乳製品をはじめ軒並み下落、食肉と穀物のみ微上昇(2014年4月分世界食糧指数動向)

2014/05/11 14:00

食品価格の動向を一番よく認識できるのは、日々の食事の素材や昼食用のお弁当、総菜などを購入する時、つまり「直接自分がお金を出して食品を購入するタイミング」に他ならない。常に購入している惣菜の量が減っていたり、キャベツ1個の価格が2倍に跳ね上がったり、足しげく通っている天ぷら屋のサービス天丼が500円玉一枚で食べられなくなったら、「ああ、食品価格が上がったのだな」と実感することだろう。これらの食品の価格決定に小さからぬ影響を与えるのが、国際的な食糧価格の動向。昨今では小麦製品やエビの高騰が記憶に新しいところだが、そのような単品レベルの動向では無く、大まかなカテゴリ区分の上で価格変動を確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイトで発表している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2014年5月8日に発表された最新版の値、2014年4月分を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値などからグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を精査していくことにする。

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概して安値、食肉と穀物がわずかに


今記事中にあるデータの取得元、各種用語に関しては、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】にある。必要な場合はそちらで確認のこと。

まずは最新データを含めた収録データを基に、1990年以降の推移を折れ線グラフにする。細かい部分まではチェックできないが、前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を確認できる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年4月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2014年4月)

砂糖は価格変動性が高い食料品であり、投機をテーマとした小説や漫画、ドラマや映画にも良く登場する。その類の話で知っている人も多いに違いない。その実態がグラフ上にも良く表れている。それ以外は2005年位までは大人しい動きに留まっている。

しかし2005年終盤以降、砂糖のみならず他の食品も少しずつ値を上げ始める。その後金融危機のきっかけとなる「サブプライムローンショック」(2007年夏-)が発生するにおよび、それぞれがこれまでに無いような上昇を示す。砂糖だけでなく他の食品も、砂糖と同じような振れ幅で上がっていく。

これは株式市場の暴落に伴い、その市場から逃げ出した投資資金の流入先として商品先物を多数の投資家が選んだのが原因。投機的な市場動向に拍車がかかった次第である。市場規模は商品先物市場の方が小さいため、当然、市場の反応は劇的なものとなる。

その後は急激な上昇を懸念する投資家心理の影響を受けた反動による急降下、「リーマンショック」(2008年9月以降)による乱高下を経て、現在の高値安定状態に移行している。各食品項目は200前後の値を推移。基準値、かつ今世紀初頭までは水準値でもあった100と比べるとその2倍のポジションにある。

次に示すグラフは、横軸における期間を短縮し、記述スタート期間を2007年1月としたもの。この年の7月・8月あたりから、直近の金融危機のトリガーとなった「サブプライム・ローン」問題が露呈し、市場は大いに揺れ動く。昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの動向を、より詳しく確認できる。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年4月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2014年4月)

2010年初頭から荒い値の動きが相次いで砂糖指標で起きているが、これは砂糖相場での過熱感と豊作で生じた急落、さらには需給状態を受けての再上昇の動き。2011年中旬に約400まで上昇し、そこを天井として(もちろんFAOの記録のある中でも最大値)、昨今では豊作による供給過多、世界的な景気後退で生じた甘味需要の減少により、値は低下を続けている。

それ以外の食料品の動向を確認すると、穀物、そして油脂はこの1、2年の間は下落気味、乳製品の上昇などが起きている。乳製品は日本ではこの春に相次ぎ値上げや構成量の減少が行われており、その理由の1つとして「国際価格の上昇」が呈されていたので、「ああ、これが原因か」と再認識させられる人も多いはずだ。

前月比と前年同月比の動き


最新の値、そして直近1年ほどの動向を確認するため、各指標の元値から「前年同月比」と「前月比」を独自算出した上で、その数字の変移が分かりやすいように生成したのが次のグラフ。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年4月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2014年4月)

総合指数は前月比でマイナス1.6と先月から転じて下落。前年同月比はマイナス3.5%とこちらも下落しており、この一年では緩やかな下落傾向にあることが分かる。

個別項目を見ると、前月比では食肉と穀物がわずかにプラス。それ以外はマイナスで、特に乳製品の下げ方が著しい。ここ一年強ばかりの間は上昇が続き、史上最高値を更新し続けていた乳製品だが、この数か月は下落に転じている。とはいえ、中期的に見れば今なお高値圏にあることには違いない。

乳製品に関する解説を発表リリースからひも解くと「中国とロシアの購入減退が大きな要因。中国はSMP(Whole Milk Powder、脱脂粉乳)最大の、WMP(Skimmed Milk Powder、全脂粉乳)では第2位の輸入国であり、ロシアは世界最大のバター輸入国であることから、その影響も大きなものとなる」「加えて生産国であるニュージーランドの豊作気運、北半球でも順調な生育ぶりが確認され、これが需要拡大への期待を呼び、結果として値は下がった」と説明している。ロシアが最大のバター輸入国であるというのは意外(【USDAのWorld Markets and Trade】で確認済み)だが、中国の巨大な消費量には改めて驚かされる。

農林水産省のレポートで現状を確認


今記事で毎月精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、4月30日に更新された2014年4月分を確認する。その最新レポートによれば、国際的な穀物需給に関して、小麦・とうもろこし・大麦・米で生産量が増加し、史上最高の量(24.5億トン)となる見込み(前月から項目数・数量共に変わらず)。消費量も小麦・とうもろこし・大麦・米の全項目で増加し、こちらも史上最高の量となる見込み(24.1億トン、前月と項目、量共に変わらず)が継続中。そして期末在庫量見込みは生産量が消費量を上回ることから、上昇する傾向を示している(4億9010万トン、生産量比で20.3%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

今回月はやや在庫率・在庫量が増加した。在庫量の増加分がやや大きかったので、在庫率は0.1%ポイント増加することになった。何らかの形で食料不足が突発的に生じた時の対応を想定すれば、在庫率の上昇は喜ばしい話ではある。とはいえ今現在の在庫率が年間消費分の2割強、つまり2か月強ほど分でしかないのは、安心を得るまでには程遠い。

今回月では大よそ値は下落しており、購入側としてはありがたいお話ではある。もっとも需要減退による需給バランスの変化は、容易に反発もありえることから、出来れば供給側の増加による下落が望ましい。先月伝えた「ウクライナ情勢が食料価格に及ぼす影響」だが、今回月のレポートでは、ウクライナの主要食料輸出品項目の穀物項目で「ウクライナ情勢は穀物価格の動向にほとんど影響を与えていない」と明記されており、一安心という感はある。もっともレポートで併記されているアメリカの気象状況同様、先の見通しがつきにくい要件でもあることから、今後とも通常以上の注視が求められよう。


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