10年で伸びたのは1業種のみ…4マスへの業種別広告費の「10年間の」推移(2016年)(最新)

2016/02/29 05:12

電通が2016年2月23日に発表した、日本の広告業界の動向を記した報告書【発表リリース:2015年 日本の広告費】を基に、いくつかの切り口から精査を行い、広告業界の動向を垣間見ている。今回は従来型大手4メディアとも表現される4マス、「テレビ」「ラジオ」「新聞」「雑誌」における、業種別広告費の10年前と直近(2015年分)とを比較する。業種毎の主要媒体に対する中期ベースでのアプローチの変化を推し量ることができよう。

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10年間の推移を額面比較


2015年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取扱う4媒体では全媒体がマイナス。特に「新聞」の下げ幅が大きい。

↑ 2015年媒体別広告費前年比(再録)
↑ 2015年媒体別広告費前年比(再録)

それでは1年では無く10年を経た変化はどのようなものだろうか。それが今回の記事の主旨。

今報告書には「テレビ」「雑誌」「新聞」「ラジオ」に対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2015年と2005年における値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。

↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2005年と2015年)(億円)
↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2005年と2015年)(億円)

単純な総額(4大従来型メディア限定)では2005年が3兆7408億円、2015年が2兆7464億円とほぼ3/4に減退。増加したのは「情報・通信」のみで、あとはすべて減少。金融危機・リーマンショック、東日本大震災、相次ぐ政変、高齢化の進行(特に団塊世代の高齢化突入)に伴う社会構造の変化、インターネットやスマートフォンの普及によるメディアシフトの流れなど、劇的な動きが生じたとはいえ、金額面における変容ぶりが改めて認識できる結果ではある。またこの時代の流れでどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる形となっている。

唯一増加した「情報・通信」は2677.4億円から2743.3億円へと65.9億円の増加。具体的には「コンピュータ・関連品、コンピュータソフト、携帯電話機、携帯情報端末、電話サービス、通信サービス・インターネット、 ウェブコンテンツ、モバイルコンテンツ、放送など」が該当し、インターネット、スマートフォンの浸透普及においてもっとも恩恵を受けそうな、そして競争が激しい業種である。それゆえに市場規模の大きさに加え、成長性も高いことから、4マスにおいてもその恩恵を受けた形となった。

他方、半分以下に額を減らしているのは「趣味・スポーツ用品」「金融・保険」「案内・その他」の3業種。「趣味・スポーツ」は多分に若年層の4マス離れに起因するものと推定されるが、今報告書では4マス以外の各業種向け広告費動向が公開されていないため、それを裏付けることはかなわない。具体的には「趣味用品、ゲーム機・ソフト、音声・映像ソフト、園芸用品、ペットフード、パチンコ・パチスロ機、スポーツ用品など」が該当するため、多分にインターネットにシフトしたものと考えられる。またパチンコ・パチスロ機は業界そのものの低迷も大きな要因だろう。

「金融・保険」はネットなどへのシフトに加え、2006年辺りから急速に広まった消費者金融に対する、いわゆる「グレーゾーン金利」に係わる問題をきっかけにした大規模なバッシングの風潮に伴い、自主規制も合わせ広告出稿が大幅に減少しているとすれば道理は通る。この状況は4マスに限れば今なお継続中ではある。

変化の度合いを比率で見ると、そして注目の3業種の推移


直上のグラフは額面の推移が把握できるもの。これを金額では無く、10年の経過における増減比率で見ると、個々の業種における「4大従来型メディアに対する広告費」のさじ加減の変化が見えてくる。

↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2005年から2015年への変移)
↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2005年から2015年への変移)

10年で金額を上乗せできたのは1業種「通信・情報」のみだが、それ以外の業種の下げ度合は一様では無く、大きな違いを見せていることが改めて分かる。

1%未満の下げ幅、事実上誤差範囲ともいえる業種は「ファッション・アクセサリー」「家庭用品」「外食・各種サービス」の3つ。逆に50%を超える下げ幅、つまり半減を超えた減り方を示しているのは上記の通り「趣味・スポーツ用品」「金融・保険」「案内・その他」の3つ。しかしその3つ以外にも3割4割引きは当たり前といった、どこかで使われたようなフレーズが似合う状況。

もっとも、これら下げ幅の大きい業種が、すべて同じ理由によって広告費を落としているとは限らない。「エネルギー・素材・機械」などのように業界そのものが不調なもの、「家電・AV機器」のようにインターネット広告をはじめとした4大従来型メディア「以外」との相性が良いものなど、いくつかの複数理由が考えられる。その内情までは博できないが、上記の「金融・保険」における状況変化のように、推測できるものもいくつか見受けられよう。

変移が気になる業種を3つほど抽出し、2005年以降の動向を記した。金融危機・リーマンショック後に大きな減退を示していること、「情報・通信」はその後堅調に回復し、今後も伸びが期待できるが、「自動車・関連品」「金融・保険」は復調ぶりが弱く、この1、2年では失速している。

↑ 広告費推移(一部)(対4大従来型メディア、億円)
↑ 広告費推移(一部)(対4大従来型メディア、億円)

今後この3業種の4マスへの広告出稿額の動きには、特に留意をした方がよさそうだ。残念ながら「日本の広告費」では4大従来型媒体以外の業種別出稿額推移は公開されていないので、単に4マスから距離を置き他メディアにシフトしているのか、広告費そのものを減らしているかまでは判断が難しいが、該当業界で広告媒体に対する評価の点において、大きな動きが生じていることに違いは無いからだ。



やや蛇足ではあるが、独自の指標を算出しておこう。これは単純に「10年間の総変化額」のうち、どれほどの割合を各業種の増減分で構成したのかを計算したもの。例えば「エネルギー・素材・機械」はマイナス2.36%と出ているので、10年間の総額変化分においてはマイナス2%強の減退分に寄与したことになる(金額ではマイナス234.8億円)。

↑ 業種別・2005年-2015年の広告費変移が与えた影響度(4大従来型メディア全体、5年間の総変化額のうち占める割合)
↑ 業種別・2005年-2015年の広告費変移が与えた影響度(4大従来型メディア全体、5年間の総変化額のうち占める割合)

やはり「金融・保険」の下げ幅の大きさが目立つが、他にも「飲食・嗜好品」「自動車・関連品」「趣味・スポーツ用品」など、可処分所得と深いかかわりのある、インターネットとの連動性・親和性の高い分野での下げ幅が目に留まる。今後これらの業種がどのような動きを示すのか、注目したいところだ。

さらに蛇足ではあるが、「出版」の広告費を抽出した結果が次のグラフ。

↑ 広告費推移(出版)(対4大従来型メディア、億円)
↑ 広告費推移(出版)(対4大従来型メディア、億円)

金融危機・リーマンショックで大きく下げた状況は他業種と変わらないが、その後上昇の動きが無い。震災翌年にはわずかに上昇しているが、その後は下降する一方。多分にインターネット広告へとシフトしているものと考えられるが、同時に出版業界の苦しい実情もうかがいしれよう。


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