新聞が再びネットを抜く(経産省広告売上推移:2014年3月発表分)

2014/03/13 11:30

経済産業省は2014年3月11日付で、「特定サービス産業動態統計調査」に関する2014年1月分の速報データ(確定値に先立ち公開される値)を、同省公式サイト内で公表した。その内容によると2014年1月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス6.0%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事で精査対象となる業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「ラジオ」が唯一マイナスのマイナス0.3%を記録している。また久々に新聞の額面がインターネットを抜いたことが確認された(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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主要項目ではラジオのみマイナス


「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、それらの精査記事を集約した【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2013年12月-2014年1月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2013年12月-2014年1月)

前月分からの動きが確認しやすいように、前回記事分となる2013年12月分のデータ(速報値の後に発表される確定値に修正済み)と並列してグラフ化している。今回月では従来型4マスはマイナス値にせよプラス値にせよ、いずれも前回月からは状況が改善した値なのが特徴。さらに「インターネット広告」も前年同月比で上げ幅を拡大している。マイナス値となったのは「ラジオ」のみ。しかもわずかマイナス0.3%に留まっている。該当月は都知事選が展開されており、その影響が多分にあったものと考えられる(特に新聞でその影響が大きい)。

該当月、つまり2014年1月における大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【ラジオ以外は概して好調、特に電通が強い(電通・博報堂売上:2014年1月分)】で個々の相当する項目の動きを確認すると、インターネット広告が大きなプラスを示し、従来型4マスもラジオ以外は好調な動きを示しており、今回の経産省・特定サービス産業動態統計調査の動きと(数字はともかくプラスマイナスやその勢いにおいて)一致している。今件動向の確からしさを裏付けた形となる。

ちなみに4マス+ネット以外の一般広告の動向は次の通り。

↑ 4屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年1月)
↑ 4屋外広告などの広告費・前年同月比(2014年1月)

電通・博報堂の売上動向でも言及しているが、震災以降は特に屋外広告は堅調傾向にある。今回月では屋外広告そのものは落ちたものの、海外広告や交通広告などは堅調な流れ。特に折込・ダイレクトメールが良い動きを示したのは、都知事選の影響が多分にあったものと考えられれる。

新聞が伸びてネットを抜く


今回も該当月(2014年1月分)における、各区分の具体的売上高のグラフ化を行う。広告代理店業務を営む日本の企業は、最大手の電通と博報堂のみだけでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容については統一されていない。そのため当サイトで月次更新している【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上での完全一致性は無い。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年1月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2014年1月、億円)

金額面では「インターネット広告」が「新聞」を超える月が継続中であることは【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる】で解説した通り。今回月では上記で触れている通り、都知事選の影響もあり、新聞が大いにその数字を伸ばした結果、22か月ぶりにインターネット広告を抜く形となった。見方を変えれば、それだけ今回月の新聞の売り上げは、イレギュラー的な伸びだったと言える。

「インターネット広告」は他メディアと比べると起伏が大きい。これは広告出稿・展開上の機動性・柔軟性の高さを示している。今回は下げの機会にあったため、新聞に抜かれる形となったようだ。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年1月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2014年1月)

グラフを見れば分かるように、年に1度か2度、大きく上振れする時期が生じるのがインターネット広告の特徴でもある。昨今では先月の2013年12月に大きな山が出来ており、今回月はその反動も少なからぬあったように見える。

次のグラフは今件記事で対象としている5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含む)に関して、公開されているデータの中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降であることから、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年1月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年1月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の折れ線がグラフ中では下側に位置する場合が多く、低迷ぶりが短期のものではなく、中長期の流れであることが分かる。両メディアは従来型4マスを構成し、紙媒体という共通点がある。この2要素がメディアの変革期であるこの数年において、ウィークポイントとも考えられる。

グラフ描写期間中には金融危機(2007年晩夏)、リーマンショック(2008年秋)、東日本大地震・震災(2011年春)と、経済分野にも大きな影響を与えた3事象が立て続けに発生している。何もこの7年ほどの間にまとめておきなくとも……と思うのは当方だけではあるまい。これらの事象によって個人も企業も余力に乏しくなり、自粛ムードもただよう事例もあったことから、広告費も頭を押さえられてしまう。特にリーマンショック後においては、業種を問わず広告費が削られたことは一目瞭然の状態。

その一方、売り上げが減った後の回復ぶり、回復までの期間など、個々の業種の適応力や柔軟性などの違いも顕著に出ているのがこのグラフの特徴。今回月は多くの業種でプラスを示したが、この勢いがどこまで続くのか。トレンド転換となるのだろうか。



今回月(2014年1月分)は「新聞」「雑誌」では前年同月が軟調だったための反動、そして都知事選の選挙戦が多分に影響したこともあり、大いに堅調な結果を示す形となった。特に「新聞」が「インターネット広告」を再び抜いたことは注目に値する。仮にこれが数か月連続する動きを示すことになれば、新聞業界に何らかの変化が起きたとも考えられる。

来月分以降、つまり2014年2月以降においては、2月では先行する電通・博報堂の記事でも解説した通り、ソチオリンピック周りでの需要拡大が確認できる。また3月は消費税引き上げ直前の駆け込み需要を後押し、4月以降は需要減退を補完するため、広告需要が拡大する可能性はある。

広告構造、パワーバランスが大きく変化しているのであまり参考にはならないが、前回の引き上げ時、つまり1997年4月前後の動向を確認すると、1997年3月は前年同月比プラス13.3%、消費税率改定後の4月はプラス1.9%という値が出ている。この流れを踏襲するのなら、2014年3月は大きなプラス、消費税率改定後の4月は小幅なプラスかマイナスに転じる可能性がある。

各広告出稿元がどのような広報戦略を打ち出していくのか。今後数か月はこれまで以上に、広告関連の動向に注目したいところだ。


■関連記事:
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【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(下)…ネット以外動向概況編】
【5年ぶりに前年比プラスの3.2%・総額5兆8913億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2013年発表)】

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