ラジオと雑誌以外は大きく伸び、ネットは再び新聞を抜く(経産省広告売上推移:2014年4月発表分)

2014/04/14 11:30

経済産業省は2014年4月11日に「特定サービス産業動態統計調査」に関する2014年2月分の速報データ(確定値に先立ち公開される値)を、同省公式サイト内で発表した。その内容によれば2014年2月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス7.4%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事において精査対象となる業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「雑誌」がマイナス0.3%、「ラジオ」がマイナス2.5%と、2項目がマイナス値を記録している。また前回1月分で久々に新聞の額面がインターネットを抜いたが、今回の2月分では再びインターネット広告が新聞の額を超えることとなった(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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主要項目は雑誌とラジオがマイナスで他はプラス


「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、それらの記事を束ねたまとめページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。

まずは主要5項目の動向について。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年1月-2014年2月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2014年1月-2014年2月)

前月分からの動きが確認しやすいように、前回記事分となる2014年1月分のデータ(速報値の後に発表される確定値に修正済み。今回の掲載にあたっては大規模な修正が確認されている)と並列してグラフ化している。今回月では明暗分かれる動きが特徴的。雑誌とラジオは前月から値を落とし、雑誌はマイナスに転じてしまっている。一方で新聞・テレビ・インターネット広告はいずれもプラス幅を拡大し、特にテレビは倍近い上げ幅を見せている。テレビは元々額面そのものが大きいため、その上げ率が売上高全体にも大きく貢献することとなった。

該当月、つまり2014年2月における大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【ラジオ以外は概して好調、新聞が健闘(電通・博報堂売上:2014年2月分)】で個々の相当する項目の動きを確認すると、雑誌とラジオが軟調、新聞が大きく伸び、テレビも順調、インターネットは好調といった動きを示しており、動きの幅はともあれ、良い動きか否かの点では今回の経産省・特定サービス産業動態統計調査の動きと一致している。業界全体としてこのような景況感だったことが分かる。

ちなみに4マス+ネット以外の一般広告の動向は次の通り。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年2月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年2月)

震災以降、4マスとネット以外は概して好調な動きを示している。今回月では屋外広告は大きく落ちたものの、海外広告のずば抜けた動きをはじめ、各項目とも順調な動きを示している。もっとも海外広告は当たり外れ…というよりは浮き沈みが非常に大きく、指針としてはあまり適していない

ネットが再び新聞を追い超す


今回も該当月(2014年2月分)における、各区分の具体的売上高のグラフ化を生成する。広告代理店業務を営む日本の企業は、電通と博報堂が最大手だが、その2社のみだけしか無いわけでは無い。また各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で規格統一はされていない。今件記事と似たようなジャンルで同じく月次更新している【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。同じような項目名が複数あるが、額面が一致しないのは当然の話。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年2月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年2月、億円)

金額面では「インターネット広告」が「新聞」を超える月がここしばらく継続中だったことは【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる】で解説した通り。ところが先月、つまり2014年1月分で、22か月ぶりに新聞の額がインターネット広告を抜く状態が生じてしまった。都知事選などの影響の可能性もあわせ、イレギュラーな可能性が高いものの、新聞がこの数か月堅調な動きを示していたことにも違いない。今回月も新聞は前年同月比でプラス10.3%と好調な値を出したものの、インターネット広告も順調に推移し、再びその立場は逆転し、インターネット広告が額面上では上につくこととなった。

「インターネット広告」は他メディアと比べると起伏が大きく、タイミングによっては先月のように新聞との立ち位置が入れ替わる可能性はある。中期的には上昇基調のさなかにあるため、このような突発的な事態も今後はさらに起きる可能性は減るはずだが……。新聞の直近における良い動きを見るに、再び新聞がインターネット広告を抜く可能性はゼロとはいえない。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年2月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年2月)

グラフを見れば分かるように、年に1度か2度、大きく額面を上乗せする傾向がインターネット広告にはある。前回月の新聞との順位入れ替えは偶然に偶然が重なった結果生じた可能性が高い。見方を変えれば、まだ両者の順位は決定的なものでは無い。

次のグラフは今件記事で対象としている5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年2月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年2月分まで)

雑誌(黄色)と新聞(ピンク)の折れ線がグラフ中では下側に位置する場合が多く、両メディアの低迷が長期的に渡るものであることが確認できる。双方とも紙メディアという共通点を有し、デジタル化が進む昨今において相対的にメディア力が減退しているようすがうかがえる。もっとも新聞はこの数か月に限れば順調な動きの中にあり、その定説を覆す可能性が出てきたが。

また、濃い藍色で記されたラジオは、ある意味新聞や雑誌よりも状況は芳しくない。イレギュラー的なプラスへの移行もほとんどなく、ほぼマイナス圏を低迷したままの状態が続いている。これはつまり長年、継続的に売り上げが落ちていることを意味する。

それら個々のメディアの特性とは別に、金融危機やリーマンショック、東日本大地震・震災において広告業界全体が受けた影響によりマイナス方向への圧力も、多分に確認できる。これで該当期間中に好景気も生じていれば、プラス・マイナス双方における景気が広告業界へ与える影響を精査できたのだが、金融危機などの3事象に匹敵するようなポジティブな話はこの期間中には起きておらず、比較が出来ないのが残念なところ。

もっともグラフをよく見ると分かるのだが、2012年後半以降はインターネット広告を中心に大きな動きが無くなり、少しずつ平穏な状態からやや上向きの動きの気配を覚えることができる。特にネット以外ではテレビの動きが顕著である。また売上高合計がプラスを維持していることから、4マスとネット以外の屋外広告なども好調に推移していることが間接的に読み取れる。二極化した上ではあるが、回復基調にあることは間違いなさそうだ。



今回月(2014年2月分)は特に大きな影響を与えるイベントなどは無かったが、広告費動向の二極化やインターネット広告・新聞間の順位再入れ換えという、複数の興味深い動きが確認できた。雑誌とラジオの軟調さは中期的な問題ではあるが、今回インターネット広告に再び順位を先行されたものの、新聞の昨今における復調さは注目に値する。新聞そのものの発行部数は漸減を続けており、メディア力の回復のきっかけは見当たらないのだが、広告費が増えていることは疑うべくもない。考えられるとすれば、消費税率改定直前の駆け込み需要を狙った広告出稿の増加がありうる。実際、テレビなどのCMにおいても、それをうかがえる動きが確認されていたからだ。

消費税率改定後は「クライアント側も出稿を抑える」「消費者の消費性向減退による売り上げ減を少しでもカバーするため、逆に広告は増やして消費喚起をする」の2パターンが想定される。先行する形では電通・博報堂の月次売上でその挙動を知ることが出来るが、消費税率改定前後の動向を精査できる機会など滅多にないこともあり、3月以降の広告費動向には特に注目したいところだ。


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