二極化構造強まる…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2014年1月-3月)

2014/05/20 08:25

社団法人日本雑誌協会は2014年5月13日付で、同協会がほぼ四半期の間隔で更新・公開している印刷部数において、最新値となる2014年1月から3月分の値を公開した。この値は主な定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」で示したものであり、第三者による部数動向を記した指標としては、もっとも公平で信頼できる、精度の高いものである。今回はその値のうち「ビジネス・マネー系雑誌」関連の値を確認し、各種グラフを生成してその動向を精査、さらには業界全体の状況確認を行うこととする。

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「プレジデント」がさらにプレジデント化


データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」をはじめとした用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそのページで確認のこと。

それではまず最初に、2014年の1-3月期とその前期に該当する、2013年10-12月期における印刷実績をグラフ化し、状況を確認する。

↑ 2013年10-12月期と2014年1-3月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2013年10-12月期と2014年1-3月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今四半期では休刊、新創刊などによる増減誌は無し。ただし不定期刊と化し前回久々に登場した「¥en SPA!」が、今回は再び非活性化してしまっている。

対象誌の中では定番・安定のトップとして「PRESIDENT(プレジデント)」がついている。詳しくは後述するが、他の雑誌と比べて明らかに伸び方…赤棒と青棒の差…が異なる。下位雑誌が軒並み「赤が短い」、すなわち売り上げを落としている中で、トップがさらに「赤が長い」、つまり売り上げを積み上げているのには、驚愕すら覚える。

上位はさらに伸び、下位は…前四半期比較


続いて各誌における四半期間の販売数変移を算出してグラフ化、状況を確認する。約3か月の経緯で印刷部数(≒販売部数)の変化が生じたのか否かの割合を算出、グラフ化したもの。季節による需要の変化を除けば、通常は大きな変化は生じない、はず。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2014年1-3月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2014年1-3月、前四半期期比)

前四半期ではプラス領域には「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」「PRESIDENT」「週刊東洋経済」が収まっていた。今回四半期もまた、奇しくもと表現すべきか、「PRESIDENT」「週刊東洋経済」が、そして「週刊ダイヤモンド」がプラス圏に位置することとなった。前回まで大きく躍進していた「COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)」は、少々足踏み状態となる。

「PRESIDENT」は前四半期から続き大きな伸び方が目に留まる。編集方針を大胆に変更したからか、あるいは時節の流れを上手くとらえることに成功したのか、それともたまたま偶然なのか、その実情はつかみとることはできない。該当期間の発売号を見ると、いずれも「一般雑誌のように一見してそれでおしまい」では無く、「手元に残しておいて辞典、資料用文献として保存しておきたい」類の内容比率が上昇しているのが気になる。これも前四半期で指摘しているが、「永久保存版」的な特集、やや誇張な表現かもしれないが「書籍を作る意気込みで雑誌を作る」的な雰囲気を覚えることができる。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2014年1-3月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2014年1-3月期まで)

同誌の部数動向を見ると2010年までは漸減、それ以降は横ばいを示していた。しかしこの2四半期は明らかに上昇傾向を示しており、それまでの数年間における上限数を4万部ほど上回る値にまで増加している。もう1四半期同じような状態が続けば、確実に「PRESIDENT」において何か(無論ポジティブな内容)が起きたといえる。雑誌業界全体の低迷感著しい中で、これは注目に値する動きに違いない。

二強化続く…前年同期比動向


続いて前年同四半期の算出とグラフ化を行う。季節による販売状況の変化を考慮せず、純粋に雑誌のすう勢を(年ベースではあるが)確認できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2014年1-3月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2014年1-3月、前年同期比)

前四半期比ではやや減少が示された「COURRiER Japon」だが、前年同期比では大きな上昇過程にあることには違いない。ただし四半期単位の動きを細かくグラフ化すると、この半年位の間に上昇機運が弱まり、失速しているようにも見える。これが単なる中休み・踊り場的なものなのか、それともやはり失速で動きが反転していくものなのか、今後の動向が気になる。

↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2014年1-3月期まで)
↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2014年1-3月期まで)

また上記にある通り、ここ2四半期ほど上昇機運にある「PRESIDENT」も、前年同期からは大きな伸びの中の最中なことが分かる。同じ上昇組でも直近では相反する動きを示しているため、次の四半期以降の動きが気になる。

一方「週刊ダイヤモンド」は前四半期では大きなプラスだったものの、前年同期比では少なからぬマイナス。つまり前四半期からの伸びでは、年ベースの減少ぶりを回復させるまでには至らないということになる。ここからさらに復調を続け、年ベースでの算出値もプラスに転じさせることが出来るのか。方向性としては「PRESIDENT」に近いだけに、期待がかかる。

方向性といえば、前四半期・前年同期比共に「THE 21」の落ち込み具合が目に留まる。記事内容としても「PRESIDENT」と雰囲気的に似たところはあるのだが、印刷部数動向を見るに、周知度・内容などがまだ追いついていないようだ。



先行する記事で取り上げたエンタメ系雑誌同様、経済系雑誌はスピード感が求められるジャンルであり、それはすなわちインターネットとの相性が良いことを意味する。見方を変えれば、紙媒体のみでその特性上の土俵に上がって勝負したのでは、インターネット媒体との戦いで勝ち目はない。連動性を工夫してあえて競合媒体の波に乗るか、それともインターネットには無い独自性・魅力を呈することが求められる。

今回上昇機運を示した「PRESIDENT」、そしてやや中だるみはあるものの先行きにかける期待は引き続き大きい「COURRiER Japon」双方とも、紙媒体としての利点「手元にある存在感」「保存しておきたい価値観」を押し出したのが勝因といえる。「場所を取る」のは得てして紙媒体のデメリットではあるが、それを逆手に取り「場所を取らせてでも手に入れたい」と思わせる内容を創り上げた次第だ。無論これは本文中の表現にある通り、書籍の感覚で雑誌を作らねばならないため、より大きな労力が必要となる。当然、出版側の負担も増える。それでもなお、断行した結果が出たのだろう。

この努力が果たして今分野の雑誌における「正解」であるのか否か。現時点では断じることはできない。しかし可能性の一つとしては十分な値といえる。他の方策、方向性を模索しつつも、一つの指針として考察に値するものではないだろうか。


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