10年で伸びたのは2業種のみ…4マスへの業種別広告費の「10年間の」推移(最新)

2019/03/04 05:29

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019-0303電通が2019年2月28日に発表した、日本の広告業界の動向を記した報告書【発表リリース:2018年 日本の広告費】を基に、いくつかの切り口から精査を行い、広告業界の動向を垣間見ている。今回は4大従来型メディアとも表現される4マス、テレビ(メディア)・ラジオ・新聞・雑誌における、業種別広告費の10年前と直近(2018年分)とを比較する。業種毎の主要媒体に対する中期ベースでのアプローチの変化を推し量ることができよう。

スポンサードリンク


10年間の推移を額面比較


2018年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取扱う4媒体ではすべてマイナス。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)(再録)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)(再録)

それでは1年ではなく10年を経た変化はどのようなものだろうか。それが今回の記事の主旨。

今報告書にはテレビメディア・雑誌・新聞・ラジオに対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2018年と2008年における対象メディアすべての値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。ただしテレビメディアでは衛星メディア関連は除かれている。

↑ 業種別広告費(4マス全体、億円)(2008年と2018年)
↑ 業種別広告費(4マス全体、億円)(2008年と2018年)

単純な総額(4マス限定)では2008年が3兆2995億円、2018年が2兆5751億円とほぼ8割に減少。増加したのは家庭用品と情報・通信のみで、あとはすべて減少。金融危機・リーマンショック、東日本大震災、相次ぐ政変、高齢化の進行(特に団塊世代の高齢化突入)に伴う社会構造の変化、インターネットやスマートフォンの普及によるメディアシフトの流れなど、劇的な動きが生じたとはいえ、金額面における変容ぶりが改めて認識できる結果ではある。またこの時代の流れでどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる値となっている。

増加した情報・通信は2414.5億円から2849.1億円へと434.6億円の増加。具体的には「コンピュータ・関連品、コンピュータソフト、携帯電話機、携帯情報端末、電話サービス、通信サービス・インターネット、 ウェブコンテンツ、モバイルコンテンツ、放送など」が該当し、インターネット、スマートフォンの浸透普及においてもっとも恩恵を受けそうな、そして競争が激しい業種である。それゆえに市場規模の大きさに加え、成長性も高いことから、4マスにおいてもその恩恵を受けた形となった。

他方家庭用品は610.5億円から639.9億円と29.4億円の増加。具体的には「石油・ガス機器、寝具、インテリア、家具、仏具、台所用品、殺虫・防虫剤、芳香・消臭剤など」が該当する。元々額面では小さめな業種だが、データが取得できる限りでは2009年を底値として少しずつ回復基調にある。

10年間で半分以下に額を減らしているのは趣味・スポーツと案内・その他の2業種。趣味・スポーツ用品は多分に若年層の4マス離れに起因するものと推定されるが、今報告書では4マス以外の各業種向け広告費動向が公開されていないため、それを裏付けることはかなわない。具体的には「趣味用品、ゲーム機・ソフト、音声・映像ソフト、園芸用品、ペットフード、パチンコ・パチスロ機、スポーツ用品など」が該当するため、多分にインターネットにシフトしたものと考えられる。またパチンコ・パチスロ機は業界そのものの低迷も大きな要因だろう。

案内・その他は「案内広告(新聞、雑誌)、臨時もの、連合広告、企業グループなど」が該当する。単純にメディア力、公知力の(相対的)減退を受け、リソース配分の変化が生じたものと考えれば道理は通る。また金融・保険が大きく下げているのは、インターネットなどへのシフトに加え、2006年あたりから急速に広まった消費者金融に対する、いわゆるグレーゾーン金利に係わる問題をきっかけにした大規模なバッシングの風潮に伴い、自主規制も併せ広告出稿が大幅に減少しているとすれば道理は通る。

変化の度合いを比率で見ると、そして注目の4業種の推移


直上のグラフは額面の推移が把握できるもの。これを金額では無く、10年の経過における増減比率で見ると、個々の業種における「4大従来型メディアに対する広告費」のさじ加減の変化が見えてくる。

↑ 10年間の広告費変移(4マス全体、業種別)(2008年から2018年)
↑ 10年間の広告費変移(4マス全体、業種別)(2008年から2018年)

10年で金額を上乗せできたのは2業種、家庭用品と通信・情報のみだが、それ以外の業種の下げ度合は一様ではなく、大きな違いを見せていることが改めて分かる。

50%を超える下げ幅、つまり半減を超えた減り方を示しているのは上記の通り趣味・スポーツ用品と案内・その他のみ。しかしその2つ以外にも3割4割引きは当たり前といった、どこかで使われたようなフレーズが似合う状況。

もっとも、これら下げ幅の大きい業種が、すべて同じ理由によって広告費を落としているとは限らない。エネルギー・素材・機械などのように業界そのものが不調なもの、家電・AV機器のようにインターネット広告をはじめとした4大従来型メディア「以外」との相性がよいものなど、いくつかの複数理由が考えられる。その内情までは把握できないが、上記の金融・保険における状況変化のように、推測できるものもいくつか見受けられよう。

変移が気になる業種を4つほど抽出し、2005年以降の動向を記した。また変化が分かりやすいように、それぞれの業種における2005年の額面を基準とし、どれほど増減をしたのかを比率算出したグラフも併記する。金融危機・リーマンショック後に大きな減少を示していること、情報・通信はその後堅調に回復しているが直近年では失速の気配、自動車・関連品や金融・保険は復調ぶりが弱く、この数年では失速している。飲料・嗜好品は復調を果たせず、実質的には失速状態を継続している。

↑ 広告費(対4マス、一部、億円)
↑ 広告費(対4マス、一部、億円)

↑ 広告費(対マス、一部、2005年の値を1.00とした時の比率)
↑ 広告費(対マス、一部、2005年の値を1.00とした時の比率)

今後この4業種の4マスへの広告出稿額の動きには、特に留意をした方がよさそうだ。残念ながら「日本の広告費」では4大従来型媒体以外の業種別出稿額推移は公開されていないので、単に4マスから距離を置き他メディアにシフトしているのか、広告費そのものを減らしているかまでは判断が難しいが、該当業界で広告媒体に対する評価の点において、大きな動きが生じていることに違いは無いからだ。



蛇足ではあるが、独自の指標を算出しておこう。これは単純に「10年間の総変化額」のうち、どれほどの割合を各業種の増減分で構成したのかを計算したもの。例えばエネルギー・素材・機械はマイナス1.3%と出ているので、10年間の総額変化分においてはマイナス1.3%の減少分に寄与したことになる。

↑ 10年間の広告費変移が与えた影響度(4マス全体、10年間の総変化額のうち占める割合、業種別)(2008年から2018年)
↑ 10年間の広告費変移が与えた影響度(4マス全体、10年間の総変化額のうち占める割合、業種別)(2008年から2018年)

趣味・スポーツ用品の下げ幅の大きさが目立つが、他にも飲食・嗜好品、自動車・関連品、金融・保険、交通・レジャーなど、可処分所得と深いかかわりのある、インターネットとの連動性・親和性の高い分野での下げ幅が目に留まる。今後これらの業種がどのような動きを示すのか、注目したいところだ。

さらに蛇足ではあるが、出版の広告費を抽出した結果が次のグラフ。

↑ 広告費(出版、対4マス、億円)
↑ 広告費(出版、対4マス、億円)

金融危機・リーマンショックで大きく下げた状況は他業種と変わらないが、その後上昇の動きが無い。震災翌年にはわずかに上昇しているが、その後は下降する一方。飲食・嗜好品と動きが似ており、多分にインターネット広告へとシフトしているものと考えられる。同時に出版業界の苦しい実情もうかがいしれよう。


■関連記事:
【定期更新記事:景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】
【新設住宅戸数動向(最新)】
【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】
【30年にわたる広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(最新)】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2019 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー