博報堂のネット部門が大いに伸びる(電通・博報堂売上:2014年4月分)

2014/05/14 08:30

博報堂DYホールディングスは2014年5月13日付で同社グループ主要3社の博報堂、大広、読売広告社それぞれの2014年4月分となる売上高速報を公開した。また電通ではそれに先行する同年5月9日付で、同じく同社4月分の単体売上高を発表している。これにより日本国内の二大広告代理店における2014年4月次の売上データが出揃う形となった。今回はその両社の主要種目別売上高の前年同月比を当サイト側で独自に算出し、さらに指標を導き出し、その値を基に各種グラフを生成し、それぞれの広告売上動向や広告業界全体の動きの精査を行うことにする。

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雑誌は不調だが博報堂は前年の反動、ネットで博報堂の伸びが目立つ


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項は、過去の記事をまとめたページ【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年4月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年4月分種目別売上高前年同月比

震災で一部変化はあったものの、広告業界のトレンドは大よそ震災前からの中期的な流れにそったものが継続している。具体的には従来型4マスは軟調だが高齢化社会の進行を受けてテレビがやや復調気味なこと、インターネット広告は大きく伸びていることが主なポイント。また震災の影響で電力周りの懸念が影響したこともあり、従来型広告が比較的堅調な動きを示しているのも注目に値する(。とはいえフリーペーパーなど一部は軟調だが)。

今回の4月分の動向を確認する。まず軟調とされる従来型4マスだが、雑誌はおおむね不調。テレビはほぼ横ばい。新聞が結構順調に見えるが、このうち電通は前年の反動によるところが大きい。詳しくは後述するが、2年前比を算出するとマイナス6.2%となる。

インターネットは博報堂の伸びが著しい。同社の前年同月における前年同月比はプラス18.5%であり、昨年が悪かったことの反動で伸びたという説明はできない。2年超の伸び率は80%を超えており、何らかのイレギュラー的な案件も合わせ大きな成長を果たしたものと見なせる。

従来型広告では博報堂の「その他」をのぞけば概ねトントン。電通のマーケティング・プロモーションがやや軟調だが、これは単に前年同月が良すぎた(プラス28.5%)の反動でしかない。

4月は3月の大きなドタバタから転じて、広告出稿に影響を及ぼすような大きな突発性のイベントは思い浮かばない。前年同月の反動部分を除けば、概して各部門の中期的な動向に沿った動きといえよう。

↑ 参考:電通2014年4月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2014年4月度単体売上(前々年同月比)

電通の2年前比を算出すると、テレビはややイレギュラーなところがあるが、大よそ業界全体の動向を示しているといえる。今月の動向は両社合わせて推し量ると「ネットと新聞が順調」という形でまとめられよう。

電通の総額推移によれば……あれ?


次のグラフは電通の今世紀における各年4月の広告売上総額推移を抽出し、その動向を折れ線グラフにしたもの。同じ月の経年売り上げを追いかけることにより、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じること)に配慮せず、年単位での売り上げ推移、さらには広告市場の情勢を推し量る材料を構築できる……のだが。

↑ 電通月次売上総額推移(各年4月、億円)(-2014年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年4月、億円)(-2014年)

他の月の動向を見る限りでは、金融危機やリーマンショックの軟調さからはすでに脱出した感の強い状況のはずだか、今回の4月分だけでみるとリーマンショックはともかく、金融危機前の水準にはとても及ばない状態。しかもこの1、2年では再び不調さを見せる動き。上記の単月分動向でも博報堂と比べてやや不調さが否めない電通だが、この数年は4月に限るとあまり良い数字が出せない状態が続いているようだ。原因は特定できないものの、不思議な現象ではある。

先月分、つまり2014年3月分では大きな影響を与えた消費税率の改定だが、施行後はやはり消費者マインドに小さからぬ影響を与え、特に小売り関連は痛手を受けている様子が一般店舗の動向からも容易に確認できた。しかし4月下旬にもなるとそれら雲がかったような雰囲気も薄れ、これまでの状況に戻りつつある。商品ラベルの数字で「5」の値が減り、「8」を多く見かけるようになったこと位が大きな違いか。

広告面でも改定前に多用された、消費税に絡んだ客引き用の言及(4月以降ならば例えば「増税なんて吹き飛ばせ」のような類)は意外にもあまり見られない。事務的に表示方法を変える告知が多く、目立たない形となっている。先日発表された景気ウォッチャー調査の結果でも、現状における消費マインドは大きく下げているが、先行きではすでに回復基調を示しており、案外広告面でも似たような動きを見せる可能性は高い。

なお冒頭で呈した大きなグラフだが、各項目は類似・同一であるものの、電通と博報堂の間、さらには同一社内でも項目間で具体的な金額面に関して、同じ意味を示しているわけでは無いことに注意する必要がある(以前同一視した上で質問を受けたことがある)。例えば今回月なら雑誌の下げ「率」こそ両社で似たような値を示しているが、額面(上の減った額)がほぼ同じということを意味しない。

下記に金額面から見た具体例をまとめてグラフ化しておく。項目別ではインターネット分野の市場規模は、従来4マスの最大勢力であるテレビと比べると数分の一に留まっている。インターネット広告は成長過程にあるが、それでもテレビとは言葉通りケタ違いの市場規模でしかない。スマートテレビの浸透、スマートフォンやタブレット機の普及率向上など、インターネットを取り巻く環境は日進月歩の勢いだが、現状ではテレビの広告費にインターネットが追いつくのは極めて困難に見える(先日アメリカでは追いついた、との一部報道があったが、あれは誤報である)。

↑ 電通・博報堂DYHDの2014年4月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2014年4月における部門別売上高(億円、一部部門)


また、電通と博報堂間では売上総額で約2倍、「その他」部門でも数倍以上もの差がある。得手不得手も一因だが、両社の許容範囲、規模の違いは確実に存在することを認識しておいた方が無難といえよう。



事前に提示された限りの資料によると、震災以降の失策による電力需給問題は改善が見られず、今年の夏もまた従来ならば必要なかったレベルでの節電を求められることになりそうだ。詳細は【2014年夏の電力需給状況をグラフ化してみる】にあるが、関西電力・九州電力の両管轄で電力使用制限令の発令が行われる可能性が残されており、また発令が無く節電要請に留まったとしても、電力事情が厳しい状態に違いは無い。さらに【電気代・ガス代の出費動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2014年)(最新)】で示した通り、(エネルギーレベルでのカントリーリスクはさておくとしても)電力価格の上昇は確実に家庭・企業の懐を圧迫する値上げを繰り返さざるを得ず、電力を多分に使う広告もまた、クライアント側が躊躇してしまう風潮が浸透しつつある。見方を変えれば、そのような心配が要らないタイプの広告が考案提示され、特に従来型広告でそのプラス影響が出ているのは、昨今の電力事情で広告業界が受けた影響の現れの一つといえる。

本文中で触れた通り、懸念された消費税率改定に伴うマインド失速と広告費の縮小はさほど見られない。あと数か月はその関連での動きを注視する必要があるが、景気ウォッチャー調査の動向と照らし合わせ、現況DIが50を超えれば安心できる領域に戻ったといえる。景気動向は多様な方面で小さからぬ影響を与え合う。他の月次経済指標の流れと合わせ、少なくとも夏位までは消費税率改定に伴う変化のあるなしを頭に入れた上で、考察を行いたいところだ。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(下)…ネット以外動向概況編】

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