繊維・化学・鉄鋼・機械がプラス、全体もプラスへ転じる(2013年10月分大口電力動向)

2013/11/23 10:00

電気事業連合会は2013年11月20日付で同会公式サイトにて、2013年10月分となる電力需要実績の速報を公開した。その内容によると、同年10月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で664億kWhとなり、前年同月比でプラス0.6%となった。一方、産業用の大口電力需要量は前年同月比でプラス2.3%を記録し、3か月ぶりに前年同月の実績を上回ることとなった。このプラスは紙・パルプ、窯業・土石、非鉄金属を除いた主要業種で、前年同月の実績を上回ったのが原因であるとリリースでは説明している(【電気事業連合会:電力需要実績発表ページ】)。

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多項目でプラス、鉄鋼は大きく伸びる


今調査の概要および各種用語の解説は、過去の同調査結果を集約した定期更新記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で解説が行われている。必要な場合はそちらで確認のこと。

2013年10月の大口全体としての動きは前年同月比プラス2.3%。「前年同月比」での算出結果なので季節属性(業種により商品の生産が多い季節と少ない季節が存在する)に影響を受けない数字であることから、純粋に各種工場の施設の稼働で生じる電力の消費総量が前年と比べてそれだけ増えたことになる(稼働率そのものではないことに注意)。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年9月-2013年10月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年9月-2013年10月)

前回月ではプラス圏の業種は3業種だったが、今回月は4業種と一つ増えている。また前月と比べて減少したのは紙・パルプのみで、例えば非鉄金属は前年同月ではマイナスに違いないものの、前月と比べれば下げ幅は縮小している。特に鉄鋼はこの数か月に渡り上昇を継続中で、節電対策や効率化を超え、稼働率が前年の同時期と比べて良好な状態になりつつあることが推測できる。

ちなみに次のグラフは2011年3月の震災より前、2010年度と比較した今回月の大口電力使用量。今月は10月分であることから、2010年10月時点での使用量との差異となる。稼働率動向はもちろん、それに加えて震災以降必然的に加速化した節電効果も含めた変化によるものだが、今回一番大きなプラス値を示した鉄鋼以外はすべてマイナス。この動きは先月から変わらない。昨今では稼働率の問題よりもむしろ、震災以降の節電の成果によるところ大と見て良い。

↑ 大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年10月)
↑ 大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年10月)

紙・パルプのマイナスが際立っているが、これは工場稼働率の低迷よりも、節電や自家発電などによる「みなし節電」によるところが大きい(詳しくはまとめ記事参照のこと)。

中長期的な動向の確認


上記の記事、グラフは単月、または短期間に限定した動向。そこで連続的な流れを確認するため、2007年1月以降・2010年7月(震災前年の夏期)以降の全産業別の前年同月比推移をグラフ化する。個々の値を細かく見定めることは難しいが、「俯瞰的動向」を知るのには適している。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年10月分)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年10月分)

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2010年7月分-)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2010年7月分-)

2008年秋に発生した「リーマンショック」の影響がダイナミックなまでの谷となって現れ、一目で分かるのが特徴的。一方で2010年にも大きなプラス領域の山が出来ているが、これは単に前年の下落の反動でしかなく、経済・工業の急速な成長を意味するものでは無い。また、2008年秋口の下落率と翌年の反動による2009年秋口の上昇率は同程度に見えるが、同じ率で減少、増加とした場合、結果としては2年越しでは減少に違いなく、回復が果たされていないこともうかがえる(例えば3割減の上で3割増となっても、1.0(元の値)×0.7(3割減)×1.3(3割増)=0.91<1.0となり、現状には復帰しない)。

その後は比較的安定した流れを見せていたが、2011年3月に発生した東日本大地震・震災を機会に大きく下げ、その後は押し並べてマイナス基調で推移している。震災による物理的な損害、そして各種要因での工場稼働率の低下によるもの。特に電力需給問題による節電要請や電気料金の引き上げを原因とする、「稼働率に大きな影響を与えない節電」によるところが大きい。無論その節電には膨大な初期コスト、従業員の負担増など、電力消費・稼働率以外の点でコストの上乗せが生じている。

ちなみに今回の2013年10月・全体値の「前々年」同月比(2011年10月との比較)、つまり震災後における変化はマイナス1.1%。言い換えれば、震災における物理的ダメージが大きく、電力需給に大きな懸念があった2011年当時と比較して、一般電気事業者からの大口電力使用量は1.1%減じていることになる。節電、稼働率の低下がそれぞれどの程度の割合を占めているかまでは今件発表から確認はできないものの、大口電力の使用がそれだけ減っていることになる。



毎月公表される「景気ウォッチャー調査」の具体的コメントでも確認できるが、昨今では需給に伴う工場稼働率も増加をしているようで、震災後大きく進んだ節電効果による減退分を超え、大口の電力需要量が増加する傾向にある。元々震災前から円高を主な起因とする不況下にあったのも一因だが、産業の活性化による需給増加は素直に喜ぶべきものだろう。

他方、先日発表された冬季における電力需給の節電要請内容(【北海道のみ6%・他は数字目標無しの節電要請…2013年度冬季の節電要請内容発表】)にもある通り、特殊事情下におかれた北海道電力管轄以外は数字目標を伴わない節電要請に留まり、電力需給「のみ」で考慮した場合の電力問題は正常化に近づきつつある。

しかしその状態確保のために行われる電力会社各社の金銭的負担は極めて大きく、震災以降現状でもなお、毎年兆円単位の余分な燃料コストが発生している。その負担は電力料金の値上げ、節約を社会的に強要された電力会社の安全性問題の発生、さらには各大口電力需要者への負担増とつながっている。その負担は当然、経済全体への大きなプレッシャーとして国全体にのしかかる。

製造業全般にとって安定的かつ安価な電力の供給は、水同様に生産活動の維持には欠かせない。その環境の良質な状態での継続整備、そして健全化のため、行政は偏見や非科学的な声など各種の妨害に屈することなく、これまで以上の尽力が強く求められている。

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