続く「進撃の巨人」効果、紙媒体ならではの保存感…(2013年10-12月期印刷証明付き部数動向雑感)

2014/02/21 09:30

これまで6本の記事を展開し、社団法人日本雑誌協会が2014年2月14日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新版となる2013年10月-12月分をはじめ、過去の蓄積データを基に、各方面の雑誌の印刷部数、そしてそこから類推される販売動向を精査してきた。今回はそれらの記事の締めくくりとして、気になる点、特筆事項を3つほど挙げて再確認する。

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続く「進撃の巨人」の進撃


まず一つ目は、前四半期でも筆頭に挙げた「進撃の巨人」効果。同作品は【「進撃の巨人」単行本累計2000万部突破、掲載誌「別冊少年マガジン」も部数3割増に】などで紹介している通り、「別冊少年マガジン」の創刊号から連載されている作品。元々その連載時から注目を集めていたが、アニメ化で一気に弾みがつき、多種多様なマルチメディア展開がなされ、さらに認知度は高まり続けている。その「別冊少年マガジン」自身も今四半期から印刷証明部数を明示するようになり、「進撃の巨人」効果の実態を今後実数字で知ることが出来ることとなった。

今四半期では【PASH!は失速、ポケモン効果でファミ通DS+Wiiが伸びる…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2013年10月-12月)】にある通り「PASH!」は特集を不定期的に掲載し続けているものの、勢いを減じており、特需はほぼ無くなっている。他方「ARIA」は元々部数が少なかったのも一因だが、絶大な効果が数字となって現れ、当期の所属ジャンルの各グラフに著しい変調を来たしている。

↑ ARIAの部数推移(2013年10-12月期まで)(再録)
↑ ARIAの部数推移(2013年10-12月期まで)(再録)

また「シリウス」も前四半期比で4割強の伸び率を打ち出しており、「進撃の巨人」の効果が発揮されていることが分かる。

ここ一、二年に限っても「ウルトラジャンプ」の「ジョジョリオン」、「別冊花とゆめ」の「ガラスの仮面」のように、カリスマ性の高い、「この作品が掲載されているのなら購入する価値はある」と読者予備層に動機づけさせるような作品の存在によって、軟調さが続く紙媒体の雑誌でも、容易に売り上げの底上げは出来ることを、「進撃の巨人」は改めて認識させてくれたことになる。もっとも昨今では趣味趣向の多様化、選択肢の増加(作品そのものに加えて展開メディアも増えている)、さらにはそれらの周辺環境の変化に対して「安全牌」ばかりを模索する雑誌側の姿勢に伴い、この「けん引役となるビッグタイトル」が生まれにくい雰囲気が雑誌界隈に浸透していることも否めない。

それこそ毎四半期毎に「進撃の巨人」クラスの巨人的タイトルが複数本、各雑誌ジャンルから登場するような環境作りが、コミック各誌には求められている。

時節に乗り、定番を確実にこなすのも大切


それと相対する動きに見えるのが、「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」「コミック乱」「コミック乱ツインズ」で構成される「コミック乱」3兄弟の動き。元々手堅いテーマと比較的安定した購入層である中堅層を対象としたコミック雑誌で、部数動向も堅調。今四半期ではそこからさらに群を抜く(もちろんプラス方面)動きを示している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2013年10-12月期、前期比)(再録)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2013年10-12月期、前期比)(再録)

これはNHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」の放映開始で、3誌のテーマである戦国系、歴史物へ興味関心が高まったのが最大の原因だが、それと合わせる形で「黒田官兵衛の右腕とされる後藤又兵衛の出世物語を描いた作品の連載開始」「歴史シミュレーションゲーム『信長の野望・創造』とのコラボ企画の展開」「著名原作の『戦国自衛隊』の連載開始」など、定番ではあるが同時に手堅く、確実性の高い企画を実施したことによるところも大きい。

元々相乗効果が見込めやすいジャンルではあるが、そしていくつは偶然の産物の可能性はあるものの、堅実な施策が結果を出した好例として、「コミック乱」3兄弟の堅調さには留意の必要がある。

紙ならではの「保存しておきたい」存在の創生


最後はビジネス系雑誌における「COURRiER Japon」と「PRESIDENT」。前者は昨年初頭から順調に部数を伸ばし続けているが、後者は今四半期で大きく飛躍した。

↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2013年10-12月期まで)(再録)
↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2013年10-12月期まで)(再録)

特に「PRESIDENT」の今四半期における発行内容を見るに、「保険・相続・老後のお金」「資料の作り方」「100%ウケる!雑談テクニック」といった、買ってその場で読んで後はお蔵入り的なものではなく、少なくとも数か月、さらには数年単位で読み返して保存したい「永久保存版」的な特集を組んだ号が多いのが目立つ。

元々ビジネス系ジャンルでは速報性や検索性の点でインターネット上の情報にかなうはずもなく、不利な戦いを強いられている。そのような環境の中で、紙媒体ならではの利点、「しっかりとした、確実性のある、安心感を持たせてくれる価値観」「手元に確実な形として残したいという動機づけ」を上手く発揮した結果といえる。情報そのものは紙でもデジタルでもその本質に変わりはないものの、「紙だからこそ安心できる」「所有感の実感が沸く」という心境は大いに理解できるし、だからこそこれらの雑誌は実績を挙げたのだろう。



他にも例えば「別冊マーガレット」の「俺物語!!」のように、注目すべき動きを見せている雑誌をいくつか見受けることができる。全体としては苦戦が続く雑誌業界に違いはないものの、堅調さを見せるもの、期待をしても良さそうな動きを示すものが確実に存在している状況は救いになる。

次四半期は年度変わりの直前ということもあり、今四半期以上の動きが各ジャンルに起きることが予想される。引き続き各誌動向を注意深く見守っていくことにしよう。

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