吉野家の鍋膳攻勢続き、すき家もついに…牛丼御三家売上:2014年02月分

2014/03/06 11:30

吉野家ホールディングスは2014年3月5日、同社子会社の牛丼チェーン店吉野家における2014年2月の売上高、客単価などの営業成績を公開した。その発表内容によれば既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス11.9%となった。牛丼御三家と呼ばれる主力牛丼企業のうち松屋フーズが運営する牛飯・カレー・定食店「松屋」の同年2月における売上前年同月比はマイナス5.7%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス3.9%との値が発表されている(いずれも前年同月比・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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吉野家に続きすき家も鍋で快走


↑ 牛丼御三家2014年2月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年2月営業成績(既存店)(前年同月比)

牛丼御三家の前年同月比における、客数・客単価・売上高の動向は上記のグラフの通りとなる。まずは吉野家に注目し、状況の確認をしていく。昨年同月の記事を基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はプラス2.3%。今月はそこから転じて2.8%のマイナスを示している。これは前年同月の反動と、主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたのが原因。しかし昨今ではこの反動の幅も小さなものとなりつつある。単純試算なら来月3月分で、この変動による影響は無くなる。

他方、この値下げで基本メニューの牛丼価格が3社横並びとなり、他2社の「牛丼価格のプレミアム効果」も消失、牛丼市場はさらにカオス化の様相を呈することになる。

同社では【これはオドロキ、目の前のコンロで熱して食べる吉野家「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」発売へ】にある通り、鍋をお客の目の前で加熱し続けながら料理を提供する「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の2品目の展開を2013年12月5日から始めている。単価は高めだが寒い時期にアツアツの料理を(実温だけでなく雰囲気的にも)楽しめることから、好評を博することになった。今商品群のセールスが堅調となった結果、客単価の下落は最小限に留まり、さらに客足そのものも順調に推移している。

前々年比を算出すると客数はプラス、客単価はマイナスだがほぼ誤差の範囲に留まっており、今回の客数の上昇が「前年同月の低い値によって生じた反動」ではないこと、主力商品の牛丼値下げによる客単価の下落に関する影響は、鍋膳で十分補完出来ていることが分かる。

↑ 牛丼御三家2014年2月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2014年2月営業成績(既存店)(前々年同月比)

キムカル丼(松屋)続いて松屋。同社は2月に次々と新商品の展開を行っている。前月末の「デミきのこハンバーグ定食」を皮切りに、「ごぼう味噌牛めし」「鶏の甘辛味噌炒め定食」、そして人気の過去メニューである「キムカル丼」の限定復活発売まで実施した(【松屋の定番&絶妙メニュー「キムカル丼」一週間限定で復活発売】)。これだけ新商品が続々投入されたのだから、状況の改善が見られても良いはずなのだが、現実は厳しく、客数・客単価共にマイナス。しかも前々年同月比のグラフを見れば察せられるが、前年同月では客単価がプラスだったために今回のマイナスは反動との受け止めもできるものの(実際その通り)、客数は反動どころか下落度合いを増している次第。2月は2度に渡り大雪が降ったため、その影響とも考えられるが、それならば他の2社も同様の動きを示していなければならない。やはりこの客数減少は、松屋独自の動きと見るべきだろう。

最後にすき家。すき家では先月紹介した「まぜのっけごはん朝食」の本格的展開だけでなく、詳しくは後述するが「牛すき鍋定食」などの火がけコンロ提供による鍋メニューの展開を開始した。賛否両論があったものの、結果としては大よそ順調で、客数・客単価共にプラスを見せ、売上高も2011年8月以来30か月ぶりにプラスに転じることとなった。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年2月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2014年2月)

松屋・すき家での客数減少、そして売上減退は、震災後に生じた中期的な症状。すき家は2013年11月の期間限定牛丼値下げで客足が戻り、そして今回見事に「鍋定食」でプラスへの復調を果たすこととなった。一方松屋はこの数か月間少しずつだが回復基調にあり、2013年12月にはプラスマイナスゼロを示したものの、今回再び減速に転じてしまっている。

吉野家に続きすき家も鍋で回復、と見るべきか


牛丼チェーン店だけでなくハンバーガー系も含めた廉価系ファストフード店全般において、客足の低迷が深刻な問題となっている。そのような市場環境の中、吉野家は11か月連続して来店者数が前年同月比プラスで推移している。これは2013年4月に行った主力商品の牛丼値下げ、そして2013年12月に導入した「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」によるものと見て間違いない。戦力の小出し・逐次投入では無く、相当のリソースを一気に投入し、自社のトレンドそのものを大きく変化させる集中投下の戦略が功を奏した形である。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年2月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2014年2月)

この吉野家の動きに機敏に対応した(と判断できる)のがすき家。一応「過去のメニューのリバイバル」と自称しているが、【「うちも鍋だ」…すき家が「牛すき鍋定食」など火がけコンロ提供で期間限定発売へ】での紹介・解説にもある通り、すき家でも2月14日から期間限定ながらも鍋メニュー「牛すき鍋定食」「とろーりチーズカレー鍋定食」「野菜たっぷり牛ちり鍋定食」の展開を開始した。吉野家同様、お客の目の前でコンロを使って温め続けるタイプの、あつあつメニューである。


↑ すき家の「牛すき鍋定食」などの宣伝CM(公式)。【直接リンクはこちら:すき家「牛すき鍋定食」編 15秒CM】

多種多様な反応はあったものの、2度の積雪による気温の低下という好運(気温が低い方があったかメニューは歓迎されやすい)にも恵まれ、大いに売り上げに貢献。吉野家に続きすき家もまた、いわゆる「鍋特需」の恩恵を受けた形となった。あるいは松屋が今回唯一不調を示したのは、この「鍋特需」の波に乗れなかった……と見るのはやや短絡的に過ぎるだろうか。

牛すき鍋定食(すき家)そろそろ季節の変わり目を迎えることになるが、3月分位まではこの「鍋特需」の効用は発揮されることだろう。それ以降は鍋メニューそのものが休止となる可能性もあり(すき家では3月末までと伝えられている)、鍋に関する影響は未知数となる。鍋で得た需要、客足をそのまま活かせる戦略を展開できれば、吉野家・松屋共に堅調さは維持されるはずだ。



先の震災を受け、人々の食生活、さらには日常生活における考え方、志向も大きく変化を見せている。その中の一つに「食事を楽しみたい」とする動きがある。これが外食から中食へのシフトを加速させており、昨今の廉価系外食産業チェーンの不調の主要因であるとの説がある。

そして4月からは消費税率が改定されることで、消費者の節約志向、外食離れの動きはますます加速していく。すき家ではこれに合わせ、【実質10円値下げ・すき家の牛丼並盛が4月から税込270円、御三家最安値に】で伝えたように、主力商品の値下げで対応することを発表している。これで他社の動きが無ければ、再び「牛丼価格のプレミアム効果」がすき家にのみ生じることになる。とはいえ、直上のように食生活のトレンドが変わりつつある今において、どこまでこの効果が発揮されるかは未知数。

消費者の需要は昔も今も変わらず「新しくうまいものを食したい」。震災はその想いを加速化させ、明確化したに過ぎない。「鍋特需」もまた消費者の願いにマッチしたからこそ、特需足り得た。各社はこの需要に対し何をすべきか。消費性向が変化を見せるであろう4月以降の動きに、その答えが見えてくるに違いない。


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