二極化する伸縮動向…広告費動向を多方面からグラフ化してみる(最新)

2019/03/04 05:24

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2019-0302先に【総広告費は6兆5300億円・4マス揃ってマイナス、インターネットは1割を超える伸び…過去30年あまりの媒体別広告費動向(最新)】で伝えた通り、電通は2019年2月28日付で日本の広告費に関する調査報告書を発表、その内容によれば2018年における日本の総広告費は前年比2.2%増の6兆5300億円とのことだった。インターネット広告の堅調さは相変わらずで1割以上の上昇を見せたが、他の項目では前年比でマイナスを計上している。今回は報告書から詳細な値を抽出した上で分析のためのグラフ生成を行い、それを介して2018年の状況を中心に、少し詳しく中味を見ていくことにする(【発表リリース:2018年 日本の広告費】)。

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2018年の各媒体別動向


まずは2018年の広告費における前年比。2017年から2018年における広告費の変化を示したものだが、各媒体の広告に関する影響力、クライアントからの評価の変化の度合いがよく分かる結果となっている。なおインターネット広告費の内部的区切り分けとしての「うち新聞デジタル」など4マス由来のデジタル広告費は2018年分から新設公開された区分のため、2018年時点では前年比は存在しない。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2018年)

もっとも大きな下げ幅を計上したのは電話帳でマイナス9.5%。次いで雑誌のマイナス9.0%、新聞の7.1%と続く。単純に紙媒体の軟調さ、相対的な影響力の減少に加え、商品の直接的な売りとなるコンテンツのインターネット媒体へのシフトが、広告費のマイナス化に拍車をかけている。

他方展示・映像ほかはプラスを計上しているが、報告書によると訪日観光客の増加や「2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会」に伴う再開発などによる特需的影響がけん引している。特に東京では「国家戦略特区」による都市再生プロジェクトが進行し、デジタルテクノロジーを駆使したアートイベントやeスポーツなどの開催が盛んとなり、その動きが好影響となったようだ。

大きく下げた電話帳は、携帯電話、特にスマートフォンの普及に伴う固定電話の減少をはじめとする環境の劇的な変化に伴い、需要が大きく減少している結果によるもの。昨今では固定電話にすら電話帳機能が内蔵され、電話番号の検索にはインターネットを用いることが当たり前となっている。電話帳の社会的存在意義は確実に縮小しており、当然広告媒体としての価値も減退、出稿量が減れば、広告費も減るのは自然の成り行きではある。報告書では電話帳そのものの特性を活かし、避難所マップや防災の心得などを収録した「防災用別冊版」を同梱して全住戸・全事業所を対象に届ける体制が拡大したことなど、地域と暮らしのメディアへのパラダイムシフトを遂げているとの説明があるが、広告費の売上向上にはつながっていないようだ。

なお先行記事でも一部検証しているが、前年の反動による影響を鑑み、2年前、つまり2016年比を算出しておく。最初のグラフと見比べれば、単なる反動によるマイナスなのか、本質的な問題を抱えた上でのマイナスなのかが分かる。

↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2018年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2018年)

やはり紙媒体の軟調さは本物のようだ。特に電話帳や雑誌の下げ方が著しい。2年間で実に2割に届かんばかりの減少を示している。

続いてこれを前年比では無く、金額ベースで示したのが次のグラフ。

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2018年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2018年)

従来型大手媒体(4マス)、中でもテレビメディアが未だに大きな広告費を占めているのが一目瞭然。個別項目では太刀打ちできず、プロモーションメディア広告費を全部合わせてようやく追い抜くことができる状態。また、インターネット広告費全体がもう少しで追いつくポジションについているのが分かる(地上波テレビに限ればほぼ同額)。これは経済産業省の特定サービス産業動態統計調査を元にした【30年にわたる広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(最新)】でも同じ動きが確認されており、メディア動向として少なくとも広告費の観点ではインターネットが新聞を抜いている、さらにはテレビメディアにほぼ肩を並べている実情を改めて認識させるものである。

経年推移で広告費の動きを確認


続いて過去の値をさかのぼり、経年推移を確認する。2001年以前の値が無いのは、インターネット広告などの項目が用意されていないため。

また2004年と2005年の間では、広告費の項目区分で変更が行われており、その前後では数字上の連続性は厳密には無い。グラフ上では点線を引いておくので、その線をまたいだ年同士については、参考程度に見ることをお勧めする。

最初に生成するのは単純な金額の積み上げ式グラフ。金融危機発生時で、まだ大きな影響が広告費には表れてなかった2007年が天井となり、その後は景気の後退、リーマンショック、さらには震災などを受け、下落や低迷状態にあったことが分かる。2012年以降は少しずつ復調しつつあるが、その歩みは遅い。

↑ 媒体別広告費(電通推定、積み上げ式グラフ、億円)(2001年以降)
↑ 媒体別広告費(電通推定、積み上げ式グラフ、億円)(2001年以降)

プロモーションメディア広告費が2004-2005年の間に大きく上昇している。しかしこれは前述の通り、区分の変更で色々と新規に追加(他区分からの移動では無い)が行われているのが原因。この時期に今項目が飛躍・成長し、全体額も1兆円ほど躍進したわけでは無い。

中期的には新聞や雑誌など、紙媒体が大きく落ち込んでいる。代替メディアの浸透に伴い購入者数の減少、購入者の購入数量の減少、さらには質の低下などの要因から、広告媒体としての実力、少なくとも広告出稿主から見た評価が減っているのが大きな要因。

従来型の4マスとインターネットにおける、広告費から見た影響力の変化が確認できるのが、次のシェア動向。それぞれの年における各媒体の広告費を、対総広告費比率で示したもの。

↑ 媒体別広告費(電通推定、2004-2005年で推定範囲変更のため厳密な連続性は無し、構成比)(2001年以降)
↑ 媒体別広告費(電通推定、2004-2005年で推定範囲変更のため厳密な連続性は無し、構成比)(2001年以降)

4マスを黒枠・青系統色で装飾し、動向が分かりやすいようにした。2004-2005年に項目基準の変更がなされたが、それをきっかけとするかのように青系統部分が少しずつ、そして確実に減少していくのが分かる。またその中でも詳しく見ると、テレビメディアは一定のシェアを維持し続けており、新聞・雑誌・ラジオがシェア低下の原因であることも確認できる。そしてこの数年はテレビメディアですらもシェアが減少し、その分までを合わせインターネット広告が侵食したような、さらにプロモーションメディア広告までを侵食し、食い広げるような図式が構築されている。

2004年-2005年をきっかけとしていることから、区分変更が問題ではとの発想も頭に浮かぶ。しかしこのタイミングはインターネットの普及が本格化した時期でもあり、また同時にそのインターネットを媒体とするインターネット広告が上昇していることから、区分変更には関係が無いことがうかがい知れる。実のところ2005年の区分変更において4マスが影響を受けているのは雑誌のみで、しかも対象誌の増加がなされているため、数字的にはむしろ有利になるはずである。



2018年はインターネット広告のみが堅調な動きを見せ、総広告費をもけん引する一方で、その他の広告はほとんどがマイナス、特に紙媒体の縮小の動きは著しい形となった。インターネット広告の対総広告費比率はすでに1/4を超え、早ければ来年にも3割に届きそうではある。

また2018年分からインターネット広告費内における4マス由来のデジタル広告費も開示されたが、それらを全部合わせても582億円に過ぎない。これはインターネット広告費の3.3%程度の額である。

日本の広告業界を対象としている以上、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査と大きな違いは無く、把握できる現状とそこから導き出せる今後の予想も、さほど変わりは無い。プロモーションメディア広告はやや軟調、インターネットは好調、4マスは押しなべて不調、そして全体的なトレンドとして紙媒体の不調。この流れはしばらく継続するはず。

ただし紙媒体においては、電子媒体へのコンテンツの移行が進むに連れ、出版社などが払う広告費は同じでも「雑誌広告が減る」「インターネット広告が増える」との動きが生じることになる。雑誌の広告費の減少が、そのままコンテンツベースとしての雑誌全体(紙と電子双方)の減退を意味するものとは限らないことに留意しなければならない。

またスマートフォンやタブレット型端末の急速な普及に伴い、それら単独の広告だけで無く、その機動力・柔軟性を活かした、複合型広告の展開も大いに見込める(展示・映像ほかの伸びが好例)。うまくその勢いの波に乗ることができれば、低調さを見せている分野でも盛り返しが期待できよう。


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