ユーロ圏では失業率12.2%で過去最悪に……EU失業率動向(2013年9月分)

2013/11/01 11:30

EU(欧州連合)内外の統計情報を整理集約し、各国の政策を統計情報の面で支援する、欧州委員会の統計担当部局・EU統計局(Eurostat)は2013年11月1日、関連諸国の失業率データについて最新値の2013年9月分を公開、分析レポートも合わせて発表した。今回はその値を基に、EU諸国を中心とした全体失業率、そして若年層の失業率にスポットライトをあて、状況の精査を行う。一部地域では改善の動きがあるものの、ユーロ圏では12.2%と過去最悪の値が確認できる。

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ギリシャの火種が周囲に広がる、キプロスは16.9%に


データ取得元の詳細、グラフや文中に出てくるEA17・EU28の構成国、状況の変化については一覧ページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上の解説を参考のこと。

ILO基準における2013年9月時点の失業率は次の通り。EU28か国では11.0%・EA17か国では12.2%を記録している。双方とも先月分(速報値から修正済み)と変わらず、今回前月分までの値に修正が入ったことで、状況の改善への兆しは消え失せてしまった。先月の記事内における言及「欧州地域全体における失業率動向は改善の雰囲気」は幻だったことになる。

このグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータがEurostat上で未収録だった場合、掲載時点で公開されている最新月分のデータを代用している。例えばギリシャは今回更新時点では2013年7月分までの値(27.6%)が公開されているため(8月・9月分は無い)、ここでは9月分として収録・掲載している。

↑ 2013年9月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年9月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャ。スペインはそれに1.0%ポイントの僅差をつけての2位。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2013年7月時点の値を適用させているため、単純に両国を比較するはやや問題があるが、同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは26.5%。やはりギリシャの27.6%の方が上となる。

今回最新値を入力した上で気になる点は、欧州全体では少しずつ悪化、あるいは横ばいの傾向を示している一方で、一部の国では継続的かつ確実な悪化の動きがみられること。一部の国が他国の動きから抜きんでて目立つ形となっている。例えば先月特異事例として取り上げた、欧州債務危機でホットスポットの一つにあたるギリシャと深い関係があり、その影響を大きく受けているキプロスだが、相変わらず失業率は上昇するばかり。
↑ 2012年5月-2013年9月でのキプロスの失業率(季節調整済)
↑ 2012年5月-2013年9月でのキプロスの失業率(季節調整済)

このキプロスに限った話ではないが、グラフの左側に位置する、つまり失業率の高いポジションの常連国、具体的にはスペイン、ギリシャ、クロアチア、ポルトガルなどは、財政・債務問題でニュースにしばしば顔を見せる国でもある。失業率は雇用市場の問題が単独で発声しているのではなく、経済・財政問題と互いに関わり合い、影響を及ぼしていることが理解できるはずだ。

今回も該当月の前月(2013年8月)の値との差異を独自に算出し、その結果をグラフ化する。Eurostatでは冒頭で触れた通り、最新値を発表した際に過去データも逐次修正しているため(これは各国がEuroStatに提出するデータそのものが変更されるのが原因)、前月分もその修正を反映した上で算出されている(【Data Explorer】上の値を使用)。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年8月→2013年9月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年8月→2013年9月)(またはデータ最新一か月前→最新)

経験則的上、国内人口の少ない国では統計値がぶれやすい。また元々国の特性から誤差が生じやすい国もある。中には毎月数か月分の修正が行われる国もあるほどだ。そこでプラスマイナス0.5%ポイント以内は「誤差」と見なし、留意対象からは外している。

その観点で精査すると、今回月では改善・改悪共に注目すべき国は無いことになる(0.5%を超えるプラスマイナスが無い)。とはいえ上記のキプロスのように、継続して状況が悪化している国が多いのも事実であり、短期的な動向のみで事態全体を推し量る、例えば今月ならば「事態は平穏」と断じるのはリスクがある。

一部の国に見える改善化…若年層失業率


先進諸国・中堅国の失業問題で、特に先進諸国で問題視されているのが、雇用上の立場では弱い立場にある若年層の失業率。直近の2013年9月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で24.1%・EU28か国でも23.5%を記録しており、5人に1人以上が失業状態にある。日本では想像しがたい状況だが、25歳未満の就労可能な若年層のうち、ほぼ1/4が失業状態にある(ILO基準なので、意図的に職を求めていない人はカウントしていないことに注意)。

全体の失業率上位ではお馴染みの国々が、若年層失業率でも上位に並ぶ。ギリシャの57.3%(2013年7月)、スペインの56.5%を筆頭に、クロアチア、キプロス、キプロス、イタリアなど、経済的に不安定な国の高さが目に留まる。

↑ 2013年9月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)
↑ 2013年9月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)

↑ 2013年9月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)
↑ 2013年9月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(9月データが無い国は直近分)

上記にある通りプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差基準とした場合、今回月ではフランスの悪化、ハンガリー・スウェーデン・リトアニアの改善が確認できる。フランスの悪化はやや意外だが、同国では今年第1四半期にリセッション(不況宣言)入りしており、経済的な面によるところが大きいものと思われる。

一方改善の兆しが見られた3か国だが、これらの国について過去からの変移を確認すると、スウェーデンは今回月はたまたま、リトアニアは確実に改善の方向、ハンガリーはこの数か月の間はポジティブな動きがあるものの「ぶれ」の可能性も高く、今後の動向を見極める必要があることが分かる。

↑ 2012年1月-2013年9月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ハンガリー、スウェーデン、リトアニア)
↑ 2012年1月-2013年9月での25歳未満の失業率(季節調整済)(ハンガリー、スウェーデン、リトアニア)

特にリトアニアの状況改善は目を見張るべきものがある。何しろこの2年足らずで10%ポイント近くも減少しているのだから。今後も折に触れて動向を確認していくことにしよう。


欧州の債務問題は家計に例えれば「財布のひもをひたすら締める」から「収入を増やしながら無駄遣いを抑える」に方向転換をしつつある(【IMFが性急な歳出削減警告、財政健全化への具体策示さず(ロイター、2013年9月18日付)】)。IMFや欧州委員会、構成各国が(一部を除き)債務問題において最大の山場、危機を脱したとの認識を持つと共に、一方的な緊縮政策がスパイラル的な結果をもたらしやすいとの経験則に基づいた判断といえる。

緊縮政策をすれば無駄遣いを早急に抑えることはできる。しかしそのような状況では成長は望めない。成長が期待できない国へは投資は行われにくく、ますます経済は悪化する。それよりは成長のプロセスを明示しながら、その過程で無駄遣いを抑えた方が、国内外の理解も得やすい。先のIMFの警告でも財政緊縮化が急すぎると成長への期待が失われ、それが投資家の信頼を損ない、状況がさらに悪化してしまうと指摘している。

キプロスのように状況が悪化する一方の国もあれば、リトアニアのように改善への歩みを見せる国もある。ヨーロッパ全体としては状況は安定化、いくぶん悪化かという感じではあるが、内情は色々と複雑である。雇用市場がその国の経済すべてを指示しているわけではないが、重要な指針の一つには違いない。今後も各国、そしてヨーロッパ全体の雇用市場の動向を、注意深く見守る必要があろう。


■関連記事:
【日本の順位変わらず・数字はやや改善(国債デフォルト確率動向:2013年Q3)】

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