ラジオ以外の全般的な堅調さ続く(電通・博報堂売上:2014年3月分)

2014/04/10 14:30

博報堂DYホールディングスは2014年4月9日付で同社グループ主要3社の博報堂、大広、読売広告社それぞれの2014年3月分となる売上高速報を公開した。また電通ではそれに先行する同年4月7日付で、単体売上高を発表している。これにより日本国内の二大広告代理店における2014年3月次の売上データが出揃う形となった。今回はその両社の主要種目別売上高の前年同月比を当サイトで独自に算出し、さらに指標を導き出すと共にその値を基に各種グラフを生成し、それぞれの広告売上動向や広告業界全体の動きの精査を行うことにする。

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ラジオのみの不調続く。4マスでは意外にも新聞の好調さが目立つ


データ取得元の詳細情報、各項目に関する算出上の留意事項は、過去の記事をまとめたページ【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で解説済み。必要な場合はそちらにて確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年3月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2014年3月分種目別売上高前年同月比

発生から3年が経過した東日本大地震・震災は、直接・間接双方の面で広告市場にも大きな影響を与えることとなった。直接的な影響こそもうほとんど無くなったものの、市場そのものや消費者に生じた変化は今もなお各方面に小さからぬ変容をもたらしている。それらの変化による動きも含みつつ、広告市場そのものは震災前から生じていた流れを踏襲しつつあるのが昨今の動向。インターネットの市場は広がりつづけ、従来型4マスではテレビが復調を見せるもののその他は縮退方向に舵をとりつつある。また、4マスでもなければインターネットでもない、従来型広告が一部を除き全般的に堅調なのも特徴として挙げられる。

今回の3月分の動向を確認すると、従来型4マスではラジオの軟調が続いている。前年同月では4マスはすべてマイナス値を示しており、今回月では他の3マスはプラスにあることから、「前年が堅調だったのでその反動を受けて仕方なくマイナス」という説明は筋が通らない。ラジオの軟調さは危機的な状況にあることが認識できる。他方新聞はやや大きくプラスの値が出ているが、この一部は前年同月の下げ幅が大きかったのが一部要因ではある(博報堂の2013年3月次における新聞の前年同月比はマイナス13.2%だった)。ただし2年前同月比を試算するとプラス7.0%との結果が出るため、新聞の復調は確かなものであるとの確認もできる。

3月のメディア周りに関係があるイベントを思い返すと、消費税率改定前の駆け込み需要による喧伝、先日サポートサービスを終了したWindows XP関連でパソコンの新規購入の促進などが挙げられる。広告費増大の要素としては十分な素材で、各項目が大きくプラスを示すのも納得がいく。

インターネット広告は特に電通の大きさが目立つ。前々年、つまり2年前の同月比を試算すると、実に46.4%ものプラスを示している。絶対額はともかく、伸び率としては他の広告項目をはるかに凌駕しており、注目に値する。

↑ 参考:電通2014年3月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2014年3月度単体売上(前々年同月比)

従来型広告もまた両社共に堅調。電通でその他広告がやや強いマイナス幅を示しているが、これは前年同月がプラス33.2%と大幅なプラスだったことへの反動。2年前同月比のグラフを見れば分かる通り、全般的にはプラスの方向を示している。

取りまとめると「ラジオ以外は押し並べて堅調」という形で表現できよう。

電通の総額推移によれば金融不況前水準に復活


次のグラフは電通の今世紀における各年3月の広告売上総額推移を抽出し、その動向を折れ線グラフにしたもの。同じ月の経年売り上げを追いかければ、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じること)を気にせずに、年単位での売り上げ推移、さらには広告市場の情勢を推し量る材料を構築できる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年3月、億円)(-2014年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年3月、億円)(-2014年)

電通の各年3月における総額動向を確認すると、2007年夏の金融不況の開始を受けて2008年以降は下落傾向に移行、リーマンショックで一段安的な動きを示し、震災の影響で2011年3月にはさらに大きく下落。その後は持ち直しを示し、2014年3月には消費税とXPの特需的な需要も合わせて底上げされ、数字の上では金融不況前の水準にまで回復することとなった。

特に消費税周りだが、元々耐久消費財を中心に需要が増える年度末に、税率改定前に買い込んでおこうとの消費者側の意欲の高まりを出来るだけ多くつかみ取るための施策が、広告面でも多分に展開されることとなった。今はもうその影もないが、チラシやネット上の広告、道行く先で見かける看板などでも、3月中に購入しておこう、買替しようといった形で、需要をうながす広告を多分に見かけることができた。単価の高い商品関連、あるいは携帯電話のように長期にわたって売り上げが期待できる商品の広告は、特に力が入っており、きらびやかさを覚えた人も少なくあるまい。

なお冒頭で呈した大きなグラフだが、各項目は類似・同一であるものの、電通と博報堂の間、さらには同一社内でも項目間で具体的な金額面に関して、同じ意味を示しているわけでは無い。例えば今回月ならOOHメディアの伸び率が電通と博報堂でほぼ同じだが、額面(の伸びた額)がほぼ同じということを意味しない。

下記に金額面から見た具体例をまとめてグラフ化しておく。項目別ではインターネット分野の市場規模は、従来4マスの最大勢力であるテレビと比べると数分の一に留まっている。インターネット広告は成長過程にあるが、それでもテレビとは言葉通りケタ違いの市場規模で(今回電通では同じ桁数となったが)、現状では追いつくのは極めて困難に見える。

↑ 電通・博報堂DYHDの2014年3月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2014年3月における部門別売上高(億円、一部部門)


また、電通と博報堂間では売上総額で約2倍、「その他」部門でも数倍以上もの差がある。得手不得手も一因だが、両社の許容範囲、規模の違いは認識しておくべきだろう。



震災以降の失策による電力需給におけるカントリーリスクの高まり、それと連動する形で民間・事業者向けの電気価格の高騰、それを起因とする企業の経営面でのリスクは高止まりどころか、さらに上昇する気配すら覚える。また消費者の家計の圧迫も続いており、これが消費を抑える一因となれば、それもまた広告業界にはマイナスの要因となる(【電気代・ガス代の出費動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2014年)(最新)】)。

電力関連の問題は消費減退だけでなく、広告の種類にも波紋を投げかけている。「電気を派手に使う」系統の広告、特にデジタルサイネージは、要らぬ非難を受けるリスクを勘案され、クライアントから遠慮される可能性が生じている。震災直後と比べれば随分と穏やかになってはいるが、状況としては完全にクリアされたわけでは無い。その分、従来型広告が伸びているのは、棚から牡丹餅というところか。

他方、今回堅調さを見せた主要因と考えられる消費税率改定だが、次回月以降は税率改定後の広告動向推移を見ていくことになる。改定後における消費減退を受けて広告出稿も減るのか、逆に減少する消費性向を盛り立てるために広告出稿は増えるのか、現時点では未知数といえる。前回の消費税率改定後のデータを探せば推測も出来るかもしれないが、広告全体の項目別構成比や内容が大きく変わっていることもあり、参考にはならない。

4月以降は電通・博報堂共に、この消費税率改定という情勢変化を受けて、広告の売上も多分に動く可能性がある(厳密にはクライアント側が動き、その結果として両社の売上も変化するのだが)。両社の全体的な売上、さらには個々の項目の動向も合わせ、経産省の「特定サービス産業動態統計調査」と共に、注意深く見守りたいところだ。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(下)…ネット以外動向概況編】

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