあまり変わらず、博報堂の「その他」が具体的に何を示しているのかが気になるところではある。もっとも額面自身が小さい(ラジオの2/3程度)ので、ぶれの部分もかなりあるのだろう。

↑ 参考:電通2014年5月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2014年5月度単体売上(前々年同月比)

電通の2年前比を算出すると、テレビはややイレギュラーなところがあるが、大よそ業界全体の動向を示す結果が出ている。すなわち「4マスではテレビのみ順調」「ネットが強い」「従来型は結構イケテる」である。また今月の動向は両社合わせて推し量ると「ネットとテレビが順調」という形でまとめられよう。

電通の総額推移で市場回復感を探る


次のグラフは電通の今世紀における各年5月の広告売上総額推移を抽出し、その動向を折れ線グラフにしたもの。同じ月の経年売り上げ推移を見ることで、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じること)を考慮することなく、年単位での売り上げ推移、さらには広告市場の情勢を推し量れる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年5月、億円)(-2014年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年5月、億円)(-2014年)

5月分の動向を見る限り、金融危機の露呈、リーマンショックを受けて大きく縮退した広告市場は、底からようやく脱却しようとした矢先に震災の影響で出鼻をくじかれ(何しろ2011年5月は震災からまだ2か月しか経っていない)、それ以降は少しずつ、確実に復調している感はある。しかし直近の2014年の水準で、ようやく金融危機以前の状態に手が届くようになった程度で、まだ十分以上に伸びしろはあるようにも見える。

2014年4月に実施された消費税率の改定だが、少なくとも消費性向、消費者向け市場動向では、ゴールデンウィークを機会に風向きが変わり、今は夏のボーナスに向けて期待が高まるばかりの状態にある。消費が伸びて市場が活性化すれば広告市場もそれに連れて伸長し、電通・博報堂の売上増加も顕著化する可能性は高い。7月以降の売上性向に変化が見られれば、その動きが景況感の回復を示す一つの指標となるに違いない。

なお冒頭で呈した大きな縦長のグラフだが、各項目は類似・同一であるが、電通と博報堂の間、さらには同一社内でも項目間で具体的な金額面では、同じ意味を示しているわけでは無い。例えば今回月ならテレビの上げ「率」こそ両社で似たような値を示しているが、額面(上の増えた額)がほぼ同じということを意味しない。

下記に金額面から見た具体例をまとめてグラフ化しておく。項目別ではインターネット分野の市場規模は、従来4マスの最大勢力であるテレビと比べると数分の一に留まっている。インターネット広告は成長過程にあるが、それでもテレビとは言葉通りケタ違いの市場規模でしかない。スマートテレビの浸透、スマートフォンやタブレット機の普及率向上など、インターネットを取り巻く環境は日進月歩の勢いだが、現状ではテレビの広告費にインターネットが追いつくのは極めて困難である。

↑ 電通・博報堂DYHDの2014年5月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2014年5月における部門別売上高(億円、一部部門)

また、電通と博報堂間では売上総額で約2倍(テレビが良い例だ)、「その他」部門でも数倍以上もの差がある。得手不得手も一因だが、両社の許容範囲、規模の違いは確実に存在する次第である。



先日発表された【「今年も数値目標なし」…2014年夏の節電要請内容正式発表】の通り、今年の夏もかろうじて数字目標無しの節電要請に留まり、数字目標付き、さらには電力使用制限令の発動や輪番停電のような、より生活や経済に圧迫を強いるような状況にはならないとの見解が表明されている。しかし電力需給そのものは昨年よりも危うい状態にあり、電力に対する厳しい視線が向けられることに違いない。

また一方、今夏がエルニーニョ現象の発動を受けるかもしれない、さらにそれに連動する形で冷夏の可能性があるとの話も持ち上がっている。仮に冷夏となれば、夏物商品の売り上げが落ちるため広告市場への影響も小さからぬものがありえる(市場縮小となるのか、あるいは喚起させるために拡大されるのかまでは不明。多分に前者となるが)。

さらに電力需給問題やエルニーニョ現象とは別に、電力発電上のバランスが崩れたままで推移していることから、【電気代・ガス代の出費動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2014年)(最新)】で示した通り、電力価格の上昇は続き、確実に家庭・企業の懐を圧迫しつつある。電力を多分に使う広告もまた、クライアント側が躊躇してしまう風潮が強まりを見せている。

消費税率改定、電力事情、エルニーニョ現象など、プラスとマイナスどちらにでも振れうる小さからぬイレギュラー現象が重なり、今夏の広告市場動向は読みにくいのが実情。経産省の広告費に関する月次更新記事同様、電通・博報堂の売上もまた、先が読めない流れが続くことになろう。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(下)…ネット以外動向概況編】

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