鍋膳攻勢で吉野家大幅プラスに…牛丼御三家売上:2013年12月分

2014/01/07 08:30

吉野家ホールディングスは2014年1月6日、同社子会社の牛丼チェーン店吉野家における2013年12月の売上高、客単価などの営業成績を発表した。その発表内容によれば既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス16.0%となった。牛丼御三家と呼ばれる主力牛丼企業のうち松屋フーズが運営する牛飯・カレー・定食店「松屋」の同年12月における売上前年同月比はマイナス0.1%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス4.7%との値が発表されている(いずれも前年同月・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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吉野家が再び大きく跳ねる


↑ 牛丼御三家2013年12月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2013年12月営業成績(既存店)(前年同月比)

牛丼御三家の前年同月比における、客数・客単価・売上高の動向は上記のグラフの通り。吉野家に注目した上で、昨年同月の記事を基に営業成績を比較すると、一年前における客単価前年同月比はプラス2.5%。今月はそこから転じて1.7%のマイナスを示している。御三家の中では唯一客単価前年同月比でがマイナス値を示しているが、主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたのが原因。この値下げによって吉野家自身の客単価の引き下げと共に、基本メニューの牛丼価格が3社横並びとなったことにより、他の2社における「牛丼価格のプレミアム効果」が無くなる事態となった。また客単価の下げ幅そのものも昨月のマイナス7.1%と比べると大幅に戻しているが、これは高単価商品の「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の展開によるところが大きい。

牛すき鍋膳その「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」だが、【これはオドロキ、目の前のコンロで熱して食べる吉野家「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」発売へ】でも解説している通り、2013年12月5日から発売を開始した、お客の目の前で加熱するという新しいタイプの商品。単価は高め(580円)だが、その新鮮味や食するスタイルが大いに受け、商品展開も上々。客単価の下落を最小限に留めると共に、客数を大いに押し上げる効果をももたらすことになった(客数増加については一部店舗で実施中の「スタンプキャンペーン」も一因の可能性はあるが、これは去年10月からの展開であること、店舗数が限定されていることから、大きな要因には成り得ない)。また、前々年比を算出しても客数はプラス値を示しており、客単価はほとんどプラスマイナスゼロに近いところから、今回の客数の上昇ぶりが「前年同月の低い値によって生じた反動」ではないことが確認できる。

↑ 牛丼御三家2013年12月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2013年12月営業成績(既存店)(前々年同月比)

松屋の今回月(12月)の動向を確認すると、【あたらしい豚バラの食べ方?! 「味噌漬け豚バラ焼定食」松屋から発売】【ジューシーな中落ちカルビゴロゴロ「中落ちカルビ定食」松屋で発売】などで紹介したように、単価の高めな新商品、さらには提案型商品の展開を相次いで行い、集客と客単価の引き上げを模索している。これを受けて客単価はプラスを維持できたものの、客入りは今一つ。しかしここ数か月続いていた客足の引きを最小限に留めることには成功し、売上もほぼトントンに抑えることができた。

すき家では2013年11月に実施した牛丼の期間限定値下げによって客数増加という具体的成果が確認できたからか、同年12月にも【クリスマスはチキンよりビーフ!? すき家が40円の牛丼値下げ、期間限定で】にある通り、さらにインパクトの大きな大幅値下げを期間限定ながらも敢行。そして【野菜がミソ! すき家から「コクみそ野菜牛丼」など登場】【野菜をがっつり食べませう・塩だれ野菜牛丼など、すき家から発売】など野菜系の新商品を続々投入することで、あわよくば値下げした牛丼とのリンクをも模索。しかし結果としては客数は先月から転じてマイナスとなり、これが足を引っ張ることで売上高もマイナスを示すこととなった。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2013年12月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2013年12月)

前年同月、そして前々年同月の売上グラフを見れば分かる通り、松屋・すき家での客数減少、そしてそれを主要因とする売上減退は、中期的な症状として確認できる。上記にある通りすき家は11月の期間限定牛丼値下げにより客足が戻り、売り上げもやや復調。しかし今回月で再び下落し、売上もダウン。むしろこの数か月では松屋が少しずつだが確実に、状況を回復しつつあるように見える。

牛丼値下げの次は鍋膳で攻勢する吉野家


廉価系ファストフード店全般において、この二、三年の間で客離れの深刻化が問題視されている。牛丼チェーン店市場でもその動きは顕著で、各社とも解決策を模索している最中である。

ところが吉野家は先月から続き9か月連続して来店者数をプラス化している。これは上記にある通り、2013年4月に行った主力商品の牛丼値下げの効果によるもの。その効力もやや薄れた感はあったものの、直近数か月ではむしろ少しずつ持ち直しを見せ、さらに今回月では再び大きく跳ね上がる形となった。

この跳ね上がりは前年同月からの反動では無く、他に原因も見つからないことから、従来客単価の引き上げと引き換えに客回転率の低下(≒客数の減少)が予想された、12月5日より展開している高単価商品「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」によるものと考えられる。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2013年12月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2013年12月)

客数の減少を覚悟してでも客単価の引上げを模索して投入された「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」が、奇しくも客数増加をもたらすとは、注目すべき動きと言える。吉野家側の直接の思惑である「客単価引上げ」以外にも有する特徴、具体的にはリピーターの増加、「ゆっくりと食せる雰囲気の提供」、そして寒い時期には相性がすこぶる良い鍋物の投入、さらには「一人鍋需要」などの要素が大きく影響したのだろう。どこまで吉野家が見据えていたかは不明だが、数字を見る限り、成功と評すべき結果といえる。


↑ 一般利用者による「牛すき鍋膳」の試食レビュー。他メニューと比べ「牛すき鍋膳」の試食動画では、このようにゆったりとした、おごそかな雰囲気のものが多い。【直接リンクはこちら:牛すき鍋膳 吉野家】

吉野家の「鍋膳」シリーズによる好調さは、少なくとも寒さで鍋物が好まれる冬の間、つまり2月分位までは続くものと考えられる。その後同社で「鍋膳」がどのように扱われるか(冬季限定となるのか、常時メニュー化するのか)は不明だが、今回の手法で成果が出た以上、似たような発想、切り口による新メニューの展開は十分あり得る。例えば夏場には冷やし系アイテムの展開も想像できよう。

2011年3月の東日本大地震・震災を機に加速化する、消費者の中食への傾倒。健康志向の増大とたばこ値上げを遠因とする、外食産業における禁煙化への流れ。そしてそれらと密接に絡み合う「家族の団らんの場」の提供という新たな方向性。さらには「朝食需要の増加」や「一人鍋に代表される『個食』のスタイルにおける新需要」。外食産業を取り巻く環境や需給は、めまぐるしい動きを見せている。それらの動きに対し、いかに対応していくか、波に乗るか。牛丼チェーン店各社の戦略に注目したい。

特に「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の(少なくともスタートダッシュにおける)成功は、他の二社にも少なからぬ影響を与えるに違いない。


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