4マスもネットも前月からはやや後退(経産省広告売上推移:2014年2月発表分)

2014/02/17 11:30

経済産業省は2014年2月10日に「特定サービス産業動態統計調査」に関する2013年12月分の速報データ(確定値に先立ち公開される値)を、同省公式サイト内で公開した。その内容によれば2013年12月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス5.0%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事で精査対象となる業務種類5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「新聞」がマイナス14.8%、「雑誌」がマイナス8.8%を示し、さらに「ラジオ」もマイナス8.6%と大幅な下げ幅を記録している(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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ネットは9.7%で上げ幅縮小、テレビはかろうじてプラス


「特定サービス産業動態統計調査」に関連する解説は、それらの精査記事の一覧【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2013年11月-2013年12月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2013年11月-2013年12月)

前月分からの動きが確認しやすいように、前回記事分(2013年11月分)データ(速報値の後に発表される確定値に修正済み)と並列してグラフ化している。今回月では従来型4マスはマイナス値にせよプラス値にせよ、いずれも前回月からは悪化した値なのが特徴。さらに「インターネット広告」も前年同月比でプラスに違いないものの、上げ幅を縮小している。それでも今回取り上げている5項目では最大の伸び率、9.7%の値をはじき出している。

該当月、つまり2013年12月における大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【4マス軟調、ネットと従来型は堅調(電通・博報堂売上:2013年12月分)】で類似項目の動向を確認すると、従来型4マスではテレビがかろうじてプラス(電通のみ)でその他は軟調、インターネットはプラスの動きを示しており、今回の経産省・特定サービス産業動態統計調査の動きとほぼ一致している。同じ業界の動向を記しているのだから、類似点が多いのが当然なのだが。

ちなみに4マス+ネット以外の一般広告の動向は次の通りとなる。

↑ 4屋外広告などの広告費・前年同月比(2013年12月)
↑ 4屋外広告などの広告費・前年同月比(2013年12月)

屋外広告は比較的健闘しており、今回月は特に海外広告とSP・PR・催事企画の伸びが著しい。後者は金額的にも大きなもので、この伸びが今回月の広告費全体の底上げをしている(4マスもインターネットも前回月と比べて上げ幅縮小・下げ幅を拡大しているにも関わらず、売上高合計は前回月から上げ幅を拡大しているのは、これら一般広告の伸びによるもの)。

他方、折込・ダイレクトメールと海外広告の軟調さは相変わらず。過去データをさかのぼると、従来型広告のうちもっとも不振な状態にあるのがこの折込・ダイレクトメールで、2013年では前年同月比でプラスを示したのは1か月分でしかなく、残りの11か月はすべてマイナス。インターネットにおかぶを奪われつつあるということなのだろうか。

ネット大幅に伸びて新聞を突き放す


今回も該当月(2013年12月分)における、各区分の具体的売上高のグラフ化を行う。広告代理店業務を営む日本の企業は、最大手の電通と博報堂のみだけでは無く、そして各広告種類の区分は業界内で統一されていない。そのため当サイトで月次更新している【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上での完全一致性は無い。金額に差異が生じても何ら不思議ではない。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2013年12月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2013年12月、億円)

金額面では「インターネット広告」が「新聞」を超える月が継続中であることは【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる】で解説した通り。今回月で2011年3月以降21か月目に突入している。後述するグラフで分かる通り、今回月はインターネット広告がイレギュラー的な勢いで上昇したため、新聞との差は200億円以上開く形となった。

その動きからも分かる通り、「インターネット広告」は他メディアと比べると起伏が大きい。これは広告出稿・展開上の機動性・柔軟性の高さを示している。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2013年12月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2013年12月)

グラフを見れば分かるように、年に1度か2度、大きく上振れする時期が生じるのがインターネット広告の特徴でもある。昨今では2013年3月を最後に平凡な伸びに留まっていたが、今回月大きな値を示し、久々の大きな山が形成されることとなった。

次のグラフは今件記事で対象としている5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含む)に関して、公開されているデータの中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを図にしている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2013年12月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2013年12月分まで)

「雑誌」(黄色)と「新聞」(ピンク)の低迷ぶりが1年2年の短期的なものではなく、中期的なものであることが分かる。両者は従来型4マス、そして紙媒体とという共通点があることから、この2要素がメディアの変革期である昨今において、留意しなければならない点で可能性が高い。

グラフ描写期間中には金融危機(2007年晩夏)に始まり、リーマンショック(2008年秋)が続き、そして東日本大地震・震災(2011年春)と、経済分野にも大きな影響を与えた3事象が相次ぎ発生している。人々の余裕が無くなり、懐事情が厳しくなり、自粛ムードもただようことから、広告費にも多大な影響が生じてしまう。特にリーマンショック後の下げはどの業種でも避けることができず、いかに大きな影響だったかが分かる。

その一方、各種売り上げ減となる要素が生じた期間からの回復ぶりの違いで、個々の業種の適応性、柔軟性、そしてマイナスの影響そのものの違いが見て取れる。震災以降は「新聞」「ラジオ」「雑誌」の3業種はツライ状況が継続中であり、環境の変化に対し、立ち遅れているように見えてならない。



今年に入ってからは海外要因では中国とアメリカの景気後退懸念と、それを起因とする新興国の通貨不安、欧州一部の国に対する大国の駆け引きを起因とした政情不安定化などを受け、株式市場は低迷、さらには後退の気配を見せている。また国内要因でも4月からの消費税率引き上げに伴い、消費マインドの冷え込みが予想される(先行発表された景気ウォッチャー調査でも、4月以降の消費低迷を予見する動きが散在している)。

景気低迷感があるからこそ、広告で喝を入れる、ネガティブなマインドを吹き飛ばすという考え方もある。だが、広告によって動機づけられる消費行動の基準値が従来より下げられてしまうことから、広告そのものの効用判定に関して、クライアント側がより厳しい判断を下す可能性も高い。当然広告出稿も及び腰になる。

他方、スマートフォンやタブレット機などに代表されるデジタルデバイスの普及率は今後も一定のペースで上昇し続け、市場そのものだけでなく「所有しているとの前提で広告展開を考える」場面が増えてくる。海外で展開されている切り口が、日本でも行われるようになり、それに従い関連する分野の広告費は上乗せされていく。またトレインチャンネルのような新世代の媒体も、少しずつ確実に市場を広げていく。

今記事で精査対象にある5業種のうち、委縮状態にある「新聞」「雑誌」「ラジオ」においては、他のメディアとの共同展開や融合による新しい発想に基づいたアピールの仕方、特に新メディアとの連動性に関して早急に対処する必要があるに違いない。


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【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(下)…ネット以外動向概況編】
【5年ぶりに前年比プラスの3.2%・総額5兆8913億円…過去20余年の媒体別広告費動向(2013年発表)】

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