すき家と松屋の客入り苦戦、吉野家堅調は続く…牛丼御三家売上:2013年10月分

2013/11/08 08:30

吉野家ホールディングスは2013年11月7日、同社子会社の牛丼チェーン店吉野家での2013年10月の売上高や客単価などの営業成績を発表した。それによれば既存店ベースでの売上高は前年同月比でプラス2.2%となった。牛丼御三家と呼ばれる主力牛丼企業のうち松屋フーズが運営する牛飯・カレー・定食店「松屋」の同年10月における売上前年同月比はマイナス1.9%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス9.6%との値が発表されている(いずれも前年同月・既存店ベース)(【吉野家月次発表ページ】)。

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吉野家が唯一売上高プラスに


↑ 牛丼御三家2013年10月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2013年10月営業成績(既存店)(前年同月比)

牛丼御三家の前年同月比における、客数・客単価・売上高の動向は上記のグラフの通りとなる。吉野家に注目した上で、昨年同月の記事を基に営業成績を比較すると、一年前における客単価前年比はプラス5.3%。今月はそこから転じて8.9%のマイナスを示している。御三家の中では最大の下げ幅がここしばらくの間続いているが、この原因は主力商品の牛丼を2013年4月に値下げしたため。この値下げで基本メニューの牛丼価格は三社横並びとなり、他の2社の商品戦略にもに大きな影響を与えている。

客単価の下落は大きなマイナス要因だが、その分値下げによる集客効果も確かなもので、今回月では客数は前年同月比で12.2%と3社中唯一のプラス。これは前々年同月比を算出しても3.1%のプラスとなり、他社と比較しても、少なくとも売上高には多大な貢献をもたらしている。また同時期に【これはナルホド女性向け、牛丼小盛とサラダのセット「コモサラ」が吉野家で11月1日販売開始】にある通り、女性層の取り組みを模索すべく新たなメニュー展開を行っているが、これも幾分はプラスに働いたのだろう。

一方客単価に関しても、吉野家では該当時期に「アタマの大盛」の全店サービス開始をしており(【吉野家の牛丼、隠しオーダー的な「アタマの大盛」正式商品化へ】)、少しでも単価の引き上げをしようとする思惑が見て取れる。

↑ 牛丼御三家2013年10月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2013年10月営業成績(既存店)(前々年同月比)

松屋の今回月(10月)の動向を見ると、【厚手の豚肩ロースとにんにくタレがポイント・松屋からトンテキ定食登場】で紹介したように高単価の新メニュー投入で客単価の引き上げを模索する一方、月初までだが「新米フェア」による定食の大盛・特盛化への無料キャンペーンを行い、客単価の引き上げと集客、さらには大盛りメニューを常食する常連客の誘引を模索する動きを示している。一部はその成果が出たのか、客単価では御三家中唯一のプラス(これは先月から継続)となり、客数減少による売上減を最小限に留めることができた。

すき家では「チャプチェ牛丼」の導入が行われた程度で目立った動きは無く、客単価・客数共にマイナスとなり、売上高の減少幅は御三家最大のものとなってしまった。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2013年10月)

前年同月だけでなく、前々年同月の売上グラフと合わせて見れば分かる通り、松屋・すき家での客数減少、そしてそれを主要因とする売上減退は、短期的、前年の大きなプラスに伴う反動的なマイナスではなく、中期的な流れであることが確認できる。

特に客数減少傾向が著しいすき家では、先日【30円の牛丼値下げ・すき家が「秋の新米250円セール」期間限定実施】でも報じたように、起死回生策として期間限定ではあるが、主力商品の牛丼におけるさらなる値下げを発表している。これをきっかけに客離れを防ぎ、新規客の誘引を推し量るようだが、その成果がどこまで現れるかは、来月以降のデータで明らかになる。

吉野家の客数、いまだに増加中


直上にもある通り、牛丼チェーン店市場では客足が遠のいている現状が確認されており、最優先で解決しなければならない問題となっている。すでに松屋は19か月、すき家は23か月、客数の前年同月比マイナスを継続しており、前年同月からの反動という解説は通用しない。

ところが吉野家は先月から続き7か月連続して来店者数をプラス化しており、これも上記で説明したが、主力商品の牛丼値下げの効果の絶大さが分かる。今月吉野家が唯一売り上げをプラス化できたのも、この客入りの良さが主要因であることは言うまでもない。


↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2013年10月)

値下げ直後は大きな伸びを見せた吉野家の客数。直後に失速して短期的な効果に過ぎないかと思われたが、それ以降はプラス10%前後を維持し、今月に至っては再び伸び率をかさ上げすることとなった。値下げが一時的な客引き効果に留まったわけではなく、常連客の定着化に成功したことを表している。この動きは値下げ開始後から1年、具体的には来年3月位までは続くものと考えられる。

他方、盛り返しを見せた吉野家も合わせ、直近での客数の顕著な減少は2011年夏以降に発生している。タイミング的にも、そして直接・間接の要因は別としても、2011年3月の東日本大地震・震災の影響が大きいと見て間違いない。また復興が続く昨今でも客足が戻らない点を見るに、消費者の牛丼に対するポジション、優先順位が大きく変わってしまった可能性がある。

ただしこの動きは牛丼チェーン店に限ったものでは無く、他の外食店、例えばハンバーガーチェーン店でも同様の動きが確認できる。マクドナルドやモスバーガーに代表されるハンバーガーチェーン店でも似たような動きがあり、ファストフードは全般的に軟調さを示している。元々不景気下や新商品の開発、経営戦略の修正の中で動きを見せていた、コンビニの惣菜やカウンターフーズの展開に、消費者の需要がマッチし、シェアを奪われている可能性が高い。

ファストフードはその名の通り手早く食事ができるのがポイントだが、それ故に家族で団らんを楽しみながら食の時間を過ごすという食のスタイルはあまり想定されていない。震災を機に「家族のつながり」が重視され、それに伴い一家団らんで食卓を囲むには、コンビニの食材が手っ取り早い。ファミリーレストランのような業態ならともかく、牛丼やハンバーガーでは不得意とする状況ではある。

また唯一客数の増加で売上が堅調な吉野家ですら、【吉野家、業績予想下方修正】や上記の「30円の牛丼値下げ・すき家が「秋の新米250円セール」期間限定実施」でも解説している通り、コスト増が重しとなり、売り上げは伸びても利益が出ない状態となっている。利益を上げるには高単価の商品展開で売上を伸ばすのが手っ取り早いが、商品単価を上げれば概して客足は遠のいてしまう。今後さらに原材料費の上昇が予想されることを合わせて考えると、牛丼チェーン店市場の厳しさは継続しそうである。


■関連記事:
【コンビニエンスストアの商品構成別売上推移をグラフ化してみる(2012年12月分まで反映)】(コンビニの惣菜系商品の躍進が、牛丼などの一部ファストフードに影響を与えているのではないかとする話)
【牛丼御三家の店舗数推移などをグラフ化してみる(2012年8月分まで対応版)】

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