失業率状況改善の機運高まる、一方で…EU失業率動向(2014年4月分)

2014/06/04 15:30

数年来の経済不況、財政事情の悪化に伴う雇用・労働市場の問題は、長らく欧州地域における重要な懸念の一つに挙げられている。スペインやギリシャの失業率の高さは事あるたびに報じられ、今地域の問題の根深さ、深刻さを表す象徴の一つとして、日本でも注目を集めている。その欧州地域の失業率も、昨今では経済の回復と共に、少しずつだが復調の兆しを見せつつある。同地域の経済・社会情勢におけるデータを集積し、分析と共にその結果を公知し、政治的・経済的な集約組織の施策決定材料を構築する役割を持つ欧州委員会の統計担当部局にあたる、日本ならば総務省統計局に相当する、EU統計局(Eurostat)は2014年6月2日付で、毎月の定例更新分となる諸国の失業率データの2014年4月分を解説レポートと共に公開した。今回はその最新公開値やデータベースに収録済みの過去の値を用い、EU諸国を中心とした成人全体、さらには若年層に限定した失業率を確認し、状況把握をしていくことにする。

スポンサードリンク


じわりと改善の兆し!?


データ取得元の説明、グラフや文中に登場するEA17・EU28の構成国の詳細や動向、各国の参加状況の変化は、過去の記事を一覧の形でまとめたページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上で解説している。詳細が知りたい場合はそちらを参照のこと。

ILO基準に基づいた2014年4月時点の各国失業率は次の通りとなる。EU28か国では10.4%・EA17か国では11.7%を記録している。先月分(速報値から修正済み)と比較すると、EU28か国・EA17か国共に0.1%ポイントのマイナス、つまり改善が見られる。今回更新されたデータについて過去の分までさかのぼって検証すると、EA17か国・EU28か国共に2013年4月に最悪の値を示しており、そこからは数か月に1回、0.1%ポイントの改善が見られるというスローリーな歩みだが、確実に事態の改善は果たされている。もっとも、1年で0.5%ポイント前後の失業率改善が、ゆっくりなものなのか、それとも順調なペースなのか、判断は難しい。

このグラフもあわせ一連のEU失業率の記事では、最新データを掲載している国と合わせるため、(前月比算出のために)直近2か月分のデータがEurostat上で未収録だった場合、「掲載時点で公開されている最新月分の」データを代用している。例えばギリシャは今回更新時点では2014年2月分までの値(26.5%)が公開されている(2014年3月分以降はまだデータが登録されていない)ので、ここでは2014年2月分を2014年4月分、そして2014年1月分を2014年3月として、収録・掲載・計算に用いている。

↑ 2014年4月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2014年4月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャで変わらず。スペインはそれに1.4%ポイントの差を有しての2位。このポジションはここ数か月継続中で、固定化しつつある(今回月は両国の差異ポイントまで前月と同じ)。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2014年2月時点の値を適用させているため、比較の際に公平を期するため同月の値同士で両国の値を比較してみると、スペインは25.3%(2月分)。やはりギリシャの26.5%の方が上(悪状況)となる。ただし差は1.2%ポイントにまで縮まる。

スペインはギリシャと共に国家経済上、債務的に破たん懸念の高い、危機的国家として報じられ、実際その通り歩みの中にあった。例えば【空のガソリンスタンド、たなから消える生鮮食品……スペインのストライキ続報】などを当サイトでも以前伝えている。しかしここ数年の動きを見ると、今件失業率の動向を見ても、悪化のピークは過ぎ、少しずつ事態の改善に向けて歩んでいるように見える。

↑ 2012年6月-2014年4月での失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2012年6月-2014年4月での失業率(季節調整済)(スペイン)

上記でEU・EA全体の失業率のピークが2013年4月と言及したが、スペインに限ってもほぼ同一期間に最高値をつけ、それ以降は少しずつ、確実に低下を示している。ヨーロッパ全体として見ても、経済の低迷や状況の悪化を知らせる報道は数を減らし、先行きの明るさを伝える報道が増えている。問題が山積みとなった泥沼にはまり込んでいる状況に違いないが、以前のようにさらなる深みにはまりこむような雰囲気は見られない。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2014年3月→2014年4月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2014年3月→2014年4月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の少ない国では統計値が変化しやすい。また統計取得の方法の違いなどもあり(公言はされていないが、どうやら3か月分をまとめて報告し、その3か月間は同一値で推移しているように見せる国もあるようだ)、結果の流れが他国と大きく異なる国がある。場合によっては1年位前の値にまで数%ポイントの大きさで修正が入ることも珍しくない。そこで「前月比でプラスマイナス0.5%ポイント未満は誤差」との今サイト独自の基準を設けてチェックを行う。

すると今回月ではキプロスとリトアニアの状況が改善、改悪の国は無し、という形になる。キプロスは前月で悪化したのでその反動によるところが大きいが、何よりも改悪した国が無く、誤差範囲まで含めてもほとんどの国でマイナス値、つまり改善した方向にあるのは素直に喜ぶべきである。

次に示すのは最近定点観測を続けている3か国。キプロスが悪化、アイルランドとポーランドが改善方向の国としてのサンプルだったはずなのだが、キプロスも天井感の雰囲気を見せているのが興味深い。

↑ 2012年6月-2014年4月での失業率(季節調整済)(キプロス/アイルランド/ポーランド)
↑ 2012年6月-2014年4月での失業率(季節調整済)(キプロス/アイルランド/ポーランド)

すでにポーランドは10%を切り、アイルランドもそれに続く気配を示している。この下落=改善ぶりが続くと嬉しいのだが。

スペインなどで過半数失業に違いは無いが、明るい兆し…若年層失業率動向


続いて若年層(今件では25歳未満と定義)の失業率動向。先進国では特に若年層の失業率の高さが深刻な状態にある。これはいくつかの要因があるが、例えば寿命の延びや技術革新による同一労働に対する必要な人的リソースの減少、経済構造の変化など、先進国が持つ共通の状況変化の結果として生じる、いわば副作用的な社会現象として知られている。効率化で生じた余剰人員がそのまま新しい産業・市場に回されることで、市場や経済が拡大していき、緩やかな成長を続けるはずなのだが、昨今の経済状況、特に先進国においては、技術革新・構造変化が先行し、市場の拡大が追い付いておらず、結果として若年層を中心とした失業率の増加が生じることになる。

今回発表された2014年4月時点の25歳未満の失業率はEA17か国で23.5%・EU28か国でも22.5%。5人に1人以上が失業状態にある。成人全体の失業率は経済状態の回復の中で少しずつ改善しているが、若年層はそれほどでもない。元々の値が高いだけに、0.1%ポイントの単位で縮小しても、スズメの涙状態ではある。

全体失業率上位ではお馴染みの国々が、今件若年層失業率でも上位に名前を連ねている。ギリシャの56.9%(2014年2月)を筆頭に、スペインの53.5%、クロアチアの49.0%、イタリアの43.3%など、経済的に不安定な国の高さが目に留まる。特にイタリアについては、意外に思う人も多い事だろう。

↑ 2014年4月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)
↑ 2014年4月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)

↑ 2014年4月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)
↑ 2014年4月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(4月データが無い国は直近分)

上記解説の通りこちらでもプラスマイナス0.5%ポイント未満を誤差の許容範囲内として判断すると、今回月ではエストニア、スウェーデンが悪化、ブルガリア、ポーランド、アイルランド、ハンガリー、リトアニアが改善の動きを示している。エストニアは先月からの反動だが、ハンガリーやアイスランドなどは先月から続き大きく状況の改善を示しており、またグラフの全体的な見た目からもマイナス値、つまり改善の方向を大きく向いていることがうかがえる。

大人全体の失業率が改善の流れにあるスペインでは、若年層限定でも少しずつ、改善の兆しを示している。大抵において全体的な失業率改善の中、若年層のそれは置いて行かれる傾向があるので、これは素直に喜ぶべき流れといえる。

↑ 2013年1月-2014年4月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2013年1月-2014年4月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)

今なお計算上は2人に1人以上が失業状態にあり、これ単独で健全な状態と表現するのには無理がある。しかし方向性としては良いベクトルを示しているのもまた事実で、先行きに期待が持てるのは悪い話ではあるまい。


前回月では二分化、二極化といった表現で、雇用市場の面では改善を示す国と、立ち遅れる国が生じていると解説した。今回公開されたデータを読み解く限りでは、まだ短絡的かもしれないが、全体的には改善の流れに乗った感はある。経済面での安定化が、失業率の改善をももたらしているようだ。

しかしその一方、経済に少しでも余裕が出て来たからか、あるいはそれは単なる一因なのかもしれないが、そして昨今のウクライナ情勢も小さからぬトリガーではあるのだが、ヨーロッパ各国で独立機運的な動きが高まり、EUそのものが空中分解の方向を向きつつあるとの指摘がなされるような状況が見えている。


↑ 欧州議会選でEU懐疑派、つまり現在の各国集合体的なEUの構造には難色を示す考えを持つ人たちが増えたことに対する懸念を考察するニュース映像。今後EUは特定方面のみの連合体に形を変えるのではないかとの指摘もあるほど(ロイター通信公式)。

EUが現在の形を維持し、情勢を安定化させることで、非常にゆるやかなスピード(つまり現状)ではあるが、雇用市場は改善していくとの指摘がある。失業率の観点ではEUの形は現状維持が望ましいのだが、高まる機運はそれを許さない。

ウクライナをはじめ旧ソ連邦の中小国内の騒乱はもちろんだが、それをきっかけに動きを見せるヨーロッパ各国の思惑が、経済、そして雇用市場にどのような影響を及ぼすことになるのか、今後も目が離せない。

なお【「CPD(国公債デフォルト確率)動向」の更新は終了しました】でお伝えしている通り、失業率とも関連性が深く、連動して検証することでさらなる理解が得られるCPDの定期更新は、情報提供元の提供終了に伴い、更新は停止してしまっている。ご了承願えれば幸いである。


■関連記事:
【日本の順位変わらず・数字はやや改善(国債デフォルト確率動向:2013年Q3)】
【EU失業率を若年層と中堅層以降で比較化(2012年8月分)】
【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2014年)(最新)】
【ギリシャ、キプロスは沈静化するも、ウクライナの火種は強まる(国債デフォルト確率動向:2014年2月)】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー