二極化する伸縮動向…広告費動向を多方面からグラフ化してみる(最新)

2020/03/13 05:20

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020-0312先に【総広告費は6兆9381億円・4マス揃ってマイナス、インターネットは2割近くの伸び…過去30年あまりの媒体別広告費動向(最新)】で伝えた通り、電通は2020年3月11日付で日本の広告費に関する調査報告書を発表、その内容によれば2019年における日本の総広告費は前年比6.2%増の6兆9381億円とのことだった。インターネット広告の堅調さは相変わらずで2割近くの上昇を見せたが、4マスは総じて前年比でマイナスを示している。今回は報告書から詳細な値を抽出した上で分析のためのグラフ作成を行い、それを介して2019年の状況を中心に、少し詳しく中味を見ていくことにする(【発表リリース:2019年 日本の広告費】)。

スポンサードリンク


2019年の各媒体別動向


まずは2019年の広告費における前年比。2018年から2019年における広告費の変化を示したものだが、各媒体の広告に関する影響力、クライアントからの評価の変化の度合いがよく分かる結果となっている。なおインターネット広告費の内部的区切り分けとしての「うち物販系ECプラットフォーム広告費」は2019年分から新設公開された区分のため、2019年時点では前年比は存在しない。またプロモーションメディア広告費全体の内部的区切りとしての「うちイベント・展示・映像ほか」は2018年時点では「うち展示・映像ほか」で2019年分からイベント領域が追加されたため、前年比が非常に大きなものとなっている。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2019年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2019年)

もっとも大きな下げ幅を示したのは雑誌と折込(広告)でマイナス9.0%、次いでフリーペーパー・電話帳のマイナス7.7%。単純に紙媒体の軟調さ、相対的な影響力の減少に加え、商品の直接的な売りとなるコンテンツのインターネット媒体へのシフトが、広告費のマイナス化に拍車をかけている。

他方イベント・展示・映像ほかが大きなプラスを示しているのは前述の通りイベント領域が追加されたからだが、その他にも報告書によれば好調さの原因は新元号制定に伴う祝賀イベントやG20、ローマ法王の来日など国家的イベントが相次いだこと、スポーツイベントの活況、映画興行収入の堅調さや入場人員数の増加がプラス要因と説明している。

大きく下げた雑誌はデジタルやプロモーションメディア広告への広告費のシフト、雑誌発行部数の減少などが影響。またフリーペーパー・電話帳はデジタルソフトの影響が続くが、一方で地域メディアとしてのコンテンツ力の強化を実施し、効果が出始めていると解説されている。

なお先行記事でも一部検証しているが、前年の反動による影響を鑑み、2年前、つまり2017年比を算出しておく。最初のグラフと見比べれば、単なる反動によるマイナスなのか、本質的な問題を抱えた上でのマイナスなのかが分かる。もっとも2019年で追加された区分があるものはあまり参考にならないが。また内部的区切り分けとしての「うち新聞デジタル」など4マス由来のデジタル広告費は2018年分から新設公開された区分のため、2019年時点では2前年比は存在しない。

↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2019年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、2年前比)(2019年)

やはり紙媒体の軟調さは本物のようだ。特に雑誌や折込(広告)、フリーペーパー・電話帳の下げ幅が著しい。

続いてこれを前年比ではなく、金額ベースで示したのが次のグラフ。

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2019年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2019年)

従来型大手媒体(4マス)、中でもテレビメディアが大きな広告費を占めているのが一目瞭然。個別項目では太刀打ちできず、プロモーションメディア広告費を全部合わせてようやく追い抜くことができる状態。また、インターネット広告費全体がテレビメディアを追い抜いている実情も確認できる。これは2019年で初めて生じたもので、2019年から新規追加された区分「うち物販系ECプラットフォーム広告費」を除いても同様の結果となる(除くとインターネット広告費は1兆9984億円となり、テレビメディアの1兆8612億円より上)。

経年推移で広告費の動きを確認


続いて過去の値をさかのぼり、経年推移を確認する。2001年以前の値が無いのは、インターネット広告などの項目が用意されていないため。

また2004年と2005年の間では、広告費の項目区分で変更が行われており、その前後では数字上の連続性は厳密には無い。グラフ上では点線を引いておくので、その線をまたいだ年同士については、参考程度に見ることをお勧めする。

最初に作成するのは単純な金額の積み上げ式グラフ。金融危機発生時で、まだ大きな影響が広告費には表れてなかった2007年が天井となり、その後は景気の後退、リーマンショック、さらには震災などを受け、下落や低迷状態にあったことが分かる。2012年以降は少しずつ復調しつつあるが、その歩みは遅い。

↑ 媒体別広告費(電通推定、積み上げ式グラフ、億円)(2001年以降)
↑ 媒体別広告費(電通推定、積み上げ式グラフ、億円)(2001年以降)

プロモーションメディア広告費が2004-2005年の間に大きく上昇している。しかしこれは前述の通り、区分の変更で色々と新規に追加(他区分からの移動では無い)が行われているのが原因。この時期に今項目が飛躍・成長し、全体額も1兆円ほど躍進したわけではない。

中期的には新聞や雑誌など、紙媒体が大きく落ち込んでいる。代替メディアの浸透に伴い購入者数の減少、購入者の購入数量の減少、さらには質の低下などの要因から、広告媒体としての実力、少なくとも広告出稿主から見た評価が減っているのが大きな要因。

従来型の4マスとインターネットにおける、広告費から見た影響力の変化が確認できるのが、次のシェア動向。それぞれの年における各媒体の広告費を、対総広告費比率で示したもの。

↑ 媒体別広告費(電通推定、2004-2005年で推定範囲変更のため厳密な連続性は無し、構成比)(2001年以降)
↑ 媒体別広告費(電通推定、2004-2005年で推定範囲変更のため厳密な連続性は無し、構成比)(2001年以降)

4マスを黒枠・青系統色で装飾し、動向が分かりやすいようにした。2004-2005年に項目基準の変更が行われたが、それをきっかけとするかのように青系統部分が少しずつ、そして確実に減少していくのが分かる。またその中でも詳しく見ると、テレビメディアは一定のシェアを維持し続けており、新聞・雑誌・ラジオがシェア低下の原因であることも確認できる。そしてこの数年はテレビメディアですらもシェアが減少し、その分までを合わせインターネット広告が侵食したような、さらにプロモーションメディア広告までを侵食し、食い広げるような図式が構築されている。

2004年-2005年をきっかけとしていることから、区分変更が問題ではとの発想も頭に浮かぶ。しかしこのタイミングはインターネットの普及が本格化した時期でもあり、また同時にそのインターネットを媒体とするインターネット広告が上昇していることから、区分変更には関係が無いことがうかがい知れる。実のところ2005年の区分変更において4マスが影響を受けているのは雑誌のみで、しかも対象誌の増加が行われているため、数字的にはむしろ有利になるはずである。



2019年はインターネット広告とプロモーションメディア広告が堅調な動きを見せ、総広告費をもけん引する一方で、4マスはすべてがマイナス、特に紙媒体の縮小の動きは著しい形となった。インターネット広告の対総広告費比率はすでに3割を超えている。

また2018年分からインターネット広告費内における4マス由来のデジタル広告費も開示されたが、2019年ではそれらを全部合わせても715億円に過ぎない。これはインターネット広告費の3.4%程度の額である。

日本の広告業界を対象としている以上、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査と大きな違いはなく、把握できる現状とそこから導き出せる今後の予想も、さほど変わりはない。プロモーションメディア広告はやや堅調、インターネットは好調、4マスは押しなべて不調、そして全体的なトレンドとして紙媒体の不調。この流れはしばらく継続するはず。

ただし紙媒体においては、電子媒体へのコンテンツの移行が進むに連れ、出版社などが払う広告費は同じでも「雑誌広告が減る」「インターネット広告が増える」との動きが生じることになる。雑誌の広告費の減少が、そのままコンテンツベースとしての雑誌全体(紙と電子双方)の減退を意味するものとは限らないことに留意しなければならない。

またスマートフォンやタブレット型端末の急速な普及に伴い、それら単独の広告だけでなく、その機動力・柔軟性を活かした、複合型広告の展開も大いに見込める(展示・映像ほかの伸びが好例)。うまくその勢いの波に乗ることができれば、低調さを見せている分野でも盛り返しが期待できよう。


■関連記事:
【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】
【雑誌も含めて市場規模3000億円超え…「電子書籍ビジネス調査報告書2019」発売】
【1年間で210万部減、1世帯あたり部数は0.66部まで減少…新聞の発行部数動向(最新)】
【IP電話が漸増するも全体では減少…固定電話数の移り変わりをグラフ化してみる(最新)】

スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2020 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS