若年層失業率も改善化の動きか…EU失業率動向(2014年2月分)

2014/04/02 14:30

それこそ週に一度ならず「欧州を発端とする世界経済の週末」的な雰囲気を多分に含んだニュースが外電として伝えられ、日本の景気後退すらかすんでしまうような状況下にあった欧州経済だが、昨今ではようやく底打ち、回復の兆しを見せ始めるようになった。その経済動向を確認できる指針の一つとして各国の失業率について、欧州委員会の統計担当部局・EU統計局(Eurostat)は2014年4月1日付で、毎月の定例更新分となる諸国の失業率データの2014年2月分を解説レポート込みで公開した。今回はその公開値をもとに、EU諸国を中心とした成人全体の失業率、さらには若年層に限定した失業率を精査し、現状とこれまでの動向を確認していくことにする。

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スペイン改善化継続、直近では25.6%に


データ取得元の説明、グラフ、文中に登場するEA17・EU28の構成国の詳細や動向、各国の参加状況の変化に関しては、過去の記事の一覧ページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上でまとめて解説している。

ILO基準に基づいた2014年2月時点の各国失業率は次の通りとなる。EU28か国では10.6%・EA17か国では11.9%を記録している。先月分(速報値から修正済み)と比較した場合、EA17か国に変化は無くEU28か国は0.1%ポイントのマイナス、つまり改善が見られる。現時点の記録ではEA17か国・EU28か国共に2013年4月に最悪の値を示しており、それと比べるとほんの少しではあるが改善の方向に向かいつつある。少なくとも悪化の兆しはない。

このグラフもあわせ一連のEU失業率の記事では、最新データを掲載している国と合わせるため、直近2か月分のデータがEurostat上で未収録の際には、「掲載時点で公開されている最新月分の」データを代用している(実のところ多くの国で、直近数か月がデータ未着の様相を呈している)。例えばギリシャは今回更新時点では2013年12月分までの値(27.5%)が公開されている(2014年1月分以降はまだデータが未収録)、ここでは2013年12月分を2014年2月分、そして2013年11月分を2014年1月として、収録・掲載・計算に用いている。

↑ 2014年2月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2014年2月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャで変わらず。スペインはそれに1.9%ポイントの差を有しての2位。このポジションはここ数か月続いている。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2013年12月時点の値を適用させているため、仮に公平を期するため同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは25.8%(12月分)となる。やはりギリシャの27.5%の方が上となる。

ギリシャはともかくスペインは、かつてギリシャ同様にヨーロッパの債務危機の最重要注視国、つまりそれだけ財政面で危機的な状態にある国として知られ、冒頭にある「経済破綻を予見させる報道」でも多々伝えられていた。当然失業率も高い。しかしここ数年の動きを見ると、悪化のピークはとうに過ぎ、少しずつだが確実に改善に向かいつつある感を見出せる。

↑ 2012年6月-2014年2月での失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2012年6月-2014年2月での失業率(季節調整済)(スペイン)

ヨーロッパ経済全体としても復調の兆しが見えるとの報もちらほら見聞きするようになり、良い動きではある。


↑ ヨーロッパ経済に復調の兆しがあることを伝える報道(ロイター)

その一端を垣間見れるのが、次に示す該当月の前月(2014年1月)の値との差異を独自に算出した結果のグラフ。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2014年1月→2014年2月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2014年1月→2014年2月)(またはデータ最新一か月前→最新)

国内人口の少ない国では統計値が変化しやすく、統計取得の方法の違いなどもあり、国によっては結果の流れが他国と大きく異なる場合がある。時として1年前後も前の値を修正することもある。そこで「前月比でプラスマイナス0.5%ポイント未満は誤差」という独自の基準を設けてチェックを行う。

すると今回月ではハンガリーが状況の改善を示したこととなる。これは先月から2か月連続の話。内需の拡大見通しや工業(特に自動車産業)の堅調さが経済を好転化させ、それが労働需要の拡大につながっているのだろう。

大きな変動を繰り返すエストニア…若年層失業率動向


続いて若年層(25歳未満)の失業率動向にチェックを入れる。先進国では特に若年層の失業率の高さが深刻で、これは寿命の延びや技術革新、経済構造の変化など、複数同時多発的事象が原因となっている。そして概して先進国におきる症状でもあることから、先進国病の一病症ともいわれている。

今回発表された2014年2月時点の25歳未満の失業率はEA17か国で23.5%・EU28か国でも22.9%。全成人の失業率同様、前回発表時から大きな修正が過去のデータも含めて行われたが、それでも5人に1人以上が失業状態にあるという深刻さには違いない。

全体失業率上位ではお馴染みの国々が、若年層失業率でも上位に名前を連ねている。ギリシャの58.3%(2013年12月)を筆頭に、スペインの53.6%、クロアチアの48.8%、イタリアの42.3%など、経済的に不安定な国の高さが目に留まる。

↑ 2014年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)
↑ 2014年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)

↑ 2014年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)
↑ 2014年2月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(2月データが無い国は直近分)

上記解説の通りこちらでもプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差とする基準を適用すると、今回月ではスウェーデンが悪化、スペイン、ハンガリー、エストニア、チェコ、オーストリア(、日本)が状況改善としてピックアップされる。特にエストニアの2.8%ポイントの改善は大きく目を見張るところがあるが、同国は前回月で2.8%ポイント(前回記事執筆時は4.4%ポイント)の大幅悪化を示しており、ぶれが多い中での動きと見受けられる。一か月単位で急激に労働市場が改善・悪化を繰り返しているのではなさそうだ。

大人全体の失業率が改善の流れにあるスペインでは、若年層限定でも少しずつ、確かに同様の動きを示している。

↑ 2013年1月-2014年2月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2013年1月-2014年2月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)

今なお計算上は2人に1人以上が失業状態にあり、健全な状態とはとても言えるものではない。しかし流れが良い方向にあるのも事実で、先行きのポジティブ感は今後の動きを期待させるのに十分なものとなっている。目安として50%を切るようなことになれば、本格的な状況改善フェイズに移行したと見ても良いだろう。



上記報道映像が記している通り、ヨーロッパではいくつかの国がけん引する形で、経済の復調感が少しずつだが確実に浸透しはじめている。失業率が高止まりにあることには違いないが、少なくとも以前のような、さらに上昇する気配を示す絶望感の雰囲気は無い。

無論経済の回復と労働市場の健全化の過程では、概して弱者ほどその恩恵を受ける順番は後回しになる。失業率の視点で見ても、国によっては全体の値が改善しても若年層だけでチェックするとほとんど高止まりのまま、という事象が生じることもある。雇用の回復分が中堅層以降に優先して充当され、スキルも経験も低い若年層は後回しにされる形である。今後は回復場面における、全体失業率と若年層限定の失業率の改善具合のかい離にも注意を払いたい。

経済情勢といえば3月に入ってからウクライナ情勢がヨーロッパをかきまわし、経済面での不安要素として持ち上がっている。他の状況変化が即時失業率に反映されるわけでは無いが、同情勢の悪化が経済の悪化につながれば、失業率にもマイナスの影響を及ぼすことだろう。特にロシアと深い関係のある旧東側諸国や、エネルギーの多分で関与のあるドイツやイタリアの動きに注目したい。

なお【「CPD(国公債デフォルト確率)動向」の更新は終了しました】でお伝えした通り、失業率とも多分に関連性のあるCPDの定期更新につき、情報配信元が配信を終了したため、記事の更新も不可能となってしまった。今件失業率と互いに連動して状況の把握をより高みに登らせることが出来ただけに、残念な話ではある。


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【日本の順位変わらず・数字はやや改善(国債デフォルト確率動向:2013年Q3)】
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