鉄鋼は増加するも多数項目で減少、全体もさらにマイナスへ(2013年9月分大口電力動向)

2013/10/23 15:45

電気事業連合会は2013年10月18日で同会公式サイトにおいて、2013年9月分の電力需要実績の速報を発表した。それによれば同年9月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で743億kWhとなり、前年同月比でマイナス3.4%となった。一方、産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス1.1%を記録し、2か月連続して前年同月の実績を下回ることとなった。このプラスは繊維、紙・パルプ・鉄鋼を除く主要業種で、前年同月実績を下回ったのが原因とリリースでは説明している(【電気事業連合会:電力需要実績発表ページ】)。

スポンサードリンク


マイナス項目は4つで変わらず、ただし先月比下げ項目が目立つ


今調査の概要および用語解説に関しては、過去の同調査結果を集約した定期更新記事の一覧ページ【大口電力使用量推移(電気事業連合会発表)】で解説が行われている。そのページで確認のこと。

2013年9月では大口全体で前年同月比マイナス1.1%となった。「前年同月比」であることから季節属性(業種によっ商品の生産が多い季節と少ない季節がある)などに影響を受けない数字であり、各種工場の施設の稼働で生じる電力の消費が前年と比べて減ったことになる(稼働率そのものではないことに注意)。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年8月-2013年9月)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2013年8月-2013年9月)

前回月ではプラス圏の業種は3業種だったが、今回月も変わらず3業種。ただし前月と比べて増加したのは鉄鋼と機械のみで、他業種は軒並み電力消費量を減らしている。これは8月下旬から9月中旬にかけて気温が昨年同時期と比べてかねがね低めに推移し、冷房需要が減少したのが一因。同時に1年の間に進展した節電対策・効率化による効果、稼働率減少によるところも少なくない。

ちなみに次のグラフは2011年3月の震災より前、2010年度と比較した今回月の大口電力使用量。今月は9月分であることから、2010年9月時点での使用量との差異となる。稼働率動向だけでなく、震災以降必然的に加速化した節電効果と合わせた変化によるものだが、今回一番大きなプラス値を示した鉄鋼以外はすべてマイナス。しかも複数の業種で10%超を記録している。これだけ震災を経て各業種で電力使用量が減退している状況を認識しておく必要はある。

↑ 大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年9月)
↑ 大口電力使用量産業別「2010年度」同月比(2013年9月)

特に紙・パルプと非鉄金属のマイナスが目立つ。両業種の稼働率の大幅増加を懸念する一方、双方とも節電や自家発電などによる「みなし節電」が進んでいることが思い起こされる。単純に工場稼働率の低下で電力消費量が減ったと断じるのではなく、効率的な節電が進んでいるとの認識もするべきだ。

中長期的な動向の確認


上記の記事、グラフは単月、または短期間に限定した動向。そこで次のグラフで連続的な流れを確認する。2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移を記しているので、個々の値を細かく見定めることは難しいが、「俯瞰的動向」を知るのには適している。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年9月分)
↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(-2013年9月分)

経済系のグラフには必ずといってよいほど登場する、2008年秋に発生した「リーマンショック」の影響が谷となって現れ、一目で分かる図となっているのが特徴的。一方で2010年にも大きなプラス領域の山が出来ているが、これは単に前年の下落の反動に過ぎず、経済・工業の急速な回復を意味するものでは無い。

その後はやや安定した流れを見せていたものの、2011年3月に発生した東日本大地震・震災を機会に大きく下げ、その後は押し並べてマイナス基調で推移している。これは震災による物理的な損害、さらには各種要因による稼働率の低下によるもの。特に電力需給問題による節電要請(政策的、社会的圧力双方が起因)や電気料金の引き上げを原因とする、「稼働率に影響を与えない節電」によるところが大きい。無論その節電には膨大な初期コスト、従業員の負担増など、電力消費・稼働率以外の点で動きが生じている。

ちなみに今回の2013年9月・全体値の「前々年」同月比(2011年9月との比較)、つまり震災後における変化はマイナス3.2%。言い換えれば、震災直後で各発電所が停止状態に追い込まれ、電力がひっ迫した時期(2011年9月)と比較してですら、一般電気事業者からの大口電力使用量は3.2%減じていることになる。節電、稼働率の低下がそれぞれどの程度の割合を占めているかまでは分からないが、大口電力の使用がそれだけ減っていることには違いない。



上記でも触れた通り今回該当月は気候に助けられた面が多く、大口電力だけでなく一般電力でも、需要は抑えられることとなった。無論気候以外にも、各種節電対策は進んでおり、住宅向け、産業用を問わず、同じ稼働状況・運用状況下でも電力消費は漸減を続けている。

同時に一見すれば稼働率・利用状況に変わりはないものの、中長期的に見た各方面、特に利用者の負担が増加している場面も少なくない。例えば暑い時期の冷房温度の引き上げ、寒い時期の引き下げは、身体にへの負担を増加させる一因にもなりかねない。

また電力消費が増える冬期・夏期における電力需給が綱渡り状態にあることに違いは無く、さらに状態維持のために行われる電力会社各社の金銭的負担は極めて大きく、常軌を逸している感は否めない(震災以降毎年兆円単位の余分な燃料コストが発生している)。そしてその負担は電力料金の値上げ、節約を社会的に強要された電力会社の安全性問題の発生(予算や電力供給力確保のためにメンテナンスを先延ばしせざるを得ない事態が発生している)、さらには各大口電力需要者への負担増とつながり、経済全体への大きな、確実なるプレッシャーとして国全体にのしかかる。

水同様に製造業全般にとって、安定的かつ安価な電力の供給は、生産活動の維持には欠かせない。その環境の良質な状態での継続整備とさらなる健全化のため、行政は偏見や非科学的な声、内部的なしこりや負の遺産に屈することなく、これまで以上の尽力が強く求められよう。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー