二極化する伸縮動向…広告費動向を多方面からグラフ化してみる(2017年)(最新)

2017/02/28 05:18

先に【総広告費は6兆2880億円・紙媒体は新聞と雑誌揃ってマイナス、インターネットは1割強の伸び…過去30余年の媒体別広告費動向(2017年)(最新)】で伝えた通り、電通は2017年2月23日付で日本の広告費に関する調査報告書を発表、その内容によれば2016年における日本の総広告費は前年比1.9%増の6兆2880億円とのことだった。インターネット広告の堅調さは相変わらずで1割以上の上昇を見せたが、少なからぬ項目では前年比でマイナスを計上している。今回は報告書から詳細な値を抽出した上で分析のためのグラフ生成を行い、それを介して2016年の状況を中心に、少し詳しく中味を見ていくことにする(【発表リリース:2016年 日本の広告費】)。

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2016年の各媒体別動向


まずは2016年の広告費における前年比。2015年から2016年における広告費の変化を示したものだが、各媒体の広告に関する影響力、クライアントからの評価の変化の度合いがよく分かる結果となっている。

↑ 2016年媒体別広告費前年比
↑ 2016年媒体別広告費前年比

もっとも大きな下げ幅を計上したのは「雑誌」でマイナス9.0%。単純に紙媒体の軟調さ、相対的な影響力の減退に加え、商品の直接的な売りとなるコンテンツのインターネット媒体へのシフトが、影響力の縮退に拍車をかけている。同様の動きは「新聞」でも生じている。

紙媒体の不調さは主要4マス以外でも同様で、プロモーションメディア広告のうち「折込」「電話帳」などでも大きな下げが確認できる。他方「展示・映像他」はプラスを計上しているが、リリースによると各種イベントへの展開はもちろんのこと、新技術を取り入れた新しい広告手法への取り組みが実績として数字上に反映されている。また映画業界が好調だったことも、関連する広告も成長したとの説明もある。

大きく下げた「電話帳」は、携帯電話、特にスマートフォンの普及に伴う固定電話の減少をはじめとする環境の劇的な変化に伴い、需要が大きく減少している結果によるもの。昨今では固定電話にすら電話帳機能が内蔵され、電話番号の検索にはインターネットを用いることが当たり前となっている。電話帳の社会的存在意義は確実に縮小しており、当然広告媒体としての価値も減退、出稿量が減れば、広告費も減るのは自然の成り行きではある。

なお先行記事でも一部検証しているが、前年の反動による影響を鑑み、2年前、つまり2014年比を算出しておく。最初のグラフと見比べれば、単なる反動によるマイナスなのか、本質的な問題を抱えた上でのマイナスなのかが分かる。

↑ 2016年媒体別広告費2年前比
↑ 2016年媒体別広告費2年前比

やはり紙媒体の軟調さは本物のようだ。特に「電話帳」の下げ方が著しい。2年間で実に1/4近くもの減少を示している。他方、「展示・映像他」の伸びも目に留まる。

続いてこれを前年比では無く、金額ベースで示したのが次のグラフ。

↑ 2016年媒体別広告費(億円)
↑ 2016年媒体別広告費(億円)

従来型大手媒体(4マス)、中でも「テレビメディア」が未だに大きな広告費を占めているのが一目瞭然。個別項目では太刀打ちできず、「プロモーションメディア広告費」を全部合わせてようやく追い抜くことができる状態。また、4マスのうちさすがに「テレビメディア」には届かないものの、それに次ぐ「新聞」を大きく抜くポジションに「インターネット広告費」がついているのが分かる。これは経済産業省の特定サービス産業動態統計調査を元にした【30年近くに渡る広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2017年)(最新)】でも同じ動きが確認されており、メディア動向として少なくとも広告費の観点ではインターネットが新聞を抜いている実態を改めて認識させるものである。

経年変化で広告費の動きを確認


続いて過去の値をさかのぼり、経年変化で推移を確認する。2001年以前の値が無いのは、インターネット広告などの項目が用意されていないのがその理由。

また2004年と2005年の間では、広告費の項目区分で変更が行われており、その前後では数字上の連続性は厳密には無い。グラフ上では点線を引いておくので、その線をまたいだ年同士については、参考程度に見ることをお勧めする。

最初に生成するのは単純な金額積み上げグラフ。金融危機発生時で、まだ大きな影響が広告費には表れてなかった2007年が天井となり、その後は景気の後退、リーマンショック、さらには震災などを受け、下落や低迷状態にあったことが分かる。2012年以降は少しずつ復調しつつあるが、その歩みは遅い。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2016年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)(億円)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2015年)(2004-2006年で推定範囲変更のため継続性は無し)(億円)

「プロモーションメディア広告費」(黄緑色)が2004-2005年の間に大きく上昇している。しかしこれは前述の通り、区分の変更で色々と「追加」(他区分からの移動では無い)が行われているのが原因。この時期に今項目が飛躍・成長し、全体額も1兆円ほど躍進したわけではない。

中期的には「新聞」や「雑誌」など、紙媒体が大きく落ち込んでいる。代替メディアの浸透に伴い購入者数の減少、購入者の購入数量の減少、さらには質の低下などの要因から、広告媒体としての実力、少なくとも広告出稿主から見た評価が減っているのが大きな要因。

従来型の4マスとインターネットにおける、広告費から見た影響力の変化が確認できるのが、次のシェア動向。それぞれの年における各媒体の広告費を、全広告費の比率で示したもの。

↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2016年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2016年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

従来4大メディアを黒枠・青系統色で装飾し、動向が分かりやすいようにした。2004-2005年に項目基準の変更がなされたが、それをきっかけとするかのように青系統部分が少しずつ、そして確実に減少していくのが分かる。またその中でも詳しく見ると、「テレビ」は一定のシェアを維持し続けており、「新聞」「雑誌」「ラジオ」がシェア低下の原因であることも確認できる。そしてこの数年は「テレビ」ですらもシェアが減退し、その分までを合わせ「インターネット広告」が侵食したような、さらに「プロモーションメディア広告」までを浸食し、食い広げるような図式が構築されている。

2004年-2005年をきっかけとしていることから、区分変更が問題ではとの発想も頭に浮かぶ。しかしこのタイミングはインターネットの普及が本格化した時期でもあり、また同時にそのネットを媒体とする「インターネット広告」が上昇していることから、区分変更には関係が無いことがうかがい知れる。実のところ2005年の区分変更において4マスが影響を受けているのは「雑誌」のみで、しかも対象誌の増加がなされているため、数字的にはむしろ有利になるはずである。



2016年は電波メディアや新技術を導入した媒体はそれなりに堅調な動きを見せ、インターネットは大きく躍進した一方で、紙媒体は押しなべて後退。2016年をざっと総括するとこのように表現できる。「インターネット広告」のシェアは2016年で2割に達したが、まだ成長過程にあるようにすら見える。1/4、さらには3割に届くことも不可能には見えない。

日本の広告業界を対象としている以上、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査と大きな違いは無く、把握できる現状とそこから導き出せる今後の予想も、さほど変わりはない。従来型広告は横ばい、ネットは好調、4マスは電波媒体ではもみ合い、そして全体的なトレンドとして紙媒体の不調。この流れはしばらく継続するはず。

ただし紙媒体においては、電子媒体へのコンテンツの移行が進むにつれ、出版社などが払う広告費は同じでも「雑誌広告が減る」「ネット広告が増える」との動きが生じることになる。「雑誌」部門の広告費の減退が、そのままコンテンツベースとしての雑誌全体(紙と電子双方)の減退を意味するものとは限らないことに留意が必要となる。

またスマートフォンやタブレット型端末の急速な普及に伴い、それら単独の広告だけでなく、その機動力・柔軟性を活かした、複合型広告の展開も大いに見込める(「展示・映像他」の伸びが好例)。うまくその勢いの波に乗ることができれば、低調さを見せている分野でも盛り返しが期待できよう。


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