ARIAの「巨人」効果は半減するもなお健在…少女・女性向けコミック誌部数動向(2014年1月-3月)

2014/05/21 08:25

従来型4大メディアの中では新聞同様に紙媒体であり、その特性ゆえに苦境に立たされているのが雑誌。その雑誌の動向について、社団法人日本雑誌協会が2014年5月13日付で発表した「印刷証明付き部数」を基に、多様なジャンル毎に精査を行っている。今回はその対象として「少女・女性向けコミック系の雑誌」を選び、各部数の流れをグラフ化した上で各種確認をしていくことにする。

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軟調多し、「ARIA」は前四半期の反動大きく


データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、諸般注意事項、さらにはバックナンバーは一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にある。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌。今四半期では幸いにも同部門における脱落・追加雑誌は無し。

↑ 2013年10-12月期と最新データ(2014年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2013年10-12月期と最新データ(2014年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

このグラフを掲載するたびに複数の読者から「意外だ」という意見をいただくのだが、「ちゃお」が現在の少女向けコミック誌においては言葉通り群を抜く形で部数を挙げている。第2位の「別冊マーガレット」の健闘ぶりも相変わらずだが、「ちゃお」とは2倍以上の差がつけられており、順位変動はまず有り得ない。ぱっと見の変化ではやや減少雑誌が多いかな、という感はあるが、トップの「ちゃお」がそれなりに伸びており、目立つ形となっている。

続いて女性向けコミック誌。これは「少女向け」と比べると、やや高い年齢層の女性を対象としたコミック雑誌を指しており、女性向け雑誌であることに違いは無い。一方で発行部数は「少女向け」と比べて数分の一に留まっている。横軸の部数区切りが異なることに注意。

↑ 2013年10-12月期と最新データ(2014年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2013年10-12月期と最新データ(2014年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

「少女向け」と比べて断トツというほどでもないが、トップが「BE・LOVE」なのはほぼパターン化している。「週刊ヤングレディ」(女性週刊誌。1963年から1987年まで発刊)の増刊漫画誌で、1980年に別雑誌として創刊。女性の大人、具体的には30代から40代をターゲットにした「レディースコミック誌」(20歳以上の女性を対象とした漫画ジャンル)。ベースとなる「週刊ヤングレディ」が休刊となってすでに20年以上が経過しているが、そのDNAは確実に受け継がれ、このように女性向けコミック誌でトップの座に輝いているのは、感慨深いものがある。

パッと見で前四半期からの動きがやや大きいように見えるが、これは元々横軸の区切りが「少女向け」と比べて細かいのが主要因。ただしそれを別にしても、「ARIA」の下げ具合が目に留まる。これは詳しくは後述するが、いわゆる「進撃の巨人」特需の反動によるもの。データの入力ミスなどではない。

大きく上げた後は大きく下げる…四半期変移で直近動向を探る


次に示すグラフは前四半期と直近四半期との部数比較を行った結果によるもの。季節変動などの影響(一般論だが、夏休み期間は子供向け雑誌が売れにくくなる)を受ける可能性はあるが、最近の各誌の動向を知るには一番手っ取り早い。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年1-3月期、前期比)

赤対象、つまり誤差(マイナス5%まで)の範ちゅうを超えて下げた雑誌は2誌、「ベツコミ」と「ザ・マーガレット」。両誌ともそれなりの発行部数を有しており、数字上のぶれとは考えにくい。一方で両誌ともこの数年継続的に部数を減少し続けており、イレギュラーな形での下げ方には見えない(次の前年同月比を見れば「継続的な減少傾向」が改めて確認できる)。

他方誤差の範囲ではあるが、「ちゃお」のプラス3.7%が目に留まる。同誌が部数そのものではトップに立つ事を合わせ考えると、その大部数においてこれだけの比率の底上げを成し得た実態には、素直な賛美を呈しても良い。ちなみに実増加部数は2万部である。

続いて女性向けコミックの動向。上記で触れた「ARIA」単独の中期的推移も合わせてグラフ化する。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2014年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2014年1-3月期、前期比)

↑ ARIAの部数推移(2014年1-3月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2014年1-3月期まで)

5%超えの上昇を示したのは「Cocohana」のみ。これは前四半期の反動に過ぎない。一方で5%超えの下げは「FEEL YOUNG」と「ARIA」の2誌。「FEEL YOUNG」はすでに部数が2万台前半でしかなく、今回の大きな下げにおいても実際の減少部数は1600部程度。いわゆるぶれの範囲。

他方「ARIA」は前四半期記事、そして上記でも記した通り、2013年11月号から始まった「進撃の巨人」のスピンオフ作品「進撃の巨人 悔いなき選択」の連載が原因で飛び跳ねた前四半期の反動によるもの。上昇があまりにも大きかっただけに、その反動……というよりは鎮静化による下げも極めて大きいものとなった。しかし「ARIA」の部数動向を見れば分かる通り、熱狂は醒めてもなお、熱烈な支持は続いており、連載開始前の約3倍もの部数が維持されている。前回記事で「さらなる伸び云々」としたが、それは果たせなかったものの、「ARIA」の部数の底上げに寄与したことは間違いない。

赤系統が多い前年同期比


続いて「前年同期比」の値を算出し、グラフ化する。これは季節によって生じる販売動向の変移への考慮をしなくても済む、年ベースでの雑誌のすう勢を確認できる値。まず最初は少女コミック誌について。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2014年1-3月期、前年同期比)

5%超の減少を示した雑誌は9誌。10%超は2誌。前四半期の段階ではそれぞれ10誌・4誌だったから、それと比べれば状況はやや好転…というよりは悪化せずに済んでいる。前四半期で「俺物語!!」にスポットライトをあてた「別冊マーガレット」はプラスマイナスゼロ。その作品だけが貢献したわけではないが、少なくともマイナスの影響は与えていないとして、好意的に解釈すべきだろう。

↑ 別冊マーガレットの部数推移(2014年1-3月期まで)
↑ 別冊マーガレットの部数推移(2014年1-3月期まで)

低迷続く少女向け雑誌の中では比較的珍しく、この2年強ほどの間はほぼ一定数を維持している。こちらも一般雑誌の「SPA!」同様、力を貯めている状態にも見えてくる。

続いて女性向けコミック。こちらも前期比グラフ同様、方向性は逆だが、異様な形状を示している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2014年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2014年1-3月期、前年同期比)

「ARIA」の具体的な部数動向グラフにある通り、前四半期で「巨人」特需が発生し、今四半期ではそれが半減したものの、なお大きな売り上げを計上している。特需開始からまだ1年は経過しておらず、前年同期比では大きなプラスを計上することになった次第。プラス194.5%というのは、前年同期の294.5%という意味。すなわち約3倍の部数が印刷されたことになる。本家の「進撃の巨人」がクライマックスを迎えつつあることから、その話題性による相乗効果も期待できるため、次四半期も似たような動きを見せることだろう。



先行する記事にある通り、今回四半期は多くのジャンルで際立った動きがほとんどなく、やや軟調だが比較的おとなしい動きが見られる。今回の少女・女性向けコミック誌も、「ARIA」の反動による下げ以外は前四半期までの動きをほぼ踏襲した形で、大きな変容は見られない。

その「ARIA」だが連載開始当初ほどの勢いは無くなったものの、堅調さは続いており、いわゆる「スター作品」、そして新しい発想による新市場の開拓の必要性を改めて実感させてくれる。その観点ではスティーブ・ジョブズ氏の伝記の漫画化を掲載している「Cocohana」や、「俺物語!!」の「別冊マーガレット」も例に挙げることができる。

「凪」のような状態ではあるが、前期比・前年同期比で5%以上の下げ率を示し続けている雑誌が多数存在していることに違いは無い。景気回復感のある中でこのような部数動向を示している以上、外部的要因に頼ることなく、何らかの具体的な手立てを講じない限り、状況の改善は望めまい。今の少女・女性コミック誌には何が求められているのか、関係者は真剣に考察する必要があるのだろう。


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