スペインは最悪期を脱したか、改善の動きあり…EU失業率動向(2014年1月分)

2014/03/02 18:00

EU(欧州連合)内外の経済・雇用など各種統計情報を集約した上で統計値を算出、さらに公開して各国の正しい分析と政策を支援する、欧州委員会の統計担当部局・EU統計局(Eurostat)は2014年2月28日付で、EU加盟国を中心とした諸国の失業率データに関する2014年1月分となる最新の値を公開し、分析レポートと合わせて発表した。今回はその値を基に、過去のデータの修正分も反映させながら、EU諸国を中心とした成人全体の失業率、そして若年層の失業率を確認し、EU地域における各種状況の精査を行うことにする。

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スペイン漸次改善へ、直近では25.8%に


データ取得元の詳細、グラフや文中に登場するEA17・EU28の構成国詳細、各国の参加状況の変化については、過去の記事の一覧を集約したページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上に解説済み。必要な場合はそちらを参照のこと。

「ILO基準における」2014年1月時点の失業率は次の通り。EU28か国では10.8%・EA17か国では12.0%を記録している。先月分(速報値から修正済み)と比較した場合、EA17か国・EU28か国共に変化は見られない。EA17か国は2013年4月から9月までの間、最悪の12.1%を記録しているが、その値をピークとして現在に至るまで高止まり状態にある。本格的な下げ=労働市場の改善と判断できる動きはまだ見られない。

このグラフもあわせ一連のEU失業率の記事では、最新データを掲載している国と合わせるため、直近2か月分のデータがEurostat上で未収録の際には、「掲載時点で公開されている最新月分の」データを代用している。例えばギリシャは今回更新時点では2013年11月分までの値(28.0%)が公開されている(12月・2014年1月分はまだデータが収録されていない)、ここでは10月分を12月分、そして11月分を2014年1月として、収録・掲載・計算に用いている。

↑ 2014年1月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2014年1月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャ。スペインはそれに2.2%ポイントの差を有しての2位。このポジションは先月から変わらない。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2013年11月時点の値を適用させているので、公平を期するために同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは26.2%(11月分)。やはりギリシャの28.0%の方が上となる。

そのスペインだが、1、2年前はヨーロッパの債務危機の代表格、象徴的存在としてギリシャと共に何度となく報道に名前を連ね、失業率の高さも報じられていた。今回もギリシャと並びツートップ状態には違いない。一方でここしばらくの動向を確認しなすと、わずかではあるが失業率悪化のピークを脱し、状況改善の方向に進みつつあるように見える。

↑ 2012年6月-2014年1月での失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2012年6月-2014年1月での失業率(季節調整済)(スペイン)

データを参照する限り、昨年秋口がピークとなり、それ以降は少しずつ値を落としつつある。失業率の状況改善は労働市場そのものの改善はもちろんのことだが、その前提として経済の改善が必要不可欠となる。スペインもまた、ヨーロッパ全体の流れに乗る形で、経済も復調過程にあるようだ。


↑ スペインの失業率は今なお高い水準にあるが、先行きに明るさが見えるとの話も持ち上がっている(ロイター)

さて今回も前回同様に、該当月の前月(2013年12月)の値との差異を独自に算出し、その結果をグラフ化、状況変化の把握を行う。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年12月→2014年1月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年12月→2014年1月)(またはデータ最新一か月前→最新)

経験則の限り、国内人口の少ない国では統計値が変化しやすい。さらに元々国の特性(統計の仕方、取り扱い方)から誤差が生じやすい、頻繁に修正を、数か月分もさかのぼって行う国も複数国確認されている。そこで一連の記事では独自基準を設け、前月比でプラスマイナス0.5%ポイント以内は「誤差」と見なし、留意対象からは除外している。

その観点で精査すると、今回月ではハンガリーにおいて状況の改善が見られることになる。同国では自動車産業が牽引力となり、輸出が改善されていることで、経済の成長が期待できるとの話が伝えられている。また内需も拡大の見通しがなされている。失業率の改善は経済状況の改善をも間接的に表していることを考えれば、この状況が継続すれば、経済状態の改善が具体的数字として表れる可能性も多分にある。

エストニアが大幅に悪化…若年層失業率


失業問題では先進諸国特有の動きとして特に懸念視されているのが、雇用上では弱い立場にある、若年層の失業率問題。高齢化が進み新規の雇用枠が空きにくくなる一方、機械化や海外への外注化、産業自体の国外進出など多種多様な要因から、国内労働需要が減ることで、最初にしわ寄せを受けるのは、新規雇用の対象となる若年層。若年層人口も少しずつ減少しているが、その減少率以上に労働需要の減少が進むため、必然的に若年層の雇用はさらに厳しいものとなる。

今回発表された2014年1月時点における25歳未満の失業率はEA17か国で24.0%・EU28か国でも23.4%を記録しており、4人に1人近くが失業状態という結果が出ている。単純計算だが、25歳未満の就労可能な若年層をランダムに4人抽出すると、そのうち1人が失業している状態と例えられる。

全体の失業率上位ではお馴染みの国々が、若年層失業率でも上位に名前を連ねている。ギリシャの59.0%(2013年11月)、スペインの54.6%を筆頭に、クロアチア、イタリア、キプロス(ここまでが4割超え、先月から順位も変わらず)など、経済的に不安定な国の高さが目に留まる。

↑ 2014年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)
↑ 2014年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)

↑ 2014年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)
↑ 2014年1月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(1月データが無い国は直近分)

上記にある通りプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差基準とすると、今回月ではクロアチア、エストニア、リトアニア、アメリカの悪化、スロバキア、ハンガリー、日本の改善が見受けられる。特にエストニアの4.4%ポイントの大幅悪化はグラフの体裁そのものまで悪化させるような変動で、注目に値する。しかし同国で失業率の大きな変動が生じ得るような事態は確認できず、イレギュラーの可能性もある。同国はIT技術が大いに進んでいる国で(IT立国を国策としており、国レベルでの電子政策が盛ん)、堅実な財政状況にもあることから、ユーロ圏内では優等生扱いされているだけに、やや違和感を覚えるところもある。

また大人全体の失業率が改善の流れにあるスペインだが、若年層限定で確認しても同様の動きを示している。

↑ 2013年1月-2014年1月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)
↑ 2013年1月-2014年1月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スペイン)

今なお計算上は2人に1人以上が失業状態という異様な状況に違いはなく、改善と表現してもピーク時からわずか2%ポイント程度の変化でしかないものの、良い方向への展開は評価されるべきものといえる。


上記報道映像にある通り、欧州では全体的に経済の回復基調が見え、それと共に労働市場も少しずつ改善の兆しが見え始めている。もちろん先進国病と呼ばれる労働市場そのものの構造に伴う失業、特に若年層の雇用の困難さという根本的な部分にまでメスが入っているわけでは無く、経済の回復と失業率の改善は必ずしも同じようなペースで動くとは限らない(というより期待はあまり出来ない)。中には全体の失業率が良い方向に進んでも、若年層にまでその恩恵が降りてこないという事態も見受けられる。その点、今回取り上げたスペインは幸運な方である。

昨今ではEU加盟国ではないため今回のデータには反映されず、特段言及はしていないが(毎月15日に掲載しているCPD関連の記事ではここ数か月注目の的となっている)、ウクライナの情勢悪化がEUにも経済面での影を落とし、それが労働市場にもマイナスの影響を与える可能性は多分にある。このウクライナの動向も、その遠因には経済上の問題が存在していることは言うまでもない。

折角光明が見えてきたヨーロッパ経済、労働市場に冷や水を浴びせることのないよう、来月のEuro Statによる失業率発表時までには、事態が沈静化していることを望みたいものだ。


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