前年反動大きく、吉野家マイナスへ…牛丼御三家売上:2014年05月分

2014/06/06 08:30

吉野家ホールディングスは2014年6月5日、同社子会社の牛丼チェーン店吉野家における2014年5月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その発表内容によると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス5.7%となった。牛丼御三家の主力牛丼企業のうち松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年5月における売上前年同月比はプラス4.1%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス8.1%との値が発表されている(いずれも前年同月比・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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前々年同月比試算も合わせ各社の現状を確認


↑ 牛丼御三家2014年5月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年5月営業成績(既存店)(前年同月比)

牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は上記のグラフの通り。まずは吉野家の状況を確認していく、昨年同月(2013年5月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はマイナス11.5%。今月はそこから転じて11.2%のプラスを示している。これは同社の主力商品である牛丼を2013年4月に値下げしたことの反動に加え、2013年12月から発売を開始した鍋メニュー(「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」)の高単価による後押しによるもの。ただし後述の通り前々年同月比を試算すると実質的な客単価はマイナスに落ちるため、鍋膳効果はほぼ消化されたようである。また、消費税率改定に合わせて実施された牛丼価格の引き上げは、さほど客単価には影響を与えていないようだ。

吉野屋メニュー部分の変化その「鍋膳」だが、消費税率改定の際には引き続き販売が行われることが明らかにされ、5月においても販売継続中であることは確認できたものの、6月の時点でメニュー一覧から消えている。公式サイトのメニュー一覧でも「定食・鍋膳」だったものが「定食」の表記に切り替わっている。公知は無いものの、6月に入った段階で鍋膳は販売を終了したものと思われる。吉野屋冬季攻勢と表現しても過言ではない「鍋膳」だが、さすがに気温が上昇してくるこの時期には、費用対効果の面で継続販売は疑問視されたのだろう。

他方以前【吉野家の鍋膳陣営に「牛バラ野菜焼定食」が加わる可能性】でもお伝えしたように、「鍋膳」の仕組みを用いた焼きたてアツアツなスタイルの肉野菜炒め定食的なメニューの試験的な提供が報告されているなど、試行錯誤は継続中の模様。今後の展開にも注目したい。

一方で客数は大きく減じてマイナス15.2%。3社間では唯一のマイナスで振れ幅も大きい。これを受けて売上もマイナスに転じたわけだが、この下げ幅は現状の大幅な後退では無く、むしろ前年同月の反動と考えた方が正しい。1年前の同月は牛丼の値下げ開始直後で客数が大きく伸び、プラス31.0%を示していたからである。2年前同月比を計算すると、客数・売上高共にプラスとなり、中期的には順調な伸びであることが把握できる。

↑ 牛丼御三家2014年5月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年5月営業成績(既存店)(前々年同月比)

続いて松屋の情勢を精査する。同社では新商品の展開頻度は御三家では一番で、5月に限っても主なもので【ジューシーハンバーグにたっぷり大根おろし、松屋から「和風おろしハンバーグ定食」発売】で紹介した「和風おろしハンバーグ定食」が確認されている。また【松屋お馴染み定食肉量増量キャンペーン、5月22日から順次開催】にて紹介した通り、定食の肉量を増やして新規リピーターの確保を狙うキャンペーンも展開し、さらにテレビCMまで打つなど、気合いを入れた広報展開を実施している。

一方、メインメニューとなる「牛めし」についても、4月の消費税率改定に伴う価格変更の際に、吉野家・すき家は牛丼そのものの味わいの変更もアピールしたが、松屋ではそれが無かったことを受けてか、【松屋で「プレミアム牛めし」なるものが試験運用中らしい】で記した通り、牛めしのアップグレード版的なものを模索しているとの話がある。商品提供の際の手間を考えると、全店舗展開メニューにするのにはややハードルが高い感もあるが、今後の動向には期待したい動き。

すき家のリニューアルオープンの公知最後にすき家。今回計測月の終盤に当たる5月28日から「うな丼」「うな牛」を期間限定で展開を開始したが、客単価の上昇の一部にはこれが加味されているのかもしれない。一方で【すき家、鍋定食などによる人手不足を公認、環境改善のため6月をめどに7地域分社化を決定】などで解説している通り、人員不足に伴う就労問題、その解消の手立ての一つとなる大規模リニューアルにおける一時的閉店に伴う「騒ぎ」は継続中。公式サイト上ではそのリニューアルを果たし再び営業を始めた店舗が続々登場している様子を逐次伝えている。しかしながら【すき家の「全店」「既存店」売上動向から見る「リニューアル店舗」の多さ】でも伝えている通り、売上高の前年同期比で、全店舗の値を既存店が上回るという稀有な事例が4月から発生しているなど、状況は今なお混とんしていることがうかがえる。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年5月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年5月)

前年同月比による反動と小休止と


客数や客単価に大きな影響をもたらす牛丼の価格変更(値下げ)が2013年4月に実施されたこともあり、吉野家はこの1、2か月の間は特に客数の点で反動による大きな前年同月比でのマイナス値を示している。業績が急速に悪化したようにも見えるが、これは前々年同月比で算出すれば反動の範囲内でしかないことは、上記の試算グラフでも明らかな通り。むしろ今回月でプラスを示しているものの、同じ前々年同月比試算で大きな客数上のマイナスを出した松屋の動向が気になるほどである。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年5月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年5月)

牛丼業界においてはこの時期は、冬のメニューがひと段落し、夏期攻勢に向けた一休み的な時期にある。すき家が先行発売している「うなぎ系メニュー」による客単価の引き上げ効果期待はあるものの、以前のような勢いはすでに無く、あくまでも添え物的なものでしかない。ロールプレイングゲーム的な表現を使えば「ちからをためている」場面ではある。

上記の各社概況でも言及した通り、公知されている情報内で限っても、吉野家は鍋系メニューの夏期攻勢の可能性、松屋はメインメニューの牛めしに新たな切り口を呈する動き、そしてすき家は就労条件問題への取り組みなど、それぞれ独自の視点で業績の改善や「新しくて美味い」ものへの取り組みが見受けられる。そして当然、現時点では明らかにされていない切り札も秘めているのだろう。

↑ 牛丼御三家売上比較(直近終了期、国内牛丼セグメントのみ、億円)
↑ 牛丼御三家売上比較(直近終了期、国内牛丼セグメントのみ、億円)

すき家の状況改善施策の効果や、夏に向けた新メニューの展開は、早ければこの6月にも動きが見えてくるはず。各社がいかなる手法で既存のリピーター、そして新規顧客を取り込む手を見せるのか、今後の展開が楽しみではある。特にすき家の就労問題は、なか卯まで含めれば牛丼御三家では売上額最大手となる勢力の問題なだけに、その行き先には大いに注目したいところだ。


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