20-30代は満足派1割のみ…年金制度への不満感、若年層ほど大きい傾向

2013/12/02 09:30

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日本生協連は2013年11月28日付で、日本の社会保障制度への意識や考え方に関する調査結果を発表した。その内容によると調査対象母集団では、現在の年金制度に満足している人は2割足らずに留まり、不満を持つ人は3/4に達していることが分かった。若年層ほど不満派は多いが、同時に「考えたことが無い」との回答者も増えている。また年金制度の改革案の一つである「支給開始年数の引上げ」に関しても、若年層ほど高い反発率を示している(【発表リリース:社会保障に関する調査を行いました】)。


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20-30代は満足派1割、70代は5割近くな現行年金制度


今調査は2013年9月にインターネット経由で20歳から79歳を対象に行われた。男女比・世代構成比は日本の年齢・性別比でウェイトバックが行われている(但し60-70代はまとめて算出。そのうち70代は出現に任せる形)。

日本の現行公的年金制度については厚生労働省の【公的年金制度の概要】や日本年金機構の【年金のことを調べる】で詳細は確認してほしいが、現時点では現役世代は全員「国民年金(1階部分)」に加入し、基礎年金の給付を受けることになっている。加えて会社員や公務員は「厚生年金」「共済年金」に加入し、基礎年金の上乗せとして所得比例年金給付を受ける(2階部分)(公的以外の年金制度には国民年金基金や確定拠出年金などがあるが、今件項目とは無関係なので言及しない)。

↑ 公的年金制度の仕組み(厚生労働省解説ページから抜粋)
↑ 公的年金制度の仕組み(厚生労働省解説ページから抜粋)

また案外認識されていない面があるが、公的年金制度は単に「高齢になると受け取れるもの」(老齢年金)だけでなく、「重度の障害を負ったとき」(障害年金)や、「一家の稼ぎ頭が亡くなったとき」(遺族年金)にも所定の給付を受けることが出来る。いわば生命保険、部分的な医療保険の役割も果たしていることになる。

現行の(公的)年金制度について、満足しているか否かを4段階+「考えたこと無し」で選んでもらった結果が次のグラフ。全体では満足派が2割足らず、不満派が3/4という結果に落ち着いている。

↑ 現在の年金制度に満足しているか
↑ 現在の年金制度に満足しているか

現行年金制度では概して「今保険料を納付している人は、今給付を受けている人よりも損をする」「今支払をしている人の支払総額は、受け取る時期になった後に受け取る総額よりも低い」と言われている。これは原則的に公的年金制度が「個人の積立」では無く、保険料の支払いが「給付金受け取り権利の確保」に過ぎず、支払われた額はそのまま今給付している人への給付金に充てられるから。そして今の日本が高齢化社会に突入しているからに他ならない。

公的年金制度は上記で説明の通り高齢に達した後の給付金以外に、保険としての役割も果たしているのだが、支払額よりも受取額の方が少なくなる可能性が高いとの話を聞かされていれば、そして今給付を受けている高齢者達が自分達よりも額面上有利な扱いを受けているとなれば、若年層が不満を覚えるのも道理ではある。一方若年層は「考えたこと無し」の回答率も高く、保険料支払いをしているはずではあるが、あまり問題意識を持っていないこともうかがえる。

もっとも有利なはずの高齢者でも、不満派の方が多い。70代ですら不満を持つ人は過半数に達している。

改革案の一つ、支給開始年数の引上げについてどう思うか


高齢化の進行で年金制度においても、財源を調整するために改革案がいくつか持ち上がっている。第3号被保険者の見直し(一定条件下で負担を求めたり給付額を減額する)や、支給開始年数の引上げが良い例である。このうち後者、支払開始年数の引き上げについて、どのような所感を持つかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ 年金制度改革案(支給開始年数の引上げ)についてどう思うか
↑ 年金制度改革案(支給開始年数の引上げ)についてどう思うか

当然のことではあるが、現在支給を受けている、あるいはその可能性が高い60-70代では賛成派が多く、それより下の世代、つまり引き上げのマイナスの影響を受ける可能性が生じる世代では賛成派は少ないものとなっている。一方、現在の年金制度への満足度の設問でも見られたが、若年層ほど「分からない」という問題意識の薄い回答者が多い。特に女性では30代までは2割が「分からない」と回答している。

年金に限らず社会保障制度に関する質問では概して、社会全体のことよりも回答者自身の立場で有利か不利かを考え、それに基づいた回答がされがちである。特に世代別の回答事例を見ると、その傾向がよく把握できる。社会保障制度について考える際には、立場の違い、特に世代間の意識の相違について配慮が必要となることを忘れてはならない。


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