台風と消費税引き上げが大きな要素に…2013年10月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇

2013/11/12 14:30

内閣府は2013年11月11日、2013年10月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を公式サイト上で公開した。それによれば現状判断DIは先月から転じて2か月ぶりに下落して51.8となったものの、水準値50は上回る状態を維持した。先行き判断DIは先月から続いて2か月連続して上昇し54.5となり、当然のことながら引き続き水準値の50以上は維持している。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は先月から継続する形で「景気は、着実に持ち直している」となっている(【発表ページ:平成25年10月調査(平成25年11月11日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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キーワードは消費税引き上げと年末商戦


調査要件や文中のDI値の意味に関しては、今調査の解説記事一覧となる【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。必要な場合はそちらで確認してほしい。

2013年10月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス1.0ポイントの51.8。
 →2か月ぶりの下落。「良くなっている」「変わらない」が減少、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加している。
 →家計では台風の影響による小売店の売上不振、消費税引上げ前の駆け込み需要の落ち着きで住宅関連の一服感もあり減少。企業では非製造業で受注の鈍化から減少、雇用は年末年始の求人が好調で増加。

・先行き判断DIは先月比で0.3ポイントプラスの54.5。
 →消費税値上げによる駆け込み需要、年末商戦への期待から家計で上昇、購買マインド低下を懸念して企業や雇用で減少。
今回月では消費税引き上げと年末商戦がキーワードとなり、各方面にプラスマイナスの影響を与えているのが分かる。同じ状況でもこれだけ多方面に、別々の方向へと変化をもたらすところを見ると、経済や人の思惑が、色々な方面で結びつき、連動しているということがあらためて認識できる。

住宅関連の下げが著しい現状判断DI


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向を簡単ではあるがチェックしていく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2012年10月)
↑ 景気の現状判断DI(-2012年10月)

今回発表分では消費税引き上げ前の駆け込み需要が一段落ついたことを受け、これまで先陣を切って高い値を記していた住宅関係が大きく下落している。直接の駆け込み需要による現状判断DIの特需は1か月しか持たなかったようだ。

またここしばらくマイナス傾向が続いてた飲食は久々のプラス。今回月では全項目中最大の上げ幅を示している。ようやく底を打った感はあるが、それでも基準値の50にはまだかなり不足しており、軟調さの継続感を覚える。中食・内食の普及浸透によるところが大きいのだが、それならそれで潤いを示すはずの小売関連も今回はマイナス。世の中あまり上手くはいかない。

他方雇用関連は先月に続き安定した上昇を示している。今回の上昇で合計値との差はほぼ10にまで開くこととなった。少なくとも雇用は安定さを維持しているようだ。

続いて景気の現状判断DIの動向を、資料にある長期チャートで確認する。同チャート上に、傾向的に一番下落しやすい「雇用関連」の指数の下がり方が把握しやすいよう、前回の不景気時にあたる2001年当時の下げの最下層時点の部分に赤線を追加し、昨今の動向との比較を容易にしてある。

↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年10月)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年10月)

2007年夏以降に顕著化した、世界規模の金融危機・不景気(サブプライムローンショック)は、2008年後半に発生したリーマンショックを経て、事態はさらに悪化する。この頃になると各指数はITバブル崩壊時(2001年当時)を超えて下落。その後リバウンドの形で上昇するも、経済そのものはもちろんだが市民の心理が受けた傷跡は深く、合計値は基準値50を超えるまでには至らず、天井とする形で推移する。

そしてその傷跡も十分に癒えぬ2011年3月には、東日本大地震・震災が発生。再び大きく、勢い的にはリーマンショック以上のスピードで各値は下落する。それ以降はリバウンドによる上昇で基準値50を超えることもあったが、通常の低迷感はより一層強いものとなった。

その後、2012年11月以降は日本国内で大きな政情変化があり、期待感とその期待に応える形で株価・為替の動きが起き、各指数も上昇。今年春先以降は海外要因などを受けて勢いは停滞、失速の気配がある。しかし合計値をはじめ多くの指数が50超えを維持しており、昨年までの低迷・停滞感からは少なくとも脱している。直近では消費税の引き上げに伴うプラスマイナスの思惑、オリンピックへの期待、この数年間の政策における負の遺産ともいえる電気料金の値上げの圧力などが大きな変動パラメータとして影響を与えている。

景気の先行き判断DIは現状と比べるとややポジティブな動きをしている。また住宅は現状指数とまったく逆の動き、大きなプラスを示しているのが興味深い。

↑ 景気の先行き判断DI(-2013年10月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2013年10月)

もっともマイナス値が大きいのは非製造業のマイナス1.3。消費税増に伴う需要の低下を案じての動きとなる。もっとも製造業でプラス0.8を示していることから、企業動向全体ではマイナス0.6に留まっている。

逆に最大プラス値は住宅関連のプラス4.6。駆け込み需要の終焉後の復調を期待している面があるようだ。もっとも先行き判断DIではここ数か月ほど、住宅のみが大きく下げて基準値の50を割り込んでいたことから、その反動もあるのかもしれない。

雇用ははやや下落。ただし下げ幅は限定的で、現状値同様60前後をキープする安定した値動きが継続している。

次の折れ線グラフで過去の動きを確認すると、雇用関連の値は他の指数に先行するパターンが繰り返されている。さらに雇用が合計を下回ると、(過去2回の事例では)大規模な「全体値」の下落、そして景気の落ち込みが生じている(2001年前半と2008年前半)。いわゆる「アノマリー」と呼ばれる類のもので、半ばシグナルの役割も果たしている。今回月では雇用値は前月から転じてマイナスとなったものの、合計値の上昇も少なめで、雇用が合計を下回る状況はまだ考えにくい。

↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年10月)
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年10月)

変動傾向は現状指数とほぼ同じ。しかしながら2007年夏の金融危機のぼっ発やリーマンショック後におけるリバウンドなど、経済上の問題で値が下げた後の戻り方は、現状指数と比べるとやや鈍い。この鈍さは先行きの不信感・不透明感(特に日本人特有の気質として、心配性的な性質や悲観論志向も後押ししている)が大きく作用している。先の見通しが暗ければ、経済の先行きにも期待が持てず、それがそのまま数字として表れてしまう。2011年以降は震災が与えた心理的影響(特に先行きに対する不安感)も小さくない。

同時に現状指数と同じ事由による動きとして、2012年11月以降は政局の変化で今までの不透明感が大きく好転し、これまでとは異なる勢いでの上昇を見せている。さらに今年春以降のもみあい的な動きも、対外要因をメインとし、人々の「慣れ」によるところも小さくない。とはいえ、こちらも昨年までと比べれば、状況は随分と改善されている。

駆け込み需要の反動と台風、そして年末に向けての動き


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたり、その判断理由を詳細に列挙したデータも公開している。そのデータの中から、世間一般で一番身近な「家計(現状・全国)」「同(先行き・全国)」の事例を抽出してみた。

■現状
・新型車の投入と消費税率アップに敏感に反応した客の来店により、活発な動きとなっている(乗用車販売店)。
・増税前の住宅着工増加に伴い、エアコンや冷蔵庫といった大型商品の伸びが高い(家電量販店)。
・秋物衣料は、気温の高さや台風など気候の影響を大きく受けて全般に不調に推移している。高額品の需要も前年を上回ってはいるが、一時期のような伸びが感じられなくなっている(百貨店)。
・月初の予約状況はほぼ、前年並みで推移したが3個の台風が接近した後は、上陸はしなかったものの、約1千件の観光客の予約のキャンセルが発生し前年を割り込む結果となっている(その他のサービス[レンタカー])。
・10月の住宅展示場への来場数は、9月の駆け込み需要の反動で前年比4割減である(その他住宅[展示場])。

■先行き
・消費税増税前の駆け込み需要が早くも始まり、4Kテレビ等の高付加価値商品の需要が喚起されることになる(家電量販店)。
・宿泊は年末年始がほぼ満室で、宴会もクリスマスを除く忘年会の需要が好調である。食堂部門についても、クリスマスと年末年始の特別メニューが好調に推移している(都市型ホテル)。
・新築住宅の受注は9月末をもって一段落した感がある。しかし、建売住宅やリフォーム工事に対する需要はまだ冷めてないようだ。冬の賞与で景気の持ち直し感が出てくれば、2月ごろまでは持ちこたえてくれる(住宅販売会社)。
・大企業は売上を伸ばしているかもしれないが、地方の小売店などは原材料価格に加え、消費税も上がるため、利益が出ない状態となる(高級レストラン)。
突発的な影響としては、やはり台風によるものが非常に目立つ。それだけ今年は台風の上陸が多かったことがあらためて認識できる。また今件では取り上げていないが、企業動向周りで需要喚起は引き続いているものの、下請けや技術者の不足などの声が相次いでいるのが多数目に留まる。これまでの建設関係に対する卑下的な社会風潮、この数年間における異様なまでの円高放置や技術に対する軽視の動きの反動が大きく出ている。



政策効果の
実態が少しずつ企業に
プラスの効用として
表れつつある。
台風は概してマイナスの
影響を与えることに。
消費税、年末商戦に向けた
動きなど、複数要因が
複雑に絡み合い、
業種によって明暗を分ける
動きが見受けられる。
直近の不況は2007年夏にはじまる金融危機。そして2008年秋に始まるリーマンショック。そして2011年3月の震災。この3つにも及ぶ、従来ならば10年単位で起きてもおかしく無いようなネガティブ系の状況が相次いで発生し、それらの影響が加味され、経済にも人々のマインドにも大きな変化をもたらすことになった。特に震災が与えた影響は、今後数年どころか数十年に渡り、日本人の心理的傾向に影響を与えた可能性がある。

直近でも、今回はほとんど触れていないが2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定、そして来年春からの消費税引き上げ、本格的シーズンを迎える年末年始の商戦など、多くの要因が人々の心理に影響を与え、消費を左右させている。また依然重圧として継続している、電気料金の負担に代表される、これまでの状態における負の遺産も確実に、経済などの面でマイナスの傷を与え続けている。

これから年末に向けて特に対顧客の商業方面でどのような動きが生じるのか、消費性向の変化と共に、心理動向を見極めていきたいところだ。


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