吉野家かろうじてプラス維持…牛丼御三家売上:2013年11月分

2013/12/06 14:30

吉野家ホールディングスは2013年12月5日、同社子会社の牛丼チェーン店吉野家における2013年11月の売上高や客単価などの営業成績を発表した。それによれば既存店ベースでの売上高は前年同月比でプラス1.5%となった。牛丼御三家と呼ばれる主力牛丼企業のうち松屋フーズが運営する牛飯・カレー・定食店「松屋」の同年11月における売上前年同月比はマイナス1.3%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス0.6%との値が発表されている(いずれも前年同月・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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吉野家がかろうじて売上高プラスに


↑ 牛丼御三家2013年11月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2013年11月営業成績(既存店)(前年同月比)

牛丼御三家の前年同月比における、客数・客単価・売上高の動向は上記のグラフの通り。吉野家に注目した上で、昨年同月の記事を基に営業成績を比較すると、一年前における客単価前年比はプラス10.8%。今月はそこから転じて7.1%のマイナスを示している。御三家の中では客単価の下落が継続しているが、これは主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたのが原因。この値下げは吉野家自身の客単価の引き下げだけでなく、基本メニューの牛丼価格が3社横並びとなったことにより、他の2社の商品戦略にも大きな影響を与えている。

新・焼鳥つくね丼客単価の下落は大きなマイナス要因だが、その分値下げによる集客効果もしっかりと表れている。今回月では客数は前年同月比で9.3%と大きなプラス。少なくとも売上高には多大な貢献をもたらしている。また11月からは【これはナルホド女性向け、牛丼小盛とサラダのセット「コモサラ」が吉野家で11月1日販売開始】にある通り、女性層の取り組みを模索すべくオシャレ感をアピールした新メニュー展開を行っているが、これも幾分はプラスに働いたものと思われる。

↑ 牛丼御三家2013年11月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2013年11月営業成績(既存店)(前々年同月比)

松屋の今回月(11月)の動向を確認すると、【牛めしと肉みそ茄子の合わせ技「肉味噌茄子コンボ牛めし」松屋で発売】で紹介した「肉味噌茄子コンボ牛めし」や「豆腐キムチチゲ」のように、大衆食堂をイメージさせる高単価なメニューを投入。これが功を奏したのか、客単価では唯一前年同月比でプラス。しかし客数は唯一マイナスとなり、売上も三社間では最大の下げ幅を見せることとなってしまった。

すき家では先月とはうってかわって【野菜をがっつり食べませう・塩だれ野菜牛丼など、すき家から発売】のように新商品の投入や【30円の牛丼値下げ・すき家が「秋の新米250円セール」期間限定実施】のような期間限定での牛丼値下げを行うなど、積極的な集客、客単価引き上げの施策を実施。しかしながら客数の増加はかなえられたものの、客単価の引上げまでには結びつかず、売り上げはわずかながらも前年同月比でマイナスを示すこととなった。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2013年11月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2013年11月)

前年同月、そして前々年同月の売上グラフを見れば分かる通り、松屋・すき家での客数減少、そしてそれを主要因とする売上減退は、短期的、前年の大きなプラスに伴う反動的なマイナスではなく、中期的な流れである。

すき家では上記にある通り起死回生策として期間限定で、主力商品の牛丼におけるさらなる値下げを断行した。折れ線グラフで見る限り、大きな上昇が現れ、ドーピング的な効果は得られたようである。しか前々年同期比のグラフを見る限り、中期的にはスズメの涙程度の影響しか与えなかったことが分かる。

吉野家の客数増加は今なお継続中


牛丼チェーン店市場では概して客離れが起きており、最優先で解決しなければならない問題となっている。すでに松屋は20か月、客数の前年同月比マイナスを継続しており、前年同月からの反動という解説は通用しない(すき家は24か月ぶりにプラスへと転じた)。

ところが吉野家は先月から続き8か月連続して来店者数をプラス化している。これは主力商品の牛丼値下げの効果によるもので、今なおその効力が継続していると考えて良い。今月も吉野家が唯一、わずかではあるが売り上げをプラス化できたのも、この客入りの良さが主要因である。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2013年11月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2013年11月)

値下げ直後は大きな伸びを見せた吉野家の客数。直後に失速して短期的な効果に過ぎないかと思われたが、それ以降はプラス10%前後を維持しつづけている。

一方吉野家では、客単価の引上げ、さらには牛丼屋の吉野家としてのイメージそのもののアップ、具体的には家族そろって足を運び時間を過ごせるような雰囲気作り(=客数のアップと客単価の向上が狙える)を模索し、新商品の「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の投入を12月5日から開始している(【これはオドロキ、目の前のコンロで熱して食べる吉野家「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」発売へ】)。


↑ 吉野家の「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」のCM(公式)。【直接リンクはこちら:吉野家の牛すき鍋膳 新登場篇】


↑ 「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の登場を伝える報道映像(公式)。【直接リンクはこちら:吉野家の牛すき鍋膳 新登場篇】

記者会見場で吉野家の安部社長が同商品に「うまい・やすい・ごゆっくり」のコンセプトを挙げていることからも分かるように、客の回転率を犠牲にしてまで、店舗全体のイメージアップと来客層の拡大を狙っているようすがうかがえる。

客入りの軟調さは牛丼チェーン店に限ったものでは無く、他の外食店、例えばマクドナルドやモスバーガーに代表されるハンバーガーチェーン店でも変わらない。牛丼やハンバーガーのような外食産業のメインとなるファストフードは、その名の通り手早く食事ができるのがセールスポイント。それゆえに家族で団らんを楽しみながら食の時間を過ごすスタイルは想定されていない。

2011年3月の東日本大地震・震災を機に「家族のつながり」が重視され、中食が注目されるようになった。一家団らんで食卓を囲むには、コンビニやスーパーの食材を購入した中食による食事の準備が便利で素早くできる。ファミリーレストランのような業態なら店舗で団らんを演出できるが、牛丼やハンバーガーではそれも難しい。

吉野家が既存のポリシー「うまい・やすい・はやい」の定義を一部覆すような新商品を展開する、むしろしなければならない状況は、外食産業、特にファストフード全体に襲い掛かっている状況でもある。比較的優位な立場にあるファミリーレストランですら、禁煙を推し進め、さらなる「家族の団らんの場」として足を運びやすい環境整備に勤しんでいるほど。食のスタイルの情勢変化に伴う外食産業の対応は、これからもそこかしこで見られることになる。もちろん牛丼業界でも動きを示すに違いない。


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