横ばいか軟調、唯一輝くシリウス…少年・男性向けコミック誌部数動向(2013年7月-9月)

2013/11/11 08:30

社団法人日本雑誌協会は2013年11月7日付で、四半期毎に更新・公開を行っている印刷部数について、公開データベース上の値に最新値となる2013年7月-9月分を追加した。これは協会側が許諾を受けている主要定期発刊誌の「印刷証明付き部数」を掲載したもの。雑誌業界の動向・実情を示す値として、各誌・各出版社が個別に発表している「公称」販売部数よりも高精度な値として認知されている。今回はそのデータの中から「少年・男性向けコミック誌」の値を抽出した上で整理し、複数の切り口でグラフ化して現状を精査していく。

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直近四半期の動向、ジャンプとマガジンは桁違いの状況変わらず


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項は一連の記事に関するまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認のこと。

まずは少年向けコミック誌。相変わらず「週刊少年ジャンプ」の独走トップ状態、そして100万部超え雑誌として週刊少年マガジンが続く状況に変化は無い。

↑ 2013年4-6月期と最新データ(2013年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
↑ 2013年4-6月期と最新データ(2013年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データによれば印刷部数は277万9231部。返本のことを考えれば、実態の販売数はこれよりも少なくなる。ジャンプの返本率は不明だが、仮に1割と見た場合、250万部前後が目安だろう。雑誌を取り巻く環境の変化の中で、これだけの値を維持していることには、素直に感服させられる。同誌の最盛期にあたる1995年時点の値、635万部と比較すると見劣りはしてしまうが、それも致し方なし。また100万部超えではジャンプ以外に唯一奮闘している週刊少年マガジンも、第2位の座は不動である

今四半期は幸いにも脱落誌・追加誌共に無し。他の分野の雑誌も合わせ、統廃合や休刊扱いの雑誌の動きも、ようやく落ち着いてきたようだ。

続いて男性向けコミック誌。少年向けコミック誌同様、世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

↑ 2013年4-6月期と最新データ(2013年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2013年4-6月期と最新データ(2013年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

前四半期では「スーパーダッシュ&ゴー!」が脱落してしまったが、今回は特に脱落誌は無し。また同一ジャンルで新規追加誌も無い。

少年向けコミック誌におけるジャンプ・マガジン同様、「ビッグコミックオリジナル」「週刊ヤングジャンプ」「ヤングマガジン」の独壇場は継続中。ただし今四半期ではヤングマガジンの下落率が大きく、第2位と第3位が入れ替わってしまったのが大きな動き。また、一時「アフタヌーン」について一部で大きな部数減少が伝えられていたようだが、現時点で確認する限り、8.5万部という値が計上されており、前四半期からは変化無しとなっている。

当方(不破)が好みの連載が数多く掲載されていた、そして定期発刊のコミック誌では珍しい2誌の統合・再構築が行われた「グランドジャンプ」「グランドジャンププレミアム」だが、今四半期でも情報の公開は前者のみ。連載陣の交換が行われるなど、てこ入れも随時なされているようだが、データが公開されている「グランドジャンプ」の印刷実績は、統合前の「ビジネスジャンプ」の最後期データ23.9万部を超えられない状態が続いている。下落に歯止めがかかったのがせめてもの救いか。

↑ グランドジャンプの印刷実績(万部)(2013年7-9月期まで)
↑ グランドジャンプの印刷実績(万部)(2013年7-9月期まで)

前四半期比較で動向を眺める


続いて公開データを基に各誌の前・今四半期間の販売数変移を計算し、状況の変移についての確認を行う。季節変動などを考慮しない単純比較(要は「前回と比べて増えた? 減った??」)になるが、短期間の動きをダイレクトに知るのには良い値である。なおデータが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。今回は幸いにも該当誌は無し。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年7-9月期、前期比)

「月刊少年シリウス」の伸びが目立つ。「週刊少年サンデー」も同誌としては相当な健闘なのだが(連載の「銀の匙 Silver Spoon」で7月から2か月ほどテレビアニメが放映され、8月には実写映画化が発表されたのが大きいようだ。また、今回時期では同誌は「爆サン」と呼ばれる4週連続の特別企画(小冊子やポスターなどの付録、価格を200円に引き下げての発売)などを展開しており、この効用も考えられる(【参考:週刊少年サンデー:値下げで部数3割増】)。)、シリウスの前にはかすんでしまう。これは同誌が2013年10月号から連載を開始した「進撃の巨人 Before the fall」の影響が大きい。同誌は元々1万部強の印刷部数だが、今四半期は2万部近くにまでその値を伸ばしている。まさに「進撃の巨人」さまさまというところ。

↑ 雑誌印刷実績変移(月刊少年シリウス)(部)
↑ 雑誌印刷実績変移(月刊少年シリウス)(部)

一方「コロコロイチバン!」と「別冊コロコロコミックスペシャル」の落ち込みが著しい……が、これは単純に前四半期の伸びの反動に過ぎず、実質的にはいつもと変わらずで、漸減状態に留まっているといえる。

他方マイナス誌は多いがほとんどは誤差の範囲。「最強ジャンプ」「ウルトラジャンプ」がやや気になる下げ方をしているというところか。

続いて男性向けコミック。こちらは少年向けと比較すると安定した状況……とはいえ下げ基調には違いない。

↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2013年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2013年7-9月期、前期比)

誤差と判定されないプラス誌は皆無、マイナス誌は1誌「ヤングマガジン」。同誌の急落は大黒柱的存在の「頭文字D」の連載が2013年35号で終了したことが大きい。それ以外は誤差的な下げ雑誌が多く、やや下振れかなという雰囲気が漂っている。とはいえ、前四半期と比べればまだ大人しいもの。かつて大きく躍進していた「コミック乱」三兄弟だが、「コミック乱」がかろうじてプラス領域にあるものの、残り2誌は他の雑誌同様あまり思わしくない状況。

季節変動を無視できる前年同期比で検証


次に示すのは、季節変動による部数変化を考慮しなくても済む、前年同期比を算出したもの。今回は2013年7-9月分と、その1年前2012年7-9月分の数字の比較となる。雑誌の印刷数における年ベースでの純粋な伸縮動向が確認できる。

まずは少年向けコミック誌。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2013年7-9月期、前年同期比)

前年同期比で誤差(プラスマイナス5%)を超えたプラスを示したのは1誌、「月刊少年シリウス」のみ。逆に5%を超える下落を示しているのは「少年サンデースーパー」をはじめ10誌。前四半期の7誌からさらに増加している。

特に「少年サンデースーパー」の下落率は40%超と著しいものがある。これは昨年まで3万から4万部を維持していた同誌が、今年に入ってから2万5000部台に部数を下げているのが原因。同誌は2012年1月売りの3月号からリニューアル・新装刊を行い部数の底上げをしており、その勢いが続いていた昨年同期との比較のため、このような値が出てしまっている。もっともリニューアル前と比べればまだなお部数は上であることから、ある意味リニューアルそのものの成果は今なお出ているとも評せるのだが。

↑ 雑誌印刷実績変移(少年サンデースーパー)(部)
↑ 雑誌印刷実績変移(少年サンデースーパー)(部)

続いて男性向けコミック。こちらは見事(!?)に全誌がプラス領域に届かず、グラフそのものの形状もプラス面が無いものとなってしまった。


↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2013年7-9月期、前年同期比)

プラスを示した雑誌はゼロ。誤差(プラスマイナス5%)を超えるマイナスぶりを示した雑誌は10誌。中堅層向け雑誌として手堅いセールスを見せていた「コミック乱」三兄弟のうち、「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」が前四半期に続きマイナス2割超の値を示し、群を抜いている。「コミック乱」「コミック乱ツインズ」が踏みとどまっているのを見ると、三兄弟の中で「戦国武将列伝」は去年末あたりから厳しい状態が続いている。そろそろ本格的なてこ入れが必要かもしれない。

↑ 雑誌印刷実績変移(コミック乱ツインズ戦国武将列伝)(部)
↑ 雑誌印刷実績変移(コミック乱ツインズ戦国武将列伝)(部)



少年・男性向けコミック誌に限らず雑誌全体、さらには紙媒体そのものが苦境に追い込まれている状況は、これまでと変わらない。ただ今件記事に限れば、少年向けよりも男性向けの方が一層厳しさを見せている。これは紙媒体そのもの競合メディアであるモバイル端末の影響を、より受けやすいからに他ならない。少年と比べれば成人男性の方が、モバイル端末の所有率は高く、紙からデジタルに移行する人が多くなるのも当然だからである。

雑誌社側でも紙とデジタルの連動を図ってそのビッグウェーブに乗ろうと模索したり、デジタル化で紙媒体の縮小を補おうとしているものの、概して上手く行っていない。しかも後者の場合は紙媒体の縮退を加速させるリスクまで生じてしまう。

このような状況の中、【Jコミ】のように既存の雑誌上の「資産」をデジタル上で有効的に再利用する動きも活発化している。先日からは試験的ではあるが、掲載上の作品をオンデマンド印刷で紙の本として販売する【Jコミで印刷できるってよ(ブログ「(株)Jコミの中の人」)】という仕組みも展開されており、注目を集めている。これは不幸にも諸般の事情で単行本化されなかった連載部分を、Jコミ側が「紙の印刷物」として作成し、注文者に販売するという仕組み。一般コミックと比べて割高になる場合も多いが、ファンの需要を満たすことができ、既存の単行本の需要もかきたてる効果が期待できる。

またシリウスの事例にある通り、大きな集客が期待できる素材に臨機応変に対応できる姿勢も欠かせない。もちろん素材そのものを多数展開できるような土壌を作ることは必要不可欠である。

状況は厳しく、五里霧中かつ暗中模索ではあるが、まったくの暗闇というわけでは無い。各関係者が正しい方向性を認識し、突き進めば、あるいは新たな流れを導き出せるかもしれない。


※一部解説を追加しました。ご指摘ありがとうございました

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