朝食メニュー・値下げ・そして「はやい」から「ごゆっくり」に…今年一年の牛丼御三家動向を振り返ってみる

2013/12/16 20:00

年の瀬も押し迫り、色々と忙しさを増す昨今。今年は牛丼チェーン業界でもいくつかの大きな動きがあった。今回は牛丼御三家と呼ばれる大手三社(吉野家、松屋、すき家)の今年一年の動向を、各種データと注目すべき「動き」を絡めてまとめていくことにする。

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客単価、客数、売上…各データを再確認


まずは公開データの範囲で業績を推し量れる要素となる、客単価・客数・売上について、前年同月比のグラフを生成する。現時点では12月はまだ終了していないので、当然11月までが対象期間となる。

↑ 牛丼御三家客単価推移(既存店)(前年同月比)(2013年1月-2013年11月)
↑ 牛丼御三家客単価推移(既存店)(前年同月比)(2013年1月-2013年11月)

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2013年1月-2013年11月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2013年1月-2013年11月)

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2013年1月-2013年11月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2013年1月-2013年11月)

以前から廉価競争の激化で商品・市場価値そのものをすり減らしつつあった牛丼業界。2011年の震災を経て生じた、食に関する消費者の消費性向の変化、具体的には「家族の団らんを覚える食生活への回帰」「スローフードの促進」とそれに伴う「外食から中食への動き」を起因とする、ファストフード離れの動きに巻き込まれる形となった。付加価値の高い新商品を逐次展開することで客単価は維持したものの、客数は減退を続け、売上も思わしくない状況が続いている。

一方、御三家の中で唯一、メインメニューとなる牛丼価格が他社(280円)と比べて高め(380円)に設定されていた吉野家も、2013年4月18日から280円に値下げを断行。これで御三家すべてが牛丼価格において横並び状態となった(【吉野家が牛丼を280円に値下げ・牛丼御三家横並び状態に】)。

この値下げ効果は絶大で、当然客単価は減少したものの、客数は大幅増を計上。値上げ以降前年同月比でプラスを続けている。他の2社が客入りの低迷であえいでいる中で、大きな飛躍である。結果として売上も吉野家のみ(9月がマイナス化したが)プラス圏の領域を維持している。

なお11月ですき家が約2年ぶりに客数で前年同月比がプラスに転じ、売上も大幅に回復している。これは【30円の牛丼値下げ・すき家が「秋の新米250円セール」期間限定実施】で紹介した値下げキャンペーンによるところが大きい。これに気を良くしたのか、同社では12月にも【クリスマスはチキンよりビーフ!? すき家が40円の牛丼値下げ、期間限定で】で伝えている通り、同社史上最安値となる牛丼価格の240円への期間限定値下げを行う予定。

各データを見る限り、今年は「消費者の消費性向の変化で客入り悪化による不振続く」「吉野家は牛丼値下げで客入りを回復させ、売上も堅調化へ」とまとめることができる。利益の面では厳しい状態が続いているが、少なくとも客数を堅調化させ、売上に直結出来ている点は評価すべきである。

ファストフードからスローフードへ?!


震災をトリガーとして消費者の食生活性向が変化を見せ、ファストフードの需要が減退気味であることは上記で触れた通り。この動きに対応するため、各社ともさまざまな動きを見せている。

まず一つ目は「朝食層の取り込み」。昨年すき家が開始した200円の「たまごかけごはん朝食」(【すき家、200円での朝食メニュー「たまごかけごはん朝食」を発売開始】)が象徴的だが、朝食の利用者を増やすことで、店舗の稼動率を高めると共に、利用客のリピーター化をもくろむ動きがある。吉野家でもこの9月から「朝定食」の販売時間を開始時間・終了時間共に1時間延長し、「朝4時から11時まで」にしており、朝食利用者の取り込みを積極化している。この動きは同じファストフードでのハンバーガーチェーン店でも起きており、これまで軽視されてきた朝食への注力化が確認できる。


↑ 吉野家の朝定食一覧

そしてもう一つの動きは「ファストフードからスローフードへ」。ゆっくりと食事を出来る、さらにファミリーレストランのように家族そろって食事が取れる環境を創る動きが見受けられる。象徴的なのが、吉野家で相次いで展開されている新商品。【これはナルホド女性向け、牛丼小盛とサラダのセット「コモサラ」が吉野家で11月1日販売開始】で紹介した、女性向けと称する「コモサラセット」もこれまでの牛丼チェーン店、特に吉野家では見られなかったタイプの商品といえる。

さらに12月5日から発売を開始した「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」に至っては、客の回転率を落とす覚悟で、「ゆっくりと楽しめる食事」を提供している。同社のモットーである「うまい・やすい・はやい」をわざわざ「うまい・やすい・ごゆっくり」と言い直してアピールしている点でも、新たな戦略商品であること、その戦略が「スローフードへの注力」であることがうかがえる。

「カウンターでは家族そろっての食事はし難いのでは?」との話もあるが、吉野家では競合他社同様、大きくスペースを取る形でのテーブル席を設けたレイアウトによる新タイプの店舗を逐次展開しており、ゆっくりと食事をする層、ファミリー層をも取り込む姿勢を見せ、それを体現化するための施策を続けていたことが分かる(参考:「ようこそ。あたらしい吉野家へ。」)。



もちろん従来の「うまい・やすい・はやい」的なファストフードとしての牛丼の需要が無くなることは無いし、商品が消えることも有りえない。しかし消費性向の変化でその類の外食に対する需要が減少し、そのために客数も落ち込んでいる事実は否定のしようがない。

そのような状況下で、今年吉野家はメインメニューの牛丼を値下げすることでファストフードとしての利用者の上乗せを図り、その一方で朝食派・女性層の取り込み、さらにはスローフード的な切り口を見せ、ファミリー層などの誘引を模索している。少なくともこれらの施策は同社の業績に変化を生じさせつつある。

どのような方向性を示すかは各社の方針に寄るが、来年は各社とも現状を的確に把握した上で、現状と比べてダイナミックな戦略転換が求められる。今年吉野家が手掛けたものですら、生ぬるく思えるような、そしてもちろん正しい方角を目指したかじ取りが無ければ、来年は今年以上の苦境が待ち受けていることだろう。


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【吉野家の朝定食、販売時間を前後1時間延長して朝4時から11時に】

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