ネットと衛星以外は大よそ不調…広告費動向を多方面からグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/02/28 10:44

先に【総広告費は6兆1710億円・インターネットは1割強の伸び…過去30余年の媒体別広告費動向(2016年)(最新)】で伝えた通り、電通は2015年2月23日付で日本の広告費に関する調査報告書を発表、その内容によれば2015年における日本の総広告費は前年比0.3%増の6兆1710億円とのことだった。インターネット広告の堅調さは相変わらずで1割以上の上昇を見せたが、多くの項目では前年比でマイナスを計上している。今回は報告書から詳細な値を抽出した上で分析のためのグラフ生成を行い、それを介して2015年の状況を中心に、少し詳しく中味を見ていくことにする(【発表リリース:2015年 日本の広告費】)。

スポンサードリンク


2015年の各媒体別動向


まずは2015年の広告費における前年比。2014年から2015年における広告費の変化を示したものだが、各媒体の広告に関する影響力、クライアントからの評価の変化の度合いがよく分かる結果となっている。

↑ 2015年媒体別広告費前年比
↑ 2015年媒体別広告費前年比

大きく下げた「電話帳」は、携帯電話、特にスマートフォンの普及に伴う固定電話の減少をはじめとする環境の劇的な変化に伴い、需要が大きく減少している結果によるもの。昨今では固定電話にすら電話帳機能が内蔵され、電話番号の検索にはインターネットを用いることが当たり前となっている。電話帳の社会的存在意義は確実に縮小しており、当然広告媒体としての価値も減退、出稿量が減れば、広告費も減るのは自然の成り行き。4マスはすべてマイナス。特に「新聞」のマイナス6.2%が群を抜いた下げ方を示している。なお「テレビメディア」を詳細項目区分化すると、「衛星メディア関連」は唯一プラスを示す形となる。

「インターネット広告」はプラス10.2%と主要項目区分では一番の成長ぶり。「プロモーションメディア広告費」、つまり一般広告の類は微妙な軟調ぶりだが、特に「折込」「DM(ダイレクトメール)」のような紙媒体系の不調が目に留まる。「折込」はそれを挟み込む「新聞」が大きく下げている以上、仕方がないものだが、時代のすう勢「紙媒体全体で広告出稿先としての価値が減退している」との推測も可能な動向ではある。

なお先行記事でも言及しているが、2015年分で多項目が前年比でマイナスを示したのは、2014年でいくつかのイベント的な底上げが生じており、その反動による影響もある。そこで2年前、つまり2013年比を算出しておく。最初のグラフと見比べれば、単なる反動によるマイナスなのか、本質的な問題を抱えた上でのマイナスなのかが分かるはず。

↑ 2015年媒体別広告費2年前比
↑ 2015年媒体別広告費2年前比

やはり紙媒体の軟調さは本物のようだ。特に電話帳の下げ方が著しい。2年間で実に1/4強もの減少を示している。

続いてこれを前年比では無く、絶対金額で示したのが次のグラフ。

↑ 2015年媒体別広告費(億円)
↑ 2015年媒体別広告費(億円)

従来型大手媒体(4マス)、中でも「テレビメディア」が未だに大きな広告費を占めているのが一目瞭然。個別項目では太刀打ちできず、「プロモーションメディア広告費」を全部合わせてようやく追い抜くことができる状態。また、4マスのうちさすがに「テレビメディア」には届かないものの、それに次ぐ「新聞」を大きく抜くポジションに「インターネット広告費」がついているのが分かる。これは経済産業省の特定サービス産業動態統計調査を元にした【30年近くに渡る広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編(特定サービス産業動態統計調査)(2016年)(最新)】でも同じ動きが確認されており、メディア動向として少なくとも広告費の観点ではインターネットが新聞を抜いている実態を改めて認識させるものである。

経年変化で広告費の動きを確認


続いて過去の値をさかのぼり、経年変化で推移を確認する。2001年以前の値が無いのは、インターネット広告などの項目が用意されていないのがその理由。

また2004年と2005年の間では、広告費の項目区分で変更が行われており、その前後では数字上の連続性は厳密には無い。グラフ上では点線を引いておくので、その線をまたいだ年同士については、参考程度に見ることをお勧めする。

最初に生成するのは単純な金額積み上げグラフ。金融危機発生時で、まだ大きな影響が広告費には表れてなかった2007年が天井となり、その後は景気の後退、リーマンショック、さらには震災などを受け、下落や低迷状態にあったことが分かる。2012年以降は少しずつ復調しつつあるが、その歩みは遅い。

↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2015年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)(億円)
↑ 媒体別広告費(積上げ推移、2001-2015年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)(億円)

「プロモーションメディア広告費」(黄緑色)が2004-2005年の間に大きく上昇している。しかしこれは前述の通り、区分の変更で色々と「追加」(他区分からの移動では無い)が行われているのが原因。この時期に今項目が飛躍・成長し、全体額も1兆円ほど躍進したわけではない。

中期的には「新聞」や「雑誌」など、紙媒体が大きく落ち込んでいる。代替メディアの浸透に伴い購入者数の減少、購入者の購入数量の減少、さらには質の低下などの要因から、広告媒体としての実力、少なくとも広告出稿主から見た評価が減っているのが大きな要因。

従来型の4マスとインターネットにおける、広告費から見た影響力の変化が確認できるのが、次のシェア動向。それぞれの年における各媒体の広告費を、全広告費の比率で示したもの。

↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2015年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)
↑ 媒体別広告費(構成比推移、2001-2015年)(2004-2005年で推定範囲変更のため継続性は無し)

従来4大メディアを黒枠・青系統色で装飾し、動向が分かりやすいようにした。2004-2005年に項目基準の変更がなされたが、それをきっかけとするかのように青系統部分が少しずつ、そして確実に減少していくのが分かる。またその中でも詳しく見ると、「テレビ」は一定のシェアを維持し続けており、「新聞」「雑誌」「ラジオ」がシェア低下の原因であることも確認できる。そして2015年はたがが外れたように、「テレビ」ですらもシェアが減退し、その分を「インターネット広告」が侵食したような図式が構築されている。

2004年-2005年をきっかけとしていることから、区分変更が問題ではとの発想も頭に浮かぶ。しかしこのタイミングはインターネットの普及が本格化した時期でもあり、また同時にそのネットを媒体とする「インターネット広告」が上昇していることから、区分変更には関係が無いことがうかがい知れる。実のところ2005年の区分変更において4マスが影響を受けているのは「雑誌」のみで、しかも対象誌の増加がなされているため、数字的にはむしろ有利になるはずである。



前年分となる2014年がややイレギュラーな上昇を示し、それとの比較となるため、全体的にはネガティブな動きをしているものの、「インターネット広告」のけん引により、全体としてはかろうじてプラスを計上したのが2015年の総括と表現できる。このペースでいけば、少なくとも「日本の広告費」上の算出値では、あと数年、早ければ来年発表分で「インターネット広告」のシェアは2割に届くことだろう。

日本の広告業界を対象としている以上、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査と大きな違いは無く、把握できる現状とそこから導き出せる今後の予想も、さほど変わりはない。従来型広告は横ばい、ネットは好調、4マスは電波媒体ではもみ合い、そして全体的なトレンドとして紙媒体の不調。この流れはしばらく継続するはず。

ただし紙媒体においては、電子媒体へのコンテンツの移行が進むにつれ、出版社などが払う広告費は同じでも「雑誌広告が減る」「ネット広告が増える」との動きが生じることになる。「雑誌」部門の広告費の減退が、そのままコンテンツベースとしての雑誌全体(紙と電子双方)の減退を意味するものとは限らないことに留意が必要となる。

またスマートフォンやタブレット型端末の急速な普及に伴い、それら単独の広告だけでなく、その機動力・柔軟性を活かした、複合型広告の展開も大いに見込める。うまくその勢いの波に乗ることができれば、低調さを見せている分野でも盛り返しが期待できよう。


■関連記事:
【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】
【雑誌も含めて市場規模1400億円超え…「電子書籍ビジネス調査報告書2015」発売】
【1年間で112万部減、1世帯当たり部数は0.80部まで減少…新聞の発行部数動向(2016年)(最新)】
【IP電話が漸増するも全体では減少…固定電話数の移り変わりをグラフ化してみる(2015年)(最新)】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー