ネットは躍進、4マスは落ち込む・特に雑誌が大幅減(経産省広告売上推移:2014年6月発表分)

2014/06/10 11:30

経済産業省は2014年6月9日付で、「特定サービス産業動態統計調査」に関する2014年4月分の速報データ(確定値に先立ち公開される値)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。それによると2014年4月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でマイナス0.5%となり、減少傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象としている業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「雑誌」がマイナス13.2%と、一番大きな下落率を示している。またその「雑誌」を含め4マスでは「新聞」以外の3項目までがマイナス値を記録した。一方「インターネット」は前月以上のプラス幅を示すこととなった(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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主要項目は雑誌、テレビ、ラジオがマイナス


データの取得場所や速報値と確定値の違い、過去のデータなど「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、それらの記事の集約ページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。過去の記事一覧もあるので、気になる人はチェックをしてほしい。

まずは主要5項目の動向について。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年3月-2014年4月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年3月-2014年4月)

今件データは前年同月比を示したものだが、同時に前月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分となる2014年3月分のデータ(先月記事で用いた速報値の後に発表される、確定値に修正済み)と並列してグラフ化している。今回月では「雑誌」「テレビ」の2項目がプラスからマイナスに転じ、しかも「雑誌」はマイナス13.2%と大幅な減少を示している。元々各媒体とも4月は3月から打って変わり、年度替わり最初の月であることから額面そのものは減退する傾向があるのだが(年度末は色々と消費がなされることが多く、それを目当てに広告も多く打たれる。その反動ともいえる)、同時に年度単位における広告出稿側の戦略転換の影響が出る月でもある。「今年度は前年度のプラス30%」「昨年度お願いしていたが、今年度はちょっとパス」という具合である。

従って4月分の動きは概してこれから1年間の各部門での挙動を占う、良い指針ともなりうるのだが、これを見る限り、「新聞」「テレビ」「ラジオ」の動きは誤差範囲としても、「雑誌」の大幅な減少は今後の動向を暗示しているようで、少々不安になる。

該当月、つまり2014年4月における大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【博報堂のネット部門が大いに伸びる(電通・博報堂売上:2014年4月分)】で個々の相当する項目の動きを確認すると、やはり「インターネット」の堅調、そして「雑誌」の不調が大きな動きとなって表れている。雑誌そのもののセールスは別としても、出稿広告量・料の動向は、今後あまり思わしくない流れに移行する懸念が出て来たと言える。

ちなみに4マス+ネット以外の一般広告の動向は次の通り。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年4月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年4月)

震災以降の電力に絡んだ制約の大きさを受け、従来型広告は息を吹き返した形となっている。今回月では前回同様に「海外広告」は大きな伸びを示したが、それ以外は概して軟調。特に「屋外広告」の下げ方が著しい。先の「電通と博報堂」の記事で確認しても、やはりこの分野は足踏み状態にあることから、踊り場状態的な場面を迎えているのかもしれない。また「海外広告」はぶれが大きいことと市場規模の小ささから、この動きが4マス以外の広告全般を象徴しているわけではないことを書き記しておく。

額面はやや縮む


今回も該当月(2014年4月分)における、各区分の具体的売上高のグラフ化を生成する。広告代理店業務を営む日本の企業は、電通と博報堂が最大手ではあるが、その2社がすべてでは無い。また各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は微妙な違いが生じている。従って【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。同じような名前の項目で額面が一致しなくても、不思議な話ではない。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年4月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年4月、億円)

ここ数年は金額面では「インターネット広告」が「新聞」を超えており、最後のイレギュラー的な反転は2014年1月分に起きたのが最後。今回月もまた、「インターネット広告」が大きく伸び、「テレビ」に続く立ち位置を占めている。もっとも「新聞」は最近手堅い動きを示していることと、「インターネット広告」は次のグラフに示す通り(その機動性の高さから)大きなうねりを示しつつ漸増していることもあり、今後も時折双方の立ち位置が入れ替わる時があるかもしれない。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年4月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年4月)

さて、次のグラフは今件記事で対象としている5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。4マスとネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降であることから、それ以降に限定した流れを反映させている。細かい動きはさすがにこれから判断するのには無理があるが、概要的な流れをつかむのには適した図として仕上がっている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年4月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年4月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では下側に位置する場合が多い。つまり金額が漸減していることになる。少なくとも広告費の上では両メディアの低迷が、短期的なものでは無く、長期的に渡るものであることが把握できる。双方とも紙メディアであるのは偶然……とは言い切れまい。

また、濃い藍色で記された「ラジオ」は、新聞や雑誌よりも状況は一段とネガティブなものとなっている。一時的なプラス圏への移行もほとんど無く、ほぼマイナス圏を低迷したままの状態が続いている。これは前年同月比の推移であり、それがずっとマイナスを維持しているということは、売り上げがずっと減り続けていることを意味する。それは単に広告市場の縮小としてだけでなく、「ラジオ」のメディア力がしぼんでいることをも意味する。

またその「ラジオ」も含め、堅調に見える「インターネット広告」ですら、2007年夏にトリガーが引かれた金融危機、リーマンショック、そして東日本大地震・震災による有意な下落が確認できる。広告出稿の面でも、これらの事象は影響を与えたという次第である。

さらにいえば2012年後半を過ぎると、それまでと比較して「インターネット広告」を中心に、激しい上下幅が発生しなくなっているのも特徴の一つ。また赤太い線の動きからも把握できる通り、やや復調の流れにあるのも注目すべきだ。



本文中でも触れたが毎年4月分の広告費は前月の大盤振る舞い的な流れから一転して、大きく縮小される傾向にある。加えてその先1年間の動向を指し示す指針的な流れを組むこともある。数%の上下ならば誤差の範囲として気にも留めずに済むのだが、さすがに今回の「雑誌」におけるマイナス13.2%とい値は、無視を決め込むわけにはいかない。

可能性の一つとして、このタイミングがちょうど消費税率改定の時期でもあったことが挙げられる。たまたま税率改定関連でどたばたしただけ、翌月には復調しているはず……と考えたいのだが、仮に2年前同月比を試算してもマイナス12.3%と大きな値には違いないし、過去1年間の値動きをさかのぼっても、前年同月比でマイナス月は「ラジオ」(12か月)に次いで多い(8か月)のが実態ではある。

「新聞」がこの一年ほどの間、意外にも復調傾向にあるのは本文でも触れた通り。同じ紙媒体ではあるが、「雑誌」と「新聞」の間には、これからの1年間で大きな差異が生じることになるのかもしれない。


■関連記事:
【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(下)…ネット以外動向概況編(特定サービス産業動態統計調査)(2014年)(最新)】
【前年比プラスの1.4%・総額5兆9762億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2014年)(最新)】

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