二極化強まる失業率、ギリシャやスペインは相変わらず若年層の2人に1人以上が失業中…EU失業率動向(2014年3月分)

2014/05/03 14:00

昨今では経済状態の悪化が小康状態、さらには改善の兆しを見せるニュースが相次ぐ一方、旧共産圏の国々で情勢不安定化が強まり、軍事的騒乱が相次ぎ、この動きがエネルギー問題、しいては経済問題にまで波及し、経済の復興を遅らせるのではないかとの懸念も見られる欧州情勢。その欧州の国々の経済・社会情勢を逐次見つめ、データを集積し、分析を行いその結果を公知し、諸国や欧州の各政治的・経済的な集約組織の施策決定材料を構築する役割を担う欧州委員会の統計担当部局・EU統計局(Eurostat)は2014年5月2日付で、毎月の定例更新分となる諸国の失業率データの2014年3月分を解説レポート込みで公開した。今回はその公開値を用い、EU諸国を中心とした成人全体、さらには若年層に限定した失業率を精査し、現状とこれまでの動向を確認していくことにする。

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二極化傾向が強まる? 悪化するキプロス、改善進むアイルランドなど


データ取得元の説明、グラフや文中に登場するEA17・EU28の構成国の詳細や動向、各国の参加状況の変化については、過去の記事の一覧ページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上でまとめて解説している。詳細が知りたい場合はそちらを参照してほしい。

ILO基準に基づいた2014年3月時点の各国失業率は次の通り。EU28か国では10.5%・EA17か国では11.8%を記録している。先月分(速報値から修正済み)と比較した場合、EU28か国・EA17か国共に変化はない。今回更新されたデータについて過去の分までさかのぼって検証した限りでは、EA17か国・EU28か国共に2013年4月に最悪の値を示しており、それと比べるとほんの少しではあるが改善の方向に向かいつつある。ただその歩みは遅いため、一か月単位では動きが見えない場合もある。

このグラフもあわせ一連のEU失業率の記事では、最新データを掲載している国と合わせるため、(前月比算出のために)直近2か月分のデータがEurostat上で未収録の際には、「掲載時点で公開されている最新月分の」データを代用している(実のところ多くの国で、直近数か月がデータ未着の状態にある)。例えばギリシャは今回更新時点では2014年1月分までの値(26.7%)が公開されている(2014年1月分以降はまだデータが登録されていない)ので、ここでは2014年1月分を2014年3月分、そして2013年12月分を2014年2月として、収録・掲載・計算に用いている。

↑ 2014年3月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2014年3月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャで変わらず。スペインはそれに1.4%ポイントの差を有しての2位。このポジションはここ数か月継続中で、固定化しつつある。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2014年1月時点の値を適用させているため、仮に公平を期するため同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは25.5%(1月分)。やはりギリシャの26.7%の方が上(悪状況)となる。

スペインはかつてギリシャ同様にヨーロッパの債務危機の最重要注視国、つまりそれだけ財政面で危機的な状態にある国として知られ、当サイトでも何度となく外電を集約する形でその情勢を伝えている(例えば【空のガソリンスタンド、たなから消える生鮮食品……スペインのストライキ続報】)。当然その状況を受けて、失業率も高い。しかしここ数年の動きを見ると、悪化のピークを過ぎ、少しずつ改善に向かいつつあるように見える。

↑ 2012年6月-2014年3月での失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2012年6月-2014年3月での失業率(季節調整済)(スペイン)

ヨーロッパ経済全体も、経済の低迷や状況の悪化を知らせる報道は数を減らし、状況改善の動きを予見させる話が少しずつ増えている。少なくとも2、3年前のような、明日にでも世界の終りが来てもおかしくないような雰囲気ではない。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2014年2月→2014年3月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2014年2月→2014年3月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の少ない国では統計値が変化しやすい(いわゆる統計上のぶれ)。また統計取得の方法の違いなどもあり、国によっては結果の流れが他国と大きく異なる場合がある。2、3か月前の値ならまだしも、1年位前の値にまで数%ポイントの大きさで修正が入ることも珍しくない。そこで「前月比でプラスマイナス0.5%ポイント未満は誤差」という独自の基準を設けてチェックを行う。

すると今回月ではキプロスが悪化、ギリシャとリトアニアが改善の動きを示したと判断できる。ギリシャは値そのものが大きく、また修正も入りやすいので楽観視はできないが、良い傾向といえる。一方そのギリシャと経済的な結びつきが強いキプロスが大幅に下落したのは気になる所。次のグラフにある通り、キプロスは中期的に状況の悪化を示しており、他の諸国と対照的な状況を示しつつある。二極化とはやや極端な表現かもしれないが、その言葉がマッチしそうな雰囲気を見せている。

↑ 2012年6月-2014年3月での失業率(季節調整済)(キプロス/アイルランド/ポーランド)
↑ 2012年6月-2014年3月での失業率(季節調整済)(キプロス/アイルランド/ポーランド)

少しずつ改善、しかしスペインなどで過半数失業は変わらず…若年層失業率


続いて若年層(25歳未満)の失業率動向。先進国では特に若年層の失業率の高さが深刻。これは寿命の延びや技術革新、経済構造の変化など、先進国が有する状況の結果として生じる、副作用的な社会現象として知られている。

今回発表された2014年3月時点の25歳未満の失業率はEA17か国で23.6%・EU28か国でも22.8%。5人に1人以上が失業状態にあるという深刻さは継続中。成人全体の失業率は経済状態の回復の中で少しずつ改善の兆しを見せているが、若年層はそれほど恩恵を受けていない。

全体失業率上位ではお馴染みの国々が、若年層失業率でも上位に名前を連ねている。ギリシャの56.8%(2014年1月)を筆頭に、スペインの53.9%、クロアチアの49.0%、キプロスの43.2%など、経済的に不安定な国の高さが目に留まる。

↑ 2014年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)
↑ 2014年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)

↑ 2014年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)
↑ 2014年3月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(3月データが無い国は直近分)

上記解説の通りこちらでもプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差とする基準を適用すると、今回月ではハンガリーとエストニア、リトアニア、イギリス、アイスランド、日本の状況改善が確認できる。特に大きな改善が確認された2か国のうち、エストニアは元々数字のぶれが大きく、今回発表分でも過去のデータについて大幅な変更が行われているため、今回月もデータ上のぶれの可能性が高いが、ハンガリーはここ数か月継続して状況改善が見られるため、注目に値する。もうしばらくこの傾向が続くのであれば、個別にグラフを生成して状況の精査を行っても良いかもしれない。

大人全体の失業率が改善の流れにあるスペインでは、若年層限定でも少しずつ、改善の兆しを示している。

↑ 2013年1月-2014年3月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2013年1月-2014年3月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)

今なお計算上は2人に1人以上が失業状態にあり、例えば日本の現状と比較すれば、健全な状態とはとても言えるものではない。しかし流れが良い方向にあるのも事実。直上のハンガリー同様、今後ともこの流れが継続することに期待したいものだ。


ヨーロッパではドイツをはじめいくつかの経済的に強い立場にある国がけん引する形で、経済の復調感が少しずつだが確実に浸透しはじめている。一部の国に留まり、ゆっくりとしたものでしかないものの、確実に失業率の改善という形にも、それが表れている。

他方冒頭で触れた通り、東ヨーロッパの旧共産圏諸国、ロシアと深いつながりのある国々において、政治的な不安定感が増し、一部では軍事的な騒乱状態が発生している。


↑ 東ヨーロッパ諸国でもっとも騒乱レベルの高いウクライナからは、日々その混迷を伝えるニュースが流れている。これはウクライナ政府軍ヘリが相次ぎ親ロシア勢力に撃墜された様子などを伝えたもの(ロイター通信公式)。

これらの国々の騒乱はかつての国区分や民族に関わる話だけでなく、EUとロシアとの政治・経済的綱引きが多分に影響していることに加え、ロシアが採掘し西ヨーロッパ諸国に輸出しているガスにも関連してくるだけに、事態は複雑化し、単純に解決する気配は見せていない。状況が長引き、悪化することで、これらの国々自身だけでなく、周辺諸国にまでマイナスの影響が生じ、経済復調の足止め、そして今件失業率の改善にもストップをかける可能性があるため、十分な留意が必要といえる。

なお【「CPD(国公債デフォルト確率)動向」の更新は終了しました】でお伝えしているが、失業率とも関連性の深いCPDの定期更新は、情報提供元の提供終了に伴い、更新は停止している。連動性の高い情報のやり取りで、さらに理解を深める展開が出来なくなってしまっただけに、残念な話ではある。


■関連記事:
【日本の順位変わらず・数字はやや改善(国債デフォルト確率動向:2013年Q3)】
【EU失業率を若年層と中堅層以降で比較化(2012年8月分)】
【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2014年)(最新)】
【ギリシャ、キプロスは沈静化するも、ウクライナの火種は強まる(国債デフォルト確率動向:2014年2月)】

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