スペイン若年層失業率57.7%に上昇…EU失業率動向(2013年11月分)

2014/01/10 08:30

EU(欧州連合)内外の統計情報を集め、各種統計値を算出・公開することで各国の政策を支援する、欧州委員会の統計担当部局・EU統計局(Eurostat)は2014年1月8日付で、EU加盟国を中心とした諸国の失業率データに関する最新値となる2013年11月分を公開、分析レポートも合わせて発表した。今回はその値を用い、EU諸国を中心とした全体失業率、そして若年層の失業率の観点から、EU地域における各種状況の精査を行うことにする。

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キプロスは17.3%へと悪化、目立った動きは無し


データ取得元の詳細、グラフや文中に登場するEA17・EU28の構成国、状況の変化に関しては一覧ページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上に解説済み。必要な場合はそちらを参照してほしい。

「ILO基準における」2013年11月時点の失業率は次の通り。EU28か国では10.9%・EA17か国では12.1%を記録している。先月分(速報値から修正済み)と比べると双方とも状況に変化は無い。2013年9月分でEA17か国は過去最悪の値となる12.2%を記録したが、それとほぼ変わらない値が続いている。0.1%ポイントは誤差の範囲ともいえ、高止まり感は否めない。

このグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータがEurostat上で未収録だった場合、掲載時点で公開されている最新月分のデータを代用している。例えばギリシャは今回更新時点では2013年9月分までの値(27.4%)が公開されているため(10月・11月分はデータには無い)、ここでは9月分を11月分として収録・掲載している。

↑ 2013年11月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年11月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャ。スペインはそれに0.7%ポイントの僅差をつけての2位。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2013年9月時点の値を適用させているので、公平を期するために同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは26.6%(9月分)。やはりギリシャの27.4%の方が上となる。とはいえ両国とも他国と比べて抜きんでていることに違いは無い。若年層だけでなく中堅・壮齢層まで合わせ、大人の4人に1人以上は失業状態にあるという状況は、正常とは言い難い。

ここ数か月来そのギリシャとの関係の深さゆえに、大きなあおりを受けているとして注目しているキプロス。今月は失業率は横ばいを維持。一方でほぼ同じようなタイミングで(ギリシャとは、そしてキプロスともさほど関係は無い)アイルランドは雇用市場の上で状況の改善が見られる。両者を並べると、その相対する動き、違いが良くわかる。
↑ 2012年6月-2013年11月でのキプロス/アイルランドの失業率(季節調整済)
↑ 2012年6月-2013年11月でのキプロス/アイルランドの失業率(季節調整済)

欧州全体としては高止まりにある失業率だが、もちろんすべての国が一様に高いまま維持しているわけでは無く、上記の2か国のように、二極化の傾向が次第に明確化しつつある。失業率上位国にあるギリシャ、スペインはもちろんだが、クロアチアやキプロス、ポルトガルなどは経済・財政問題にも困難な状況にあり、雇用市場の二極化は経済状態の二極化をも表している。

また経済的にも規模が大きい国の中では、フランスの値が高めなのが目に留まる。同国ではこの数年、失業率は大きな上昇をしていないが、同時に改善も見られず、高値のままで停滞している。昨今の景気動向においても「欧州全体の景気は上向きだが、フランスは後れを取っている」とニュースでコメントされるほどだ。


↑ 欧州の景気が改善する兆しを見せる中、後れを取っていると伝えられるフランスの状況(ロイター)

さて今回も該当月の前月(2013年10月)の値との差異を独自に算出し、その結果をグラフ化する。Eurostatでは最新値を発表した際に過去データも逐次修正しているが、これは各国がEuroStatに提出するデータそのものが変更されるからに他ならない。前月分もそれら修正された値を反映した上で、算出を実施している。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年10月→2013年11月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年10月→2013年11月)(またはデータ最新一か月前→最新)

経験則的上、国内人口の少ない国では統計値が変化しやすい。また元々国の特性(統計の仕方、取り扱い方)から誤差が生じやすい、頻繁に修正を、数か月分もさかのぼって行う国もある。そこで前月比でプラスマイナス0.5%ポイント以内は「誤差」と見なし、留意対象からは外している。

その観点で精査すると、今回月ではハンガリーが状況の改善をしているように見える。ここ数か月の同国の状況を確認すると、格付けの据置と見通しの安定化が伝えられると共に、債務の削減や環境整備が実現すれば、格上げもありうるとの話が伝えられている。可能性は高くはないものの、改善の兆しは見えているということか。

スペインがじわじわ悪化中…若年層失業率


失業問題の中でも、特に先進諸国特有の動きとして注目されているのが、雇用上の立場では弱い立場にある若年層の失業率問題。直近の2013年11月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で24.2%・EU28か国でも23.6%を記録しており、4人に1人近くが失業状態にある。25歳未満の就労可能な若年層が4人いるグループでは、そのうち1人が失業している計算(ILO基準であることから、病気やあきらめ感などから意図的に職を求めていない人はカウントしていないことに注意)。

全体の失業率上位ではお馴染みの国々が、若年層失業率でも上位に並ぶ。、スペインの57.7%、ギリシャの54.8%(2013年9月)を筆頭に、クロアチア、イタリア、キプロス(ここまでが4割超え)など、経済的に不安定な国の高さが目に留まる。

↑ 2013年11月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)
↑ 2013年11月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)

↑ 2013年11月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)
↑ 2013年11月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(11月データが無い国は直近分)

上記にある通りプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差基準とすると、今回月ではスウェーデン・リトアニアの悪化、ギリシャ・ハンガリー・ノルウェーの改善が確認できる。スウェーデンは前回月大幅な改善が確認されており、今回はその反動が多分に要素として考えられる。ただし同国では経済状態の悪化を受け、これまでの寛容的だった移民政策に対する国内での反発が強まっており、混乱が起きているのも事実である。

ここ数か月チェックを入れた3か国、ハンガリー・スウェーデン・リトアニアの動きだが、ハンガリーは引き続き堅調に状況の改善が見られるものの、リトアニアは夏以降トレンドが悪化の方向に転じた雰囲気を有しており、またスウェーデンも上記の説明の通り経済状況の悪化を受けてか、大幅な失業率の増加が確認されている。経済の不安定化、雇用市場の悪化はまず若年層に影響が及ぶことから、今回の動きには留意が必要だ。

↑ 2012年1月-2013年11月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ハンガリー、スウェーデン、リトアニア)
↑ 2012年1月-2013年11月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ハンガリー、、スウェーデン、リトアニア)

「状況の改善」にあるハンガリーはようやく25%のラインを切った。しかしまだ「若者の4人に1人程度は失業中」という状況に違いは無い。



欧州の債務問題は、この一、二年の間に「財布のひもを締め続ける」から「収入を増やしながら無駄遣いを抑える」に方針を転換しつつある(【IMFが性急な歳出削減警告、財政健全化への具体策示さず(ロイター、2013年9月18日付)】)。IMFや欧州委員会、構成各国が債務問題の最大の山場、危機を脱したとの認識を持ち、その経験から過度の緊縮政策が「成長圧縮」「投資敬遠」「経済成長鈍化、縮小」の流れで悪循環を導きやすいとの結論に落ち着き、かじ取りを変えた次第である。

数か月前に「失業率は二極化しつつある云々」とコメントしたが、今回のデータを見る限りではその状況に変わりはないものの、やや「悪化」サイドの数が増えてきた雰囲気が見え隠れしている。スペインのように言葉通り「どん底」から少しずつ「経済状態」は改善の兆しを見せているものの、全体失業率は横ばい・若年失業率は漸増の動きを示し(つまり中堅層以降の失業率は改善している)、若年層により一層の負荷がかかっている状態が見える国もある。

上の3か国グラフでも触れているが、経済関連の状況が悪化する、あるいは切り詰めを行う場合、まず最初に弱者、大抵は若年層があおりを受けることになる。国全体の立ち直りと共に、これからの国を支える若年層への配慮も欠かさないようにしてほしいものだ。


■関連記事:
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【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる(2012年版)】

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