一部雑誌が伸び、進む二極化…諸種雑誌部数動向(2014年1-3月)

2014/05/20 14:30

本屋さんやコンビニ、さらには駅売店などで見かける雑誌には、実に多種多様なジャンルのものが存在する。昨今では付録つきのものも増え、さらなる彩りを添えている。今サイトでは先行するいくつかの記事で、特定ジャンルにおける雑誌の動向を探るため、社団法人日本雑誌協会が2014年5月13日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値をもとに、各種精査を行った。今回はそれらのジャンルには該当しない、いくつかの一般的な雑誌ジャンルにおいて、その部数の「前年同期比」を算出し、その動向から個々の雑誌のすう勢、さらには各ジャンルの市場性向を推し量ることにする。

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SPA!順調、写真系週刊誌は二極化継続…一般週刊誌


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項、類似記事のバックナンバーなどは一連の記事をまとめて収録したページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にある。必要な場合はそちらで確認のこと。

まずは一般週刊誌。精査している雑誌の範囲内では、ごく一部を除いて状況は悪化中。

↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)

↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2014年1-3月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2014年1-3月)(万部)

今回計測期では脱落、追加の雑誌は無し。他ジャンル同様、今四半期は平穏無事な状態にある。

前期比(前年同期比にあらず・グラフは略)でプラスは4誌。これは前四半期の状態から変わらない。マイナス5%以上の下げ幅を示した雑誌は5誌となり、前回の4誌からやや悪化。前回言及した通り、写真をメインとしたビジュアル系週刊誌とも区分できる雑誌ジャンルにおいては、「FLASH」がやや健闘したものの、「AREA」「FRIDAY」ともにあまり良い状態とはいえない。

他方「SPA!」は前回同様、前年同期比で堅調な伸び。前四半期比ではマイナス0.6%の下げを記録しているが、これとて実売数としては1000部未満の下げに過ぎず、誤差の範囲と評しても良い。次のグラフに同誌の部数動向を示すが、2011年まで下げ続けた部数について、2012年以降はその動きを押しとどめ、むしろ微数ながらも増加・底上げすら示している。競合他誌が大きく落ち込む市場環境の中で、これは大健闘に評することができるもの。さらなるプラス施策を打ち出す、周辺環境の改善がなされることで、数少ない成長株に転じる可能性を秘めている。

↑ SPA!印刷実績
↑ SPA!印刷実績

株価動向で言えば「エネルギーを貯めている状態」に見える。果たして今後上に向かうのか下に落ちるのか、動向が楽しみな銘柄、もとい雑誌ではある。

ベビモが独り勝ち的な育児系など


続いて育児系雑誌。前四半期ほどでは無いが、今市場を顕著に表す結果が出ている。

↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)

日本における少子化は進んでいるが、子供がいない状態では当然ないし、子供の育児に関する需要は当然存在する。しかも昨今における小世帯化や近所づきあいの疎遠化、世代間の意志疎通の希薄化に伴い、確かな子育て情報を得られるソースとして、育児系専門誌の価値観は高まりを見せている。他方、ソーシャルメディアをはじめとするインターネットコミュニティサービスの普及(専用のサービスも多い)により、状況は必ずしも全面的に芳しいとは言い難い。唯一群を抜いて奮戦している「ベビモ(Baby-mo)」と、それ以外が概して軟調なところを見るに、育児情報を求める女性陣は、手堅く安心感のある専門定期発刊誌を1誌求め、不足分、あるいは即時性のある情報はネット経由で取得するという、2つのルートを基軸にしているのかもしれない。

「ベビモ(Baby-mo)」は季刊誌で、該当期には1誌のみの発売。部数は前四半期から800部積み増しし、7万8300部になった。今回の特別付録は「X-GIRL STAGESお散歩トート」。Wポケットが何気に便利。内容もアンケートの調査結果や夏に向けた紫外線に関する注意、夏服への着回し方法、さらには職場復帰に関するテクニックなど、多種多様に渡っている。部数の上昇幅はやや落ち着きを示しつつあるものの、この2年間ほどは漸次増加していることに違いは無く、まさに「成長株」といえる。記事の対象となる子供同様、健やかに育ってほしいものだ。

↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績
↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績

特に去年夏以降、大幅な売り上げ増を示しており、まさに昇り竜状態にある。

食・料理・レシピ系雑誌。従来からの健康志向の高まりに加え、先の震災を経て内食・中食への注目が集まる中、レシピに関する需要は増加の一途をたどっている。しかし上記育児系雑誌同様、いやむしろそれ以上に、インターネット上の情報の優位性が光るジャンルでもあることから、状況はあまり良いとはいえない。

↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)

↑ (参考)レタスクラブ/栗原はるみ haru mi 印刷実績。2014年1-3月まで
↑ (参考)レタスクラブ/栗原はるみ haru mi 印刷実績。2014年1-3月まで

今回期では「栗原はるみ haru mi」と「オレンジページ」がプラス、他の3誌はいずれも前年同期比で大きなマイナス。「栗原はるみ haru mi」は雑誌の主軸にある栗原はるみ氏のカリスマ性、ネームバリューの大きさ(NHK「きょうの料理」に出演するなど料理分野での実力、知名度の高さに加え、多種多様な本の出版も行っており、料理に限らず多彩な才能を発揮している)が、単なる料理雑誌以上の価値を読み手に与えている。この点が、他誌との差別化を成し、実績に結び付いているのだろう。ここ数四半期に渡り比較してその動向を検証している「栗原はるみ haru mi」と類似の汎用的料理中心の雑誌「レタスクラブ」の立ち位置も、今四半期でついに逆転してしまった。特に「栗原はるみ haru mi」がこの1年、順調に部数を伸ばし続けてきたのが大きい。

エリア情報誌は苦戦続く、犬猫雑誌は再下落へ


エリア情報誌。数年前に大きな再編成が行われたが、状況の改善までには至っていない。

↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)

今回期も前四半期同様、全誌がマイナス。5%以上の下げ幅を示しているのは「東海ウォーカー」以外のすべて。特に「福岡ウォーカー」のマイナス26.4%が断トツ。表示画面が広くGPS機能も実装し、インターネットコミュニティの利用も容易なスマートフォンやタブレット機の普及に伴い、情報の速報性や検索能力、マルチメディア性でははるかに劣る紙媒体の雑誌が、エリア情報に関して対抗することが難しいのは当然の話。根本的な戦略転換、あるいはコロンブスの卵的発想の盛り込みが必要なようだ。

人間への反応も含め、ある程度明確な意思を持つペットとしてはメジャーな部類の「犬」と「猫」。それぞれの専門誌として良く知られている「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。いわゆる通販専門誌で、本屋などで購入することは出来ない、やや特殊な部類の雑誌である(サンプルなどはよく本屋で配られている)。また公共施設などの待合室ではよく配されており、意外なメジャー感を覚えることができる。

↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)

↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)((2014年1-3月期まで)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)((2014年1-3月期まで)

元々部数は「犬」の方が多かったが、その分ここ数年の下げ方も「犬」の方が大きい。「猫」は2011年後半以降はほぼ横ばいに推移しているものの、「犬」はさらに下げ続けている。ペットそのものの需要の変化も一因だろうが、このままの動向が続くと、「犬」「猫」の部数が肩を並べる日もそう遠くないものとなってしまう。

もっとも両誌は元々通販専門誌で、一度購入を決定したら半ば惰性的に買い続けてしまう傾向にある。そう大きな変化は起きない……はずなのだが。

「小学二年生」は現状維持、「一年生」が少々冷や汗


最後に小学生向け雑誌「など」。以前から解説の通り、そして本屋などでの展示状況を見れば分かる通り、小学館発行の小学生向け雑誌として有名な「小学●年生」シリーズは、すでに「小学三年生」以上が休刊し、現在では「小学一年生」「小学二年生」のみの刊行となっている。「いぬのきもち」「ねこのきもち」では他の類似雑誌、例えば「ことりのきもち」「はむすたーのきもち」「きんぎょのきもち」のような雑誌があるわけではないので追加することはかなわないが、今件ジャンルでは類似環境下にある子供向け雑誌は複数確認できるので、幼稚園関連の雑誌をいくつか加えてグラフを生成している。

↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2014年1-3月、前年同期比)

前四半期同様今四半期でも、前年同期比でプラスを示した雑誌は無し。しかし「幼稚園」と「小学二年生」がプラスマイナスゼロとなり、安堵の吐息がもれる状況。一方で「小学二年生」同様季節変動が激しく、それゆえに前年同期比の動向が非常に重要な「小学一年生」において、10%を超えるマイナス値が出てしまっているが大きな懸念材料となる。これまで上の学年から休刊が続いていること、詳しくは後日別の機会で詳しく精査するが、部数そのものははるかに「小学一年生」の方が上であることから、今すぐ何か発刊上の変化が生じる事態には陥らないはず、である。



以上大よその形ではあるが、複数ジャンルで雑誌の印刷部数動向を確認した。これはほぼそれぞれの販売動向に比しており(売れないと分かっていながら雑誌を過剰に刷って返本在庫で倉庫を埋め、損失を拡大するような酔狂なことは滅多に行われない)、各ジャンルにおける市場動向を推し量ることができる。「SPA!」のような堅調さ、「ベビモ(Baby-mo)」「栗原はるみ haru mi」のように先が期待できる成長ぶりを示している雑誌も一部にはあるが、概して軟調な状況に違いない。

数少ない期待・成長株の雑誌を見ると、他ジャンルの雑誌同様、「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」なる特性を有していることに気が付く。これが唯一の方策というわけではないが、混沌さを増している現在の出版事情下においては、数少ない「成功方程式」といえるのではないだろうか。


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【定期更新記事:出版物販売額の実態(日販)】

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