10年で伸びたのは3業種のみ…4マスへの業種別広告費の「10年間の」推移(最新)

2021/03/02 05:17

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021-0228電通が2021年2月25日に発表した、日本の広告業界の動向を記した報告書【発表リリース:2020年 日本の広告費】を基に、いくつかの切り口から精査を行い、広告業界の動向を垣間見ている。今回は4大従来型メディアとも表現される4マス、テレビ(メディア)・ラジオ・新聞・雑誌における、業種別広告費の10年前と直近(2020年分)とを比較する。業種毎の主要媒体に対する中期ベースでのアプローチの変化を推し量ることができよう。

スポンサードリンク


10年間の推移を額面比較


2020年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取り扱う4媒体ではすべてマイナス。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2020年)(再録)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2020年)(再録)

それでは1年ではなく10年を経た変化はどのようなものだろうか。それが今回の記事の主旨。

今報告書にはテレビメディア・雑誌・新聞・ラジオに対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2020年と2010年における対象メディアすべての値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。ただしテレビメディアでは衛星メディア関連は除かれている。

↑ 業種別広告費(4マス全体、億円)(2010年と2020年)
↑ 業種別広告費(4マス全体、億円)(2010年と2020年)

単純な総額(4マス限定)では2010年が2兆7749億円、2020年が2兆1363億円と2割強の減少。業種別で増加したのはエネルギー・素材・機械、情報・通信、官公庁・団体の計3業種で、あとはすべて減少。東日本大震災、相次ぐ政変、高齢化の進行(特に団塊世代の高齢化突入)に伴う社会構造の変化、インターネットやスマートフォンの普及によるメディアシフトの流れ、そして新型コロナウイルス流行など、劇的な動きが生じたとはいえ、金額面における変容ぶりが改めて認識できる結果ではある。またこの時代の流れでどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる値となっている。

割合でもっとも増加した情報・通信(プラス14.2%)は2209.1億円から2523.4億円へと314.3億円の増加。具体的には「コンピュータ・関連品、コンピュータソフト、携帯電話機、携帯情報端末、電話サービス、通信サービス・インターネット、 ウェブコンテンツ、モバイルコンテンツ、放送など」が該当し、インターネット、スマートフォンの浸透普及においてもっとも恩恵を受けそうな、そして競争が激しい業種である。それゆえに市場規模の大きさに加え、成長性も高いことから、4マスにおいてもその恩恵を受けた形となった。

10年間で半分以上に額を減らしているのは精密機器・事務用品、趣味・スポーツ用品、案内・その他の3業種。精密機器・事務用品は具体的には「時計、カメラ・デジタルカメラなど光学機器、事務用品、文房具など」を指す。勢いのある業種とは言い難いが、ここまで減少するのは不思議な感もある。この業種の広告費そのものが減ったのではなく、インターネット通販への誘導で直接購入に結び付きやすいインターネット広告にシフトする形で4マスへの出稿が減ったと考えれば道理は通る。

趣味・スポーツ用品は多分に若年層の4マス離れに起因するものと推定されるが、今報告書では4マス以外の各業種向け広告費動向が公開されていないため、それを裏付けることはかなわない。具体的には「趣味用品、ゲーム機・ソフト、音声・映像ソフト、園芸用品、ペットフード、パチンコ・パチスロ機、スポーツ用品など」が該当するため、多くはインターネットにシフトしたものと考えられる。またパチンコ・パチスロ機は業界そのものの低迷も大きな要因だろう。

案内・その他は「案内広告(新聞、雑誌)、臨時もの、連合広告、企業グループなど」が該当する。単純にメディア力、公知力の(相対的)減退を受け、リソース配分の変化が生じたものと考えれば納得はできる。

変化の度合いを比率で見ると、そして注目の4業種の推移


直上のグラフは額面の推移が把握できるもの。これを金額ではなく、10年の経過における増減比率で見ると、個々の業種における「4大従来型メディアに対する広告費」のさじ加減の変化が見えてくる。

↑ 10年間の広告費変移(4マス全体、業種別)(2010年から2020年)
↑ 10年間の広告費変移(4マス全体、業種別)(2010年から2020年)

10年で金額を上乗せできたのは3業種だが、中でも大きな上げ幅を示しているのは通信・情報。下げている業種の下げ度合は一様ではなく、大きな違いを見せていることが改めて分かる。

50%以上の下げ幅、つまり半減以上の減り方を示しているのは上記の通り精密機器・事務用品、趣味・スポーツ用品、案内・その他のみ。しかしその2つ以外にも5割近い下げ幅を示している業種が多数確認できる。

もっとも、これら下げ幅の大きい業種が、すべて同じ理由によって広告費を落としているとは限らない。業界そのものが不調なもの、インターネット広告をはじめとした4大従来型メディア「以外」との相性がよいものなど、いくつかの複数理由が考えられる。その内情までは把握できないが、上記の精密機器・事務用品における状況変化のように、推測できるものもいくつか見受けられよう。

変移が気になる業種を4つほど抽出し、2005年以降の動向を記した。また変化が分かりやすいように、それぞれの業種における2005年の額面を基準とし、どれほど増減をしたのかを比率算出したグラフも併記する。金融危機・リーマンショック後に大きな減少を示していること、情報・通信はその後堅調に回復しているがこの1、2年では失速、自動車・関連品や金融・保険は復調ぶりが弱く、この数年では失速している。飲料・嗜好品は復調を果たせず、実質的には失速状態を継続している。

↑ 広告費(対4マス、一部、億円)
↑ 広告費(対4マス、一部、億円)

↑ 広告費(対マス、一部、2005年の値を1.00とした時の比率)
↑ 広告費(対マス、一部、2005年の値を1.00とした時の比率)

今後この4業種の4マスへの広告出稿額の動きには、特に留意をした方がよさそうだ。残念ながら「日本の広告費」では4大従来型媒体以外の業種別出稿額推移は公開されていないので、単に4マスから距離を置き他メディアにシフトしているのか、広告費そのものを減らしているかまでは判断が難しいが、該当業界で広告媒体に対する評価の点において、大きな動きが生じていることに違いはないからだ。



蛇足ではあるが、独自の指標を算出しておこう。これは単純に「10年間の総変化額」のうち、どれほどの割合を各業種の増減分で構成したのかを計算したもの。例えばエネルギー・素材・機械はプラス0.3%と出ているので、10年間の総額変化分においてはプラス0.3%の増加分に寄与したことになる。

↑ 10年間の広告費変移が与えた影響度(4マス全体、10年間の総変化額のうち占める割合、業種別)(2010年から2020年)
↑ 10年間の広告費変移が与えた影響度(4マス全体、10年間の総変化額のうち占める割合、業種別)(2010年から2020年)

交通・レジャーの下げ幅の大きさが目立つが、他にも化粧品・トイレタリー、食品、趣味・スポーツ用品など、可処分所得と深いかかわりのある、インターネットとの連動性・親和性の高い分野での下げ幅が目に留まる。また情報・通信の上げ方が全体に大きな影響を及ぼしているのも確認できる。今後これらの業種がどのような動きを示すのか、注目したいところだ。

さらに蛇足ではあるが、出版の広告費を抽出した結果が次のグラフ。

↑ 広告費(出版、対4マス、億円)
↑ 広告費(出版、対4マス、億円)

金融危機・リーマンショックで大きく下げた状況は他業種と変わらないが、その後上昇の動きがほぼ無い。震災翌年にはわずかに上昇しているが、その後は下降する一方。飲食・嗜好品と動きが似ており、多分にインターネット広告へとシフトしているものと考えられる。同時に出版業界の苦しい実情もうかがいしれよう。


■関連記事:
【定期更新記事:景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】
【新設住宅戸数動向(最新)】
【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】
【30年あまりにわたる広告費推移(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(最新)】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2021 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS