鉄道各社の「痴漢撲滅キャンペーン」のポスターが今年の分もイカしてる件について

2014/06/05 08:25

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2014年版痴漢撲滅キャンペーンポスター混雑ぶりを示す鉄道において、トラブルの一つとして社会問題化しているのが痴漢行為。当然犯罪行為に他ならないが、【鉄道の「女性専用車両」、女性は5割強・男性は3割足らずが「必要」】で解説した「女性専用車両」の通勤時間帯における運行や、【埼京線の車内防犯カメラ、全編成への設置が決定】で触れた監視カメラの導入など、さまざまな具体的・物理的対策を鉄道各社は講じている。これだけでなく毎年各社では協同で「痴漢撲滅キャンペーン」を展開し、警戒の強化と各種啓発、広報宣伝活動を実施している。駅構内や関連通路で該当するポスターを目に留めたことがある人も多いだろう。その啓蒙ポスターの今年分が先日発表されたが、昨年に続き今年もセンスあるデザインのものとなったことが明らかにされた。すでに見かけた人も多いと思わるが、今回はこのポスターについてチェックを入れていく。


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各年の啓蒙活動の実態や、その活動で使われた、つまり開始以降翌年のキャンペーン開始までの間、鉄道各線の駅構内や各種通路などで掲載されるポスターのデザインは、各社リリースページで確認できる。携わっている各社共同でプレスリリースを配信しており、探すのは容易だ。例えば【JR東日本のリリース一覧】から、今年2014年分のは5月29日に、それ以前のも毎年同じような時期に関連リリースが発せられているのが分かる。

このうち今回チェックを入れる、そして一連のキャンペーンの活動においてもっとも多くの人が目に留める、活動の実態を知ることができるポスターだが、2012年まではシンプルで抽象的なデザインが用いられていた。

↑ 2012年における啓蒙ポスター
↑ 2012年における啓蒙ポスター

2012年はシンプルながらもイラストが採用されいたが、それ以前はシンボル的なもの、あるいはテキストメッセージがメインで、いかにもオーソドックスなもの、見方を変えればありきたりで目立ちにくい、注目を集めにくいものだったのは否めない。

ところが昨年、ポスターデザインに大きな方針転換がなされた。当方も含め大いなる印象深さを覚え、その内容を覚えている人も多いと思われるが、切り口はこれまでのものから一新。状況のビジュアルを漫画化し、メッセージでは無く、見た目、視覚メインで説明するように仕立てられたのである。

↑ 2013年版痴漢撲滅キャンペーンポスター
↑ 2013年版痴漢撲滅キャンペーンポスター

被害を受けた女性が大声でアピールし、駅員がすぐさま駆けつけると共に、周囲の人たちも見て見ぬふりでは無く注目し、行為を悪しきものとして非難をする。そしてコピーには「みんなの勇気と声で痴漢撲滅」。状況を的確に、流れるような展開で、シンプルに表している(無論事態そのものが発生しないのが一番なのだが)。

さらに今件ポスターが多くの人の注目を集め、印象に残ったのは、その絵が1970年代前後、当方の印象としては「あしたのジョー」のような作品のタッチを採用していること。絵のタッチだけでなく、コマ割りやセリフの使い方、キャラクタの配し方まで、綿密に研究した上で仕立てられた感はある。

今時の画風を用いるのではなく、あえて昔のタッチを起用したことで、「多くの人に注目を集めさせる」という啓蒙ポスターの役割を見事に果たすことに成功した。さらにいえば鉄道を用いて通勤している中堅層への覚えもめでたいのも、この時代の画風を使った一因かもしれない。

そして次の絵が今年分、先日発表されたばかりの啓蒙ポスター。発想、切り口は2013年版と同じで、しかもセンスある創意工夫が凝らしてある。

↑ 2014年版痴漢撲滅キャンペーンポスター
↑ 2014年版痴漢撲滅キャンペーンポスター

漫画風の説明ビジュアルで啓蒙したい内容を描く手法に変わりはない。しかし絵のタッチが2013年版における1970年代前後のと比べ、やや時代が進んでいる、コミカルな雰囲気を覚えさせる。あえて言えば1980年代あたり、特に女性の描き方、3コマ目に出てくる駅員の等身、2コマ目の同乗している乗客の描き方に大きな違いがある。また人物内の影の付け方もあっさりとしており、時代の変化を感じさせる。コマ割りの仕方なども合わせ、明らかに1970年代では無く、1980年代、あるいは1990年代初頭のタッチによるもの。

2013年版同様、今回発表された2014年版もまた、周辺に貼られる他のポスターとは一線を画した印象と、大胆かつシンプルで分かりやすいアピール度が功を奏し、大いに啓蒙活動に役立てられることだろう。広告展開という観点でも、この切り口は非常に巧みであり、高く評価できるものである。

デザイン的な発想、切り口が難しいかもしれないが、この方針は今後も継続されることを願ってやまない。


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