建設業界の人手不足状況を長期的にグラフ化してみる(2016年10月分まで)(最新)

2016/11/26 10:12

2016-1126以前掲載した記事【建設業界の人手不足状況をグラフ化してみる(2014年3月時点)】において、国土交通省の定点観測的調査「建設労働需給調査」の値を基に、建設業界の人材不足状況を当時の最新データ分について精査した。今回は2016年11月25日に発表された最新版となる2016年10月分までを含め、今データをもとに、中長期的な同業界の人材不足感の推移を確認する。ここ数年の不足感の実情を、過去との比較で見ていくことになる(【発表リリース:建設労働需給調査結果】)。

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建設業界の人材過不足率を長期的に見ていく


「建設労働需給調査」の調査概要、及び過不足率の算出方法は先行記事の「建設業界の人手不足状況をグラフ化してみる(2014年3月時点)」にある通り。まずはじめに時系列データを容易に取得可能な1994年分以降について、月次の全体的な過不足率の推移を確認する。これは中長期的な変移を見ることから、季節調整を行った上での値を採用する。また、いわゆる金融危機が発生した2007年以降に限ったグラフも併記する。数字そのものはプラスの値が大きいほど不足感が強く、マイナスほど過剰感が強い。

↑ 建設技能労働者過不足率推移(季節調整済み)(プラス:不足)(8職種合計)
↑ 建設技能労働者過不足率推移(季節調整済み)(プラス:不足)(8職種合計)

↑ 建設技能労働者過不足率推移(季節調整済み)(プラス:不足)(8職種合計)(2007年以降)
↑ 建設技能労働者過不足率推移(季節調整済み)(プラス:不足)(8職種合計)(2007年以降)

大勢としては「景況感の好転による不足感」「金融危機で過剰感」「震災をきっかけにした復興需要や政情変化などによる不足感」「過度な不足感からの安定化への動き」といった昨今の流れが見て取れる。

金融危機ぼっ発直前の2006年9月に一度不足感のピークを迎えるも、それ以降は不況化に伴い建設需要も低迷し、合わせて人材も過剰気味となる。リーマンショックを経て2009年10月には最低値のマイナス2.0%を示し、以降は徐々に回復の兆しを見せる。

グラフの限りでは東日本大地震・震災の2011年3月が一つのトリガーに見える。震災直後は混乱状態にあったものの、数か月後から復興需要に合わせる形で人材不足が顕著化し、過不足率は1%台を推移する。そして政情の変化(2012年冬)、東京オリンピック開催決定(2013年9月)、さらには消費税率改定に伴う個人向け住宅を中心とする駆け込み需要の発生(2013年後期に顕著化)など、建設市場の需要拡大と人材不足を後押しする事象が相次ぎ、それに伴い過不足率も上昇していく。

ここ数年に限れば、データをすぐに取得できる1993年以降では最大の値を示した2014年3月のプラス3.4%をピークとし、そこから低下する動きを示していた。その当時と比べると人材不足の声がややトーンダウンしている現状も、数字の上で裏付けが出来る。

現時点で最新となる2016年10月の全体的な季節調整済みの過不足率はプラス0.9%。業種別では過不足はあるが、全体としてはほぼ需給のバランスが取れた状態。

動向としては直近で底値を打った2014年10月のプラス0.5%から大きく上昇を見せた2014年の年末までの上昇から反転し、その後数か月は小幅なもみあいに終始する形となっていた。その後、大きく下落した2015年9月から続き下げを見せ、直近の底値を探る形だった。少なくとも過度の不足感からの脱却、状況の鎮静化は継続中、さらにプラスマイナスゼロのライン付近でのもみあい、その後やや上昇するも勢いは弱い流れ。

そしてその後の動きも合わせ、この数年来の動向を見るに、昨今ではプラス1%内外を天井とするボックス圏の動きに移行したものと考えられる(特に2015年初頭以降)。

業種別過不足率動向


続いて示すのは、震災直前の2010年12月以降における、8職種それぞれの過不足率動向。



↑ 建設労働需給過不足率推移(季節調整済み、職種別、2010年12月-)
↑ 建設労働需給過不足率推移(季節調整済み、職種別、2010年12月-)

↑ 建設労働需給過不足率(季節調整済み、職種別、2016年10月)
↑ 建設労働需給過不足率(季節調整済み、職種別、2016年10月)

建設業界全体での動向とはまた別に、業種別でもそれぞれ異なる動きを示していることが分かる。例えば電工は2014年初頭度に突然大きな不足感に見舞われたが、それも鎮静化したこと、型わく工やとび工は2013年の春先から不足感が強まり(消費税率改定に伴う住宅需要の急増に伴うものだろう)、高止まりのまま推移していること、鉄筋工(建設)は震災を機に不足感が強まり大きな不足感が生じていたが、昨今では2014年後半同様に過剰感が生じていることなどなど。

一方で、全体値の推移からも分かる通り、どの職種でも不足感が蔓延していることに違いはない。最新分となる2016年10月では鉄筋工(建設)以外で不足感があり、鉄筋工(建設)と電工以外で前月からの不足感の増加が確認できる。また折れ線グラフの形状からも分かる通り、この数か月に限れば型枠工(土木)と鉄筋工(土木)の不足感が妻寄っているのが気になるところ。逆に鉄筋工(建設)の過剰感も大きなものとなっており、こちらにも留意をしておきたい。

「建設労働需給調査」の今後の予想項目を見る限り、2015年の春先がピークで、現在は不足感の点では沈静化に向かいつつあるようだが、今回月では2016年12月の見通しで前年同月と比べると「困難」「やや困難」が増加し、2017年1月の見通しでも「困難」が増加している。地域別を見るに、北海道における8職種合計の過不足率がプラス7.3%(季節調整値)と最大を示しており、先の自然災害に伴う復旧活動で、建設関連全般の人材不足が生じ、それが全体値にも影響を及ぼしているようだ。

また残業・休日作業を実施している現場数、いわゆる強化現場数の動向を確認すると、「前工程の工事遅延」の率が32.8%と高い値を示しており、工程そのものが押している感は強い。

数字には表れていないものの、ちまたでは質的な問題、そして外装などにリソースの重点配備がされたことで、相対的に内装業者の手薄感が強まり、リフォーム市場などにおいて人手不足感が強まる様相が確認されている(国民生活センターでも2014年10月末付で、関連事案を報告している。【住宅の新築工事・リフォーム工事等での遅延トラブルが増加−人手不足による放置や、倒産による放棄の事例も−】)。

今件は景気ウォッチャーにおける雇用関連のDI値動向と共に、今後も逐次動きを確認していくことにしよう。


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