砂糖がじわりと上昇中、乳製品は下落継続(2014年5月分世界食糧指数動向)

2014/06/06 15:30

昨今の日本では原材料の価格上下よりもむしろ消費税率の引き上げに伴う購入価格の変化に注目が集まりがちだが、一次生産品はもちろん各種加工品の多くもまた、世界規模の食料品価格市場の動向に少なからず影響を受けている。えびの供給量激減に伴う価格高騰でお寿司屋さんにおける対応の変化や、粉物系食材の価格引上げは記憶に新しいところ。また数年前の大規模な乳製品の高騰や品不足も、国際的な食材の価格変動が大きな要因となっている。それら国際的な食料品の価格変動を大まかな視点で確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が調査の上公式サイトで毎月定期的に発表している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2014年6月5日に発表された最新版の値、2014年5月分を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値などからグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を精査していく。

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安値安定、ただし砂糖と食肉が上昇気味


今記事中にあるデータの取得元、各種用語に関する解説は、一連の記事のまとめ・バックナンバー収録ページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらで確認のこと。

まずは最新の値を含めた収録データを基に、1990年以降の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年5月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年5月)

砂糖は価格変動性が高い食料品であり、投機的な対象の食品(もちろん先物)として多くの作品に登場する。その実態がグラフ上の動向で再認識できる。それ以外の食品は概して2005年位までは大人しい動きに留まっており、その分砂糖の値動きの荒さが目立つ。

しかし2005年終盤以降、砂糖だけでなく他の食品も少しずつ価格が上昇し始める。その後金融危機のきっかけとなる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起き、それぞれの項目は記録上これまでに無いような上昇機運となる。

これらの上昇の理由は、主に株式市場の暴落によるもの。当時の株式市場の暴落で、そこから逃げ出した投資資金の流入先として商品先物が目を付けられ、多数の投資家が選び、資金が投入されてしまった。結果として元々投機的な市場動向に、さらなる拍車がかかることになる。市場規模は商品先物市場の方が小さいため、大量の資金の投入により、各市場の反応は大きなものとなる。例えるならば子供用の水車のおもちゃに、消防車の放水チューブで水を吹きかけたようなものだ。

その後は急激かつ不自然な上昇にはつきものの反動による急降下、「リーマンショック」(2008年9月以降)による乱高下(資金流入の度合いは先「サブプライムローンショック」の比ではない)を経て、現在の高値安定状態に移行する形となった。各食品項目は200から250位のボックス圏で位置している。基準値でもあり、今世紀初頭までは水準的な値でもあった「100」と比べると、2倍以上の状態で安定しているのは、果たして安定と定義して良いのかどうか、少々疑問となる。

次に示すグラフは、横軸における対象期間を短縮し、記述スタートを2007年1月としたもの。この年の7月・8月から、直近の金融危機のきっかとなった「サブプライム・ローン」問題が露呈し、市場は大いに揺れ動く。このタイミングをカバーした上で、拡大表示を果たしていることから、昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前における食料価格の動向を、より詳しく確認できる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年5月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年5月)

2010年初頭から荒い値の動きが相次いで砂糖指標で確認できる。これは砂糖相場での過熱感、豊作で生じた急落、そして需給状態を受けての再上昇の動きが反映されたもの。2011年中旬に約400まで上昇し、そこを天井として(もちろんFAOの記録のある中でも最大値。これは今に至るまで破られていない)、昨今では豊作による供給過多、世界的な景気後退で生じた甘味需要の減少により、値は低下を続けている。ここ数か月は再び上昇しはじめ、やや警戒領域に達しつつある。

それ以外の食料品の動向では、穀物、そして油脂はこの1、2年の間は下落気味、乳製品の上昇などが確認できる。冒頭で触れた数年前の乳製品の不足状態ほどでは無いが、ここ数か月来の値上げはこの動きが少なからず反映されたものと考えれば、納得感を得ることが出来よう。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値動きを確認するため、各指標の月次データを基に「前年同月比」と「前月比」を独自算出した上で、その数字の変移が分かりやすいように生成したのが次のグラフ。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年5月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年5月)

総合指数は前月比でマイナス1.6%、前年同月比はマイナス3.2%。いずれもマイナスを示しており、この一年来では全体的な価格は安定、やや下がり気味な状況が確認できる。

個別項目では乳製品や穀物が総合指数と同じような状態、油脂が安定、食肉と砂糖がやや上昇気味というところ。乳製品は継続的に下げ続けているように見えるし、実際折れ線グラフでもその通りの動きなのだが、それでもなお2013年前半の基準位まで戻ったに過ぎず、中期的には高値のままにあると表現しても良い。一方、砂糖がじわりとまた高値を示すような流れにあるのが目に留まる。

砂糖に関する解説を発表リリースで確認すると、エルニーニョ現象の発生の可能性が懸念され、これに伴い生産の減少が懸念されたことから、価格上昇機運が押し上げられたとある。ただしインドとタイで輸出量の積み増しの気配が見られたため、この価格上昇は少なめで済んでいるとの説明もある。気象状況の変動に伴う収穫高の変化が懸念材料ならば、その予想が正しい場合、一か月や二か月では解消が難しいため、砂糖の価格動向は今後より一層の注視が求められそうだ。

また少々気になる動きを示した食肉だが、豚に関連した流行性ウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus、PEDV)がアメリカ国内で発生し、ハムなどの加工肉の輸出に影響があるのではとの懸念も示されたものの、今回の価格動向を見る限りでは、大きな影響はないだろうとの結論が出ている。

農林水産省のレポートで現状を確認


今記事で毎月精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、5月30日に更新された2014年5月分を確認する。最新レポートによると、国際的な穀物需給に関して、とうもろこし・米で生産量が増加するものの、小麦と大麦で減少し、史上最高を示した前年度を下回る見込み。他方消費量は小麦・大麦で減少するが、とうもろこし・米で増加し、史上最高値を示した前年度を上回り、史上最高の量となる見込み(24.3億トン)。そして期末在庫量見込みは生産量が消費量をほんのわずかだが上回ることから、上昇する傾向を示している(5億0770万トン、生産量比で20.9%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

今回月は前回月と比べて予想値の点で生産量が減り、消費量は増えたものの、かろうじて生産量が消費量を上回ったため、予想期末在庫量は増加することになった。生産量の減少した小麦と大麦だが、小麦は収穫面積の減少や収益率の低下でカナダやアメリカ、オーストラリアなどで減少、大麦はやはり同様の理由でEU、カナダ、オーストラリアで減少するとのこと。小麦単独で見ても今なお予想値上でも生産量は消費量を上回っているものの、その差異はほとんど無く、今後留意が必要となる。

先月も言及したウクライナ情勢が与える影響だが、例えば世界の小麦輸出量の6%・とうもろこしの14%が同国産のものであり、それなりの影響力はある。しかしウクライナが輸出量を減らした分だけ、ロシアが増加させるなどの動きを示していることから、大きな変化は無いようだ。それよりもむしろレポートでは、アメリカにおける低温・乾燥で冬小麦の生育への影響、エルニーニョ現象の発生可能性に伴うリスク体現化への懸念が示されている。今後はこちらの動きについて、より強い注視が求められよう。


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