NHKの一人勝ち、TBSがかろうじて踏みとどまり、あとは下落…主要テレビ局の直近視聴率をグラフ化してみる(2017年3月期上半期)

2016/11/14 05:29

従来型4マスメディア、具体的にはテレビ・新聞・雑誌・ラジオの中で、最大の広告市場規模と媒体力を有すると共に、昨今の広告市場動向では、唯一復調の兆しを示しているのがテレビ。そのテレビ全体、あるいは各局、さらには各番組のすう勢を推し量るのに、もっともシンプル、かつ明確な指標が「(世帯)視聴率」。要は世帯単位でどれだけその番組・テレビ局、さらにはテレビ放送そのものが視聴されているかを指し示したもので、雑誌や新聞ならば購読者数、販売部数に相当する。今サイトではテレビ局の中でもキー局、そして上場を(直接、あるいは間接的に)果たしている企業の(半期)決算短信資料などを基に、ほぼ半年毎にキー局の視聴率動向を確認している。今回は2016年10月から11月付で発表された各社の半期決算短信資料を基に、2017年3月期(2016年4月から2017年3月)における上半期の視聴率動向を確認していくことにする。

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全日は日テレ、ゴールデンはNHKがトップ


日本国内のテレビ局における視聴率は以前【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】で解説した通り、現在ではビデオリサーチ社のみが計測を実施している。上場テレビ局・企業では各社が程度の差はあるものの投資家への経営の状況判断材料として、各種短信資料で視聴率の公開を行っている。視聴率動向が広告売上をはじめとしたテレビ局の主事業である放送業務の勢いを推し量るのに、最適な指標だからである。一方、各社の資料ともビデオリサーチ社提供の値を基にしているため、基本的に同じものとなる。

まずは現時点で直近にあたる2017年3月期上半期の、キー局の視聴率をグラフ化する。データは【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】内にある「2017年3月期第2四半期決算資料」から取得した(第2四半期とは上半期のことである)。なお「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、良い機会でもあるので合わせてグラフに収めておく。

↑ 2017年3月期・上期視聴率(2016/4/4-2016/10/2、週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)
↑ 2017年3月期・上期視聴率(2016/4/4-2016/10/2、週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているが、他の4局と比べれば放送内容の特異性(比較的経済関連の内容が多い)の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが特段低く、TBSとテレビ朝日がやや低め、日本テレビとNHKが高めのポジションについており、3階層状態にある。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19時から22時)とプライムタイム(19時から23時)。その双方で10%を切っているのは(テレビ東京以外では)TBSとフジテレビ、そしてゴールデンタイムのみだがテレビ朝日と、合わせて3局。上位陣では全日・プライムタイムでは日本テレビが圧倒的だが、ゴールデンタイムではNHKが日本テレビすら追い抜いている。見方を変えればNHKはプライムタイムが弱い。

数年前までは主要キー局ではTBSが一番低迷していたが、今半期では全日こそフジテレビとほぼ変わらないものの、ゴールデンタイムやプライムタイムでは大いに健闘しており、テレビ朝日に迫る勢いを示している。他方フジテレビは全日だけでなく、ゴールデンタイム、プライムタイムすべての仕切り分けにおいて、(テレビ東京を除けば)視聴率は一番低い立場に収まってしまっている。

22時の番組表(ヤフーより)今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が他局動向と比べるとかなり大きい。これは以前からの傾向で、ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、その違いとなる時間帯、22時から23時における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっていることになる。もっともこれは各テレビ局の番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方のない面もある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると、トップはNHK、次いで日本テレビ、そしてTBSとテレビ朝日が同列、さらにフジテレビが続く。しかしプライムタイムで比較すると、日本テレビがトップにつき、次いでNHK、テレビ朝日、TBS、フジテレビの順となる。NHKのプライムタイムでのいまいち度合いは直上にその理由を記した通りだが、プライムタイムではテレビ朝日がキー局で唯一、ゴールデンタイム以上の値を示しているのは意外かもしれない。22時から23時の時間帯で放送される各局の人気番組のすう勢が、そのままこの差に表れるともいえる。テレビ朝日の場合は「報道ステーション」がメイン、後は各種映画や特番、ワイド劇場となるのだろう。

前年同期からの変化で各局の勢いを推し量る


視聴率の変移を前年同期(2016年3月期上半期)との比較で表すと次のようになる。

↑ 2017年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)
↑ 2017年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)

元々テレビの局単位での視聴率は、多分に特番や特定の番組、さらにはイベント的な放送に多分に影響されるところがある。例えば社会現象を引き起こすほどの人気を博したNHKの「あまちゃん」、TBSの「半沢直樹」が好例。

NHKピックアップ今回の上半期では記事タイトルにある通り、NHKの大躍進ぶりとTBSの現状キープ、その他局の軟調ぶり、とりわけ日本テレビとフジテレビの不調が目に留まる。まずNHKだがさまざまなムーブメントを起こしている大河ドラマの「真田丸」や8月に開催されたリオデジャネイロオリンピックの好調さが想起される。各報告書を確認すると、今年度では総合テレビの平日夜間を中心とした大規模な番組改定が行われており、特に「鶴瓶の家族に乾杯」「ガッテン!」などが前年と比べて同時間帯の視聴率アップに貢献したと説明されている。

同局の中央番組審議会でも意見として

「総合テレビの世帯視聴率が好調であることを受けて、「大胆な番組改定の結果、多くの人に見られ高い評価が得られたことは素晴らしい」という意見や、BSプレミアムの評価が高かったことから、「BSプレミアムに合った番組を提供しているからではないか」等の意見が出された。「クローズアップ現代+」については「テーマを的確に選び、見てもらえる番組として定着することを期待したい」という意見もあった。さらに、ニュース・防災アプリや五輪の動画配信などを例に、「インターネットの活用にさらに力を入れてほしい」という要望も出された。」

との言及が確認でき、番組の大胆な改定が成功裏を収め、評価=視聴率アップにつながったと分析している。他方、災害時に注目されたインターネットへの番組同時配信をはじめ、インターネットの活用にさらなる力を入れるべきであるとの進言も出されており、今後連動性の向上が期待できる。

フジテレビQ1-Q2の編成におけるスローガン大きな下げ幅を記録したフジテレビだが、社としての経営そのものは堅調で、都市開発事業では大きな利益を上げている。肝心の放送事業においても、売り上げは落ちている(≒視聴率の低迷で広告費が減退)ものの、番組制作費がそれ以上に下落(圧縮)、販売管理費も削られており、結果として増益につながっている。

経費を投入すれば良いもの、視聴率が取れる番組を制作できる確約は無いものの、経費削減をすればそれだけタガが緩み、品質は劣化せざるを得ない。その影響は因果関係としての数量化は難しいものの、モノの道理としては納得のいくものに違いない。

フジテレビの決算関連資料でも若年層から中堅層へのアピールが弱いとして、番組の開発と育成が重要であることや、企画力の開拓が欠かせないことを認識し明文化。10月の番組改編ではそれらの層に向けた新番組を展開していくとしているが、振れる袖が短い状態でどこまで成果が出せるのか、こうご期待ではある。

番組制作費と視聴率動向の関係だが、視聴率では今半期で横ばい、むしろやや上昇を示したTBSにおいては、制作費はわずかながらも増加傾向にある。放送事業の売り上げも伸び結果として利益も増加し、投資は回収できた形となっている。日本テレビは今半期では視聴率を下げたが、2009年度で大きく落とした後、2011年度以降からは少しずつ回復基調にあるため、よほどのかじ取りの上での下手を打たない限り、制作費の上での足の引っ張り度合いは縮小していくものと考えられる。同局でもフジテレビ同様に次なるキラーコンテンツ」「次なるエースクリエイター」の育成を目指し、ドラマ枠の企画強化と多面的コンテンツ展開をアピールしているが、それが数字となって表れるか否かは、今後の番組の実態を見てみないと判断は難しい。



詳しくは経年のテレビ視聴率の記事で解説するが、この数年は各局ともターニングポイントを迎えている気配を示している。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が継続している。まるで雑誌の印刷証明部数の話を思い起こさせるのだが、単発のヒーロー的番組やイベントのおかげで一時的な盛り返しを見せることはあっても、根本的な体質、視聴者への姿勢の部分がしっかりとしていないと、次第に低迷さが顕著になる。

中にはそのドーピング的効果に味を占め、魅惑に取りつかれ、繰り返しその効果を望んでいるような行動を示す局も見受けられるが、「待ちぼうけ」の歌にある通り、常に切り株にうさぎがやってくるとは限らない。それを期待するどころか、切り株を増やすべく樹の伐採を繰り返し、かえって地道な努力の成果である果実の収穫量を減らすような動きすら見受けられるのは残念な話。

4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ一方、その力に翻弄される面も見せている。そのような状況下で、各局がいかなる姿勢を見せ、その姿勢が視聴率の動向にいかなる成果として結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。

なお上記フジテレビの資料でも触れられているが、2016年10月3日からは視聴率調査に関して新しい測定方法が用いられる。これは従来のリアルタイム視聴に加え、いわゆるタイムシフト視聴も測定に加わるもの(「統合視聴率」と呼ばれる)。視聴スタイルの変化に対応するためとの説明があるが、具体的な計算式は次の通りとなる。

「総合視聴率」=「リアルタイム視聴率」+「タイムシフト視聴率」−「重複視聴」

ビデオリサーチ社の公開データ=各公開企業の決算資料の数字が「統合視聴率」に差し代わるのか、「リアルタイム視聴率」のままで継続されるのかは現時点では不明だが、仮に前者だった場合、一部界隈で指摘されている「タイムシフト視聴を加えれば視聴率動向は大きな変化、実態を示すはずだ」との意見がどこまで正しいのか否かも判明することになる。大いに注目したい。


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