非正規社員の人達はなぜ非正規として働いているのだろうか(最新)

2023/03/09 02:51

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2023-0222労働市場、雇用形態の構造上の問題として昨今特に注目されているのが、非正規社員(職員・従業員)問題。主婦のパートやアルバイトをはじめ、雇用される側にとっても必要不可欠なワークスタイルではあるのだが、その一方で雇用する側が正規雇用枠を減らし非正規雇用枠を拡大することにより「正規社員の席」が減り、雇用される側の生活の安定性が欠ける事態に陥るとの指摘もある。そこで今回は、非正規社員として職についている人における、その職についた理由、さらには転職などを希望しているか否か関して、総務省統計局が2023年2月14日に発表した、2022年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、その実情を確認していくことにする(【労働力調査(詳細集計)年平均(速報)結果発表ページ】)。

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「正規に就けずに仕方なく非正規」男性16.1%・女性7.7%


労働力調査によると2022年における非正規社員は2101万人。これは前年比で26万人の増加となる。雇用者全体(5689万人、役員除く)に占める比率は36.9%。

↑ 職員・従業員全体に占める割合(雇用形態別)(再録)
↑ 職員・従業員全体に占める割合(雇用形態別)(再録)

これら非正規社員の人達に、なぜ現職についているのか、その主な理由を聞いた結果が次の図。男女それぞれの回答者に占める比率と、回答実数をそれぞれグラフ化する。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、理由明確者限定、男女別、比率)(2022年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、理由明確者限定、男女別、比率)(2022年)

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、男女別、万人)(2022年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、男女別、万人)(2022年)

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、積み上げ式グラフ、男女別、万人)(2022年)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員、積み上げ式グラフ、男女別、万人)(2022年)

男女別の全体比率で見ると男性では「正規の職員・従業員の仕事が無い」よりも「自分の都合のよい時間に働きたい」の方が値は大きく、差異は15.1%ポイント。前者は非正規雇用問題でよく問題視される「正規雇用の椅子が減らされ、その分非正規雇用の椅子が増やされるので、そちらの椅子に座らざるを得なくなる」との指摘に該当する事例だが、男性においては16.1%が同意を示すことになる。他方後者の「自分の都合のよい時間に働きたい」をはじめ、「専門的な技術などを活かせる」「家計の補助・学費などを得たい」とするポジティブ、自発的な意見が続く。

女性は男性同様に「自分の都合のよい時間に働きたい」がもっとも多く、「家計の補助・学費などを得たい」が続く。いずれも兼業主婦のパート・アルバイトでよくありがちな理由。男性では(その他を除き)第2位となった、ネガティブな理由「正規社員としての仕事が無い」は1割足らず。

これを人数別に見ると合計では、男性と女性を比較すると女性の方が非正規社員は多いこともあり、「自分の都合のよい時間に働きたい」が群を抜いて最上位に、次いで「家計の補助・学費などを得たい」が続き、「正規の職員・従業員の仕事が無い」は第4位の理由に落ち着く。ちなみに「正規の職員・従業員の仕事が無い」は男女合計で210万人となるが、これは非正規社員全体(2101万人)の10.0%にとどまることになる。

転職などをしたいか否か? 非正規社員の心境


どのような職についている人でも、その職を離れたい、転職したいと考える人は存在する。ましてやネガティブな理由で現職にいる人は、できることなら転職し、他の環境で働きたいと願う気持ちが多分にあると考えられる。そこで非正規社員の立場の人に、現職についた主な理由別に「転職などをしてみたい?」と聞いた結果が次のグラフ。「など」とあるのは現職を辞して他の職につく他に、再就職はしたくない人も含まれているため。要は今の職を辞めたい人。

なお非正規社員全体では2101万人のうち転職などの希望者は393万人(18.8%)、2割近くとの結果となっている。

↑ 転職などの希望者率(非正規職員・従業員、現職の雇用形態についた主な理由別)(2022年)
↑ 転職などの希望者率(非正規職員・従業員、現職の雇用形態についた主な理由別)(2022年)

主に自分の都合で非正規社員になった人でも「転職したい」と考えている人は1割から2割ほどいる。しかしながらネガティブな、正規社員を望んだものの願わずしての結果として非正規社員の座についている人は、約4割が転職なり退職を望んでいる。他の理由で現職についている人よりも、転職への思いも強いに違いない。



今件は非正規社員問題に世間の注目が集まる状況を受け、2013年分から新設された調査項目。少なくとも現状においては、「非正規社員の男性1割台後半、女性1割足らずは『正規社員になりたかったがなれず、仕方なく』非正規社員として働いている」「正規社員として働きたかったけどかなわず、非正規社員の立場にある人の約4割は転職、少なくとも離職を望んでいる」との現状は、認識しておくべきだろう。

一方で「正規社員の仕事が無い」とする理由については、単に「正規社員としての受け皿が少ない」のみと判断するのは早計。完全失業者などの失業理由でも、多分に雇用する側とのミスマッチが指摘されている以上、非正規社員の「正規社員の仕事が無い」とする意見においても、類似の傾向があるものと考えた方が道理は通る。

また昨今では中高齢層が退職後に非正規社員として再雇用される事例が増えており、これが正規雇用の場が増えない一因としても挙げられる(駐車場に長時間止まっていた車両が一度出たかと思いきや再びその場に戻り、スペースが空かないようなもの)。

本当に「正規社員としての受け皿縮小が、正規社員を望んでいた非正規社員の増加につながっている」のか否か、そして事実ならばどれ程までに影響を及ぼしているのか、今後複数の視点から検証する必要があろう。

なお「他の理由で現職についている人よりも、転職への思いも強いに違いない」だが、実際に公開値から試算すると、その通りの結果が出る。次に示すのは非正規社員における現職の雇用形態についた主な理由に区分した上での、現職を離職をしたいか否かに関して、離職した後に他の職につきたいか(希望・求職)、単に離職するだけで再就職は望まないか(希望・非求職)の実情。

↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、男性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2022年)
↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、男性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2022年)

↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、女性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2022年)
↑ 離職の希望者率(非正規職員・従業員、女性、現職の雇用形態についた主な理由別・離職後求職したいか否か別)(2022年)

離職したい人全体の4割前後が再就職を望んでいるが、「正規の職員・従業員の仕事が無い」に限れば男女ともに離職したい人が多いだけでなく、そのうち転職を望む人の全体比も離職希望者全体に占める割合も大きい。離職したい人の内情が透けて見えるようではある。


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