欧州全体では二極化の様相、スペイン若年層失業率57.4%に…EU失業率動向(2013年10月分)

2013/12/01 15:00

EU(欧州連合)内外の統計情報を整理集約し、統計情報を公開することで各国の政策を支援する、欧州委員会の統計担当部局・EU統計局(Eurostat)は2013年11月30日、EU加盟国を中心とした諸国の失業率データについて最新値の2013年10月分を公開、分析レポートも合わせて発表した。今回はその値を用い、EU諸国を中心とした全体失業率、そして若年層の失業率の観点から、各種状況の精査を行う。欧州全体としては経済状況の改善に連れて、失業率の観点では二極化の様相が見受けられる。

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キプロスは17.0%へと悪化、状況改善の国も複数


データ取得元の詳細、グラフや文中に登場するEA17・EU28の構成国、状況の変化については一覧ページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上に解説済み。必要な場合はそちらを参照のこと。

「ILO基準における」2013年10月時点の失業率は次の通り。EU28か国では10.9%・EA17か国では12.1%を記録している。先月分(速報値から修正済み)と比べると前者は変わらず、後者は0.1%ポイント改善されている。先月分のEAでの12.2%は過去最悪の値だったが、それよりはわずかながら数字上では状況が改善されている。もっとも0.1から0.2%ポイントはしょっちゅう誤差修正で変動するので、改善・改悪という動きでは無く、「高止まり」と見た方が良い。

このグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータがEurostat上で未収録だった場合、掲載時点で公開されている最新月分のデータを代用している。例えばギリシャは今回更新時点では2013年8月分までの値(27.3%)が公開されているため(9月・10月分は無い)、ここでは8月分を10月分として収録・掲載している。

↑ 2013年10月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年10月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャ。スペインはそれに0.6%ポイントの僅差をつけての2位。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2013年8月時点の値を適用させているので、公平を期するために同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは26.6%(8月分)。やはりギリシャの27.3%の方が上となる。とはいえ両国とも他国と比べて抜きんでていることに違いは無い。

先月「ギリシャと深い関係があり、そのあおりを受けて経済、そして雇用市場が悪化を続けている」としたキプロスだが、やはり今月も失業率は悪化。一方でほぼ同じようなタイミングで(ギリシャとは関係は無いが)アイルランドは雇用市場の上で状況の改善が見られる。両者を並べると、その相対する動き、違いが良くわかる。
↑ 2012年6月-2013年10月でのキプロス/アイルランドの失業率(季節調整済)
↑ 2012年6月-2013年10月でのキプロス/アイルランドの失業率(季節調整済)

冒頭でも触れているが、欧州全体としては高止まりにある失業率も、中身を開けると一様では無く、むしろ今2国に代表されるように、二極化の様相を呈しつつあるのが分かる(アイルランドではEUからの支援を今年いっぱいで終了するなど、回復ぶりが伝えられている)。失業率上位国にあるギリシャ、スペインはもちろん、クロアチアやキプロス、ポルトガルなどは経済・財政問題にも深い傷を負っており、雇用市場の二極化は経済状態の二極化をも表していることが類推できる。

今回も該当月の前月(2013年9月)の値との差異を独自に算出し、その結果をグラフ化する。Eurostatでは冒頭で触れた通り、最新値を発表した際に過去データも逐次修正している。これは各国がEuroStatに提出するデータそのものが変更されるのが原因。前月分もその修正を反映した上で算出を実施している。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年9月→2013年10月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年9月→2013年10月)(またはデータ最新一か月前→最新)

経験則的上、国内人口の少ない国では統計値がぶれやすい。また元々国の特性から誤差が生じやすい、頻繁に修正を行う国もある。中には毎月数か月分の修正が行われる国もあるほど。そこで前月比でプラスマイナス0.5%ポイント以内は「誤差」と見なし、留意対象からは外している。

その観点で精査すると、今回月では改善・改悪共に注目すべき国は無いことになる(0.5%を超えるプラスマイナスが無い)。これは先月からの継続となる。もっとも上記のキプロスやアイルランドのように、継続的に少しずつ状況が動いている国は多く、単月の変化のみで状況の安定化を語るのは困難である。

以前高率だが一部には…若年層失業率


先進諸国・中堅国の失業問題の中でも、特に先進諸国特有の動きとして注目されているのが、雇用上の立場では弱い立場の若年層における失業率。直近の2013年10月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で24.4%・EU28か国でも23.7%を記録しており、4人に1人近くが失業状態。25歳未満の就労可能な若年層が4人集まると、そのうち1人が失業しているという状況だ(ILO基準なので、意図的に職を求めていない人はカウントしていないことに注意)。

全体の失業率上位ではお馴染みの国々が、若年層失業率でも上位に並ぶ。ギリシャの58.0%(2013年8月)、スペインの57.4%を筆頭に、クロアチア、キプロス、キプロス、イタリア(ここまでが4割超え)など、経済的に不安定な国の高さが目に留まる。

↑ 2013年10月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(10月データが無い国は直近分)
↑ 2013年10月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)

↑ 2013年10月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(10月データが無い国は直近分)
↑ 2013年10月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(10月データが無い国は直近分)

上記にある通りプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差基準とした場合、今回月ではスペイン、イタリア、エストニアの悪化、スウェーデンとノルウェー、日本の改善が確認できる。スペインは今年7月から9月期においてリセッション(景気後退)を脱し、11月には格付け会社による国債の格付けも改善され、これを受けて同国国債も堅調に推移するなど、ようやく経済の立ち直りの機運が見られる。


↑ スペインの経済回復を伝えるニュース映像(公式、ロイター)

この経済回復が本物の流れであれば、そろそろ雇用市場、特に若年層における動きも見えてくるはず。来月か再来月発表分あたりから、改善の値が出てくることに期待したい。もっとも雇用市場の構造が変化し、経済が回復しても失業率の改善にはさほど繋がらないという可能性も否定できない。

昨月「改善の兆しあり」としてチェックを入れた3か国、ハンガリー・スウェーデン・リトアニアの動きだが、ハンガリーとスウェーデンは継続して良好な方向にあるものの、リトアニアは夏以降やや悪化へ転換したようにも見受けられる。単なる一時的な反動による可能性もあるが、留意が必要。

↑ 2012年1月-2013年10月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ハンガリー、スウェーデン、リトアニア)
↑ 2012年1月-2013年10月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ハンガリー、スウェーデン、リトアニア)

とはいえ、「状況の改善」にあるハンガリーでも25%超、スウェーデンでも20%超という現状は、若年層の失業問題の深刻さを知るには十分な値に違いは無い。



欧州の債務問題は理解をしやすくするため家計に例えるとすれば、「財布のひもを締め続ける」から「収入を増やしながら無駄遣いを抑える」に方向転換しつつある(【IMFが性急な歳出削減警告、財政健全化への具体策示さず(ロイター、2013年9月18日付)】)。IMFや欧州委員会、構成各国が概して債務問題の最大の山場、危機を脱したとの認識を持つと共に、一方的な緊縮政策が「成長圧縮」「投資敬遠」「経済成長鈍化、縮小」というプロセスを繰り返し、悪循環を導きやすいとの経験則に基づいた判断といえる。

キプロスのように状況が悪化する一方の国もあれば、アイルランドのように改善への歩みを見せる国もある。国の規模の大小を問わず、失業率という観点で確認しても、欧州は二極化の様相を呈している。雇用市場がその国の経済すべてを指示しているわけではないものの、上記にある通り経済、さらには社会秩序にも連動する重要な指針の一つには違いない。今後も各国、そしてヨーロッパ全体の雇用市場の動向を、注意深く見守らねばなるまい。


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