ネットの強さ、電通の新聞・テレビの堅調さは継続(電通・博報堂売上:2013年11月分)

2013/12/11 11:30

博報堂DYホールディングスは2013年12月9日に、同社グループ主要3社にあたる博報堂、大広、読売広告社それぞれの2013年11月における売上高速報を公開した。また電通ではそれに先行する同年12月6日に単体売上高を発表している。これで日本国内の二大広告代理店の2013年11月次の売上データが出揃った。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比を抽出の上、いくつかの指標を独自計算して各種グラフを生成し、それぞれの広告売上動向、さらには広告業界全体の動きの精査を行っていく。

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両社ともネット強し、4マスは電通のテレビと新聞が堅調


データ取得元の詳細情報、各項目に関する算出上の注意事項は、記事集約ページの【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で解説済み。必要な場合はそちらにて確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年11月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年11月分種目別売上高前年同月比

先の震災での混乱を受け、消費者の消費性向は大きく落ち込み、広告業界にも影響が生じた。過去のデータを参照してほしいが、震災後には大きなセールスの減退を示している。これは特に派手な宣伝が敬遠されたのが痛手となっている。しかし時間の経過と共に減少ぶりも鎮静化し、現在では(後述するが金額はともかく)広告種類別のパワーバランスをはじめとした状況的には、震災以前に示していた業界内のすう勢を踏襲しつつある。

具体的な動きを挙げるとすれば、「従来型メディアの4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の影響力低下」「インターネットの伸長」の2点。一方、高齢化社会の加速化、そして震災の影響を受けて生じた新しい社会情勢により、「テレビの復調」「従来型広告の復権」など、震災前には目立たなかった動きが顕著化している。

今回の11月分を確認すると、まずはインターネット広告の好調さが目に留まる。特に博報堂は前年同月比で4割強の伸びを示している。昨年同月における同社同項目の前年同月比はプラス3.8%だったため、「前年同月で大きく下げたのでその反動」という動きでは無く、純粋な上昇に他ならない。何かイレギュラー的な案件によるものと考えられるが、大きな動きには違いない。

大きな動きといえば、電通の新聞、テレビも大きなプラスを示している。両項目とも前年同月ではマイナス(それぞれマイナス8.4%、マイナス9.7%)であったことが確認できるので、その反動によるところが大きいと考えられる。しかし2年前同月比を試算すると、新聞はプラス9.3%、テレビはマイナス1.3%となり、テレビは反動で説明が付くが、新聞は反動以上の伸びであることが分かる。11月案件で電通に大きな新聞周りの取引があったものと思われるが、公表値だけでは具体的内容までは分からない。

一般広告は両社とも高安まちまち。特定項目で高い値を示しているというわけでは無く、バラバラな動きが見られる。強いて言えばクリエーティブが双方ともプラスということ位。

取りまとめると「4マス軟調だが電通は新聞が強め。ネットは堅調、一般広告は特筆すべき動きなし」という形になるだろう。

電通の総額推移で広告業界の回復ぶりをチェック


次のグラフは電通の各年11月の広告売上総額推移を抽出し、その動向を折れ線グラフにしたもの。同じ月の推移を確認することで、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じる)に惑わされることなく、純粋に年ベースでのすう勢を把握できる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年11月、億円)(-2013年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年11月、億円)(-2013年)

電通の各年11月における総額動向を確認すると、2007年晩夏に始まる金融危機の影響を受け、2008年以降は大きく広告売上が落ち込んだ様子が良くわかる。そしてリーマンショックで谷を形成し、それ以降はやや持ち直しを見せつつあったものの、2011年3月の震災で再び頭を押さえられて下落。2013年にようやく再び回復基調を見せるという動きが把握できる。そして回復を示しつつある2013年11月の時点でも、金融危機ぼっ発以前の水準までには達しておらず、回復がまだ道半ばであることも理解できる。

この動きは広告売上全体におけるものだが、その売り上げを構成する要素は金融危機以前と現在とでは大きな変化が生じている。上記に挙げた通り震災以降はテレビと一般広告の伸びが顕著なのと共に、中期的な流れとしてインターネットがメディアとしての認知度を高め普及を進めており、当然インターネット広告の額も積み増されている。それぞれの項目のシェアが増え、それ以外が減少していくのは自然の成り行き。年ベースでは【媒体別金額と前年比、経年変化動向…広告費動向を多方面からグラフ化してみる(2013年発表)】などにある通りだが、少しずつ新聞や雑誌、ラジオなどのシェアが減少しているのが現状である。

なお今記事の最上位にある項目別の前年同月比を示したグラフだが、電通と博報堂それぞれの項目の比率が同じでも、それは各企業内での比較であり、両社の金額が同じわけでは無いことに注意してほしい。

下記に金額面での具体例をいくつかまとめてグラフ化しておく。個々項目では電通の方が額面は大きい。そして項目別では伸び率著しいインターネット分野の市場規模は、従来4マスの最大勢力であるテレビには及ばない。比率と金額は別物である。

↑ 電通・博報堂DYHDの2013年11月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2013年11月における部門別売上高(億円、一部部門)

特に「その他」部門では電通・博報堂間で10倍以上もの差がある。区分内容に違いがあるとはいえ、許容範囲、包括力の違いが改めて認識できる。



言葉通り「切羽詰まった」震災直後の2011年、原発停止などで電力需給関係ではむしろ2011年より悪化した2012年と比べ、今年は電力方面ではまだマシな状況にある。しかし【北海道のみ6%・他は数字目標無しの節電要請…2013年度冬季の節電要請内容発表】でも解説している通り、エネルギー政策レベル、燃料確保、そして安定供給の面ではリスクはむしろ上乗せされている。さらにそれと関連する形でリスクの体現化ともいえる電気料金の引き上げも、広告関連に大きな影響を与えている。デジタルサイネージをはじめとした電気を派手に使うタイプの広告が、震災以前と比べて抑え気味となっているのは、それが主要因である。その分、従来型の一般広告が活気づいているのは不幸中の幸いというべきか。

今回月は電通の新聞部門が大きな飛躍を見せたが、これは多分にイレギュラー的なもので、新聞というメディアが突然力をつけ、広告力を認められ、クライアントから広告が殺到したという話は耳にしたことがない。無論電通・博報堂両社の広告費動向が媒体のすべてを体現しているわけではないが、重要な指標になることには違いない。本文中でまとめた全体的な様相「4マスではテレビがやや復調な以外は収縮、ネットは伸び、一般は堅調」という流れは、今後も継続するに違いない。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2012年版)(下)…ネット以外動向概況編】
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