「巨人」効果で前期比332%増のARIA…少女・女性向けコミック誌部数動向(2013年10月-12月)

2014/02/20 11:30

社団法人日本雑誌協会は2014年2月14日付で、四半期のペースで更新・公開をしている印刷部数に関して、最新分となる2013年10月-12月分の反映を行った。これは協会側が各出版社から許諾を受けた主要定期発刊誌の「印刷証明付き部数」を収録したもので、各雑誌のすう勢を推し量る値として公正、かつ不特定多数が容易に再検証できる貴重な資料である。今回はその値を基に「少女・女性向けコミック系の雑誌」に焦点を絞り、グラフ化と状況の把握を執り行うことにする。

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「なかよし」後退、「ARIA」が飛びぬける


データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、諸般注意事項は一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。

まずは少女向けコミック誌。今四半期では同部門における脱落・追加雑誌は無し。

↑ 2013年7-9月期と最新データ(2013年10-12月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2013年7-9月期と最新データ(2013年10-12月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

「ちゃお」の独走態勢は継続中で、順位の上ではそれに続く「別冊マーガレット」に対し2倍以上の差がある。よほどのことが無い限り、トップと第2位との間で順位変動が起きることは無さそう(絶対数でも30万部ほどの差が出ている)。前四半期との差異については大きな変化はないが、唯一「なかよし」の下落が目に留まる。

続いて女性向けコミック誌。これは「少女向け」と比べると、やや高い年齢層の女性を対象としたコミック雑誌を指す。こちらは少女向けコミックのグラフと比較して、横軸の区切りが小さめ(2万部単位)であることに注意してほしい。

↑ 2013年7-9月期と最新データ(2013年10-12月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2013年7-9月期と最新データ(2013年10-12月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップは前四半期から続き「BE・LOVE」。これは「週刊ヤングレディ」の増刊漫画誌で、1980年に別雑誌として創刊された。女性の大人、具体的には30代から40代をターゲットにした「レディースコミック誌」(20歳以上の女性を対象とした漫画ジャンル)。第2位の「YOU」もジャンルとしては同じ。つまり女性向けコミック誌の分野では、一般的にこのジャンルの受けが良い、需要があることを体現している。

一方、今四半期では大きな変動が一つ目に留まる。「ARIA」がその具体的対象。常に今グラフでは最上位部分、つまり部数では一番少ない立ち位置にあったのが、中ほどのエリアにまで躍進。前四半期の値との差異を見ても、一目で「猛烈な上昇ぶり」を示したのが分かる。ここまでの上昇ぶりは、女性向けコミック誌はおろか、「印刷証明付部数」関連の記事執筆開始以来初めての動きで、「グラフ作成時に間違ったか?」と何度となく確認したほど。これについては次の項目で詳しく解説していく。

グラフが無意味なものになるほど…四半期変移で直近動向を探る


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。これはこの3か月の間における、印刷部数の変化を示したもの。季節変動などの影響(例えば夏休み期間は子供向け雑誌が売れにくくなる)を受ける可能性はあるが、最近の各誌の動向を知るにはもっとも適したものである。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2012年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2012年10-12月期、前期比)

赤対象、つまり誤差(マイナス5%まで)の範ちゅうを超えて下げた雑誌は1誌、「なかよし」のみ。これは前四半期の解説記事で説明した通り、2013年8月8日に発売された、2013年9月号の付録「まんが家キット 初音ミクを描いてみよ!!」の貢献で特需的に伸びた同誌の部数が、その反動で落ち込んだまでの話。単純に特需の直前四半期の値に戻った(14万部)までの話でしかなく、大きな心配は要らない。

続いて女性向けコミックの動向。特異な動きを示した「ARIA」単独の中期的推移も合わせてグラフ化する。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2013年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2013年10-12月期、前期比)

↑ ARIAの部数推移(2013年10-12月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2013年10-12月期まで)

5%超えの下げ率を示したのは今四半期では1誌、「Cocohana」のみ。スティーブ・ジョブズ氏の伝記を漫画化した作品が連載中の「Kiss」はプラス3.1%とそこそこ健闘。

他方、それら他誌の動きをすべて吹き飛ばすかのような上昇ぶりを示したのが「ARIA」。実に前期比で331.7%。4倍強の部数ということになる。これは言うまでも無く、前期記事で解説の通り、2013年11月号から始まった「進撃の巨人」のスピンオフ作品「進撃の巨人 悔いなき選択」の連載が原因。【「進撃の巨人」特需続く・ARIA 1月号が重版で通常部数の10倍に、との話】にもある通り、1月号が重版を重ねて通常部数をはるかに上回る結果を出すなど、同誌の状況を大きく変える結果が出ている。

「ARIA」のみの部数動向を記した折れ線グラフでも、いかに大きな影響を与えたかが分かるはず。次四半期でさらに伸びを示すのか、それとも勢いを減じるのか、一番の注目株には違いない。

キツい現実の前年同期比(1誌除く)


続いて「前年同期比」の値を算出する。これは季節によって生じる販売動向の変移への考慮をせず、年ベースでの雑誌のすう勢を確認できる値。まず最初は少女コミック誌。
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2013年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2013年10-12月期、前年同期比)

5%超えの減少は10誌。10%超えでも4誌。プラス領域の雑誌は皆無。相当キツイ状況。

数少ない現状維持の3誌のうち、「別冊マーガレット」は直近発売号でちょっとした動きを見せている。表紙を見ればお分かりの通り、どう見てもパッと見では女性向け雑誌には見えないビジュアルが展開されている。これは同誌で連載中の「俺物語!!」の主人公、剛田 猛男(ごうだ たけお)を描いたもの。少女コミック誌の中では異質なビジュアル、それでいて内容としてはオーソドックスで筋が通るストーリーに多くの読者が心を奪われ、同誌の主力漫画となりつつあると共に、少女コミックの新たな可能性を見出した作品としても注目を集めている。

↑ 別冊マーガレットの部数推移(2013年10-12月期まで)
↑ 別冊マーガレットの部数推移(2013年10-12月期まで)

続いて女性向けコミック。こちらは前期比グラフ同様、異様な形状を示している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2013年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2013年10-12月期、前年同期比)

「ARIA」の部数動向を記した折れ線グラフを読み直せばお分かりの通り、同誌はこれまでほぼ横ばいの部数推移を示していた。それだけに、直近2四半期の「巨人」特需の効果は絶大で、年ベースでの動きでも5倍近い上昇ぶりを示している。同ジャンルはこの「ARIA」以外プラス領域にある雑誌は皆無で、10%超えのマイナス幅を有する雑誌も2誌確認できるなど、思わしくない状況なのだが、「ARIA」の動きが他のすべてを吹き飛ばした形となっている。まさに巨人が周辺界隈を踏みつぶしている感すらある。



少女向け・女性向けコミック誌は概して軟調が続いており、前四半期の動きでは「ARIA」以外は「なかよし」の付録攻勢がポジティブな面では目に留まる程度だった。今四半期では「ARIA」がすべての話題をかっさらってしまう形となった。前四半期の記事の締めくくりで「連載による底上げのため、中期的な上昇・状況の継続が期待できる」とコメントしたが、ここまでの上昇ぶりは正直想定していなかった。次回ではさらなる上昇を見せてくれるのだろうか。

他方、「俺物語!!」のように今後の発展に期待がかかる動きも見受けられる。「ARIA」における「進撃の巨人」もそうだが、雑誌ジャンル、他の作品の系統との違和感のハードルをクリアする工夫、努力を行うことで、雑誌そのものに新しい活力を注ぎ込み、市場を広げ、成果を見出せる可能性が見いだせる。

定番だけではつまらない、斬新さだけでは落ち着きがない。双方を上手く融合させ、固定層・新規参入層双方が楽しめる雑誌を創ることで、部数も維持、躍進が期待できるのではないだろうか。

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