出版業界の決算動向をグラフ化してみる(出版社編)

2013/10/21 08:45

先に【出版業界の決算動向をグラフ化してみる(書店編)】で、帝国データバンクが2013年10月17日付で発表した「出版業界 201年度決算調査」を基に、書店経営業者の財務上の直近動向を確認した。今回は同じ資料を手掛かりに、出版物の製作元である出版社における売上や純利益の動きを確認していくことにする(【発表リリース:特別企画 : 出版業界 2012年度決算調査】)。

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トップ3が断トツな出版業界


今調査は2013年9月時点で帝国データバンクが把握している出版社・出版取次業者・書店経営業者のデータを基に作成されている。それによると出版社の売上高トップは集英社で、2012年度は1319億円の売上を上げている。ただし同社では2012年年度は前年比で4.4%の売上減が確認できる。

↑ 出版社2012年度売上高(上位10社)(億円)
↑ 出版社2012年度売上高(上位10社)(億円)

↑ 出版社売上高前年度比(売上高上位10社)
↑ 出版社売上高前年度比(売上高上位10社)

先の書店のように一社が抜きんでる形では無く、出版業界では集英社・講談社・小学館の3社がビッグ3的なポジションにあり売上高1000億円超を果たしている。また大きく前年度比が伸びている企業もいくつか見受けられるが、例えば角川書店の場合はここ数年グループ会社全体で周辺環境に合わせた再構築を継続しており、この伸びも角川書店が角川映画を吸収したところが大きく、突如出版企業としての売上が急伸したものでは無い。

むしろ概して売上高上位企業でも、売上そのものは漸減・低迷していると見て良い。この動きについてリリースでは「書籍は売れる・売れない本の二極化の進行」「雑誌全体の低迷」を理由として挙げているが、これらの点は他の出版関連の記事でも幾度となく指摘されている点であり、説得力のある説明といえる。

他方(最終)利益の面では売上高での上位10社全社が純利益を上げており、売上動向と比べると堅調さを示している。

↑ 出版社2012年度損益(売上高上位10社)(億円)
↑ 出版社2012年度損益(売上高上位10社)(億円)

↑ 出版社2012年度売上高純利益率(売上高上位10社)
↑ 出版社2012年度売上高純利益率(売上高上位10社)

売上の部分で角川書店を例に挙げているが、出版社大手では不動産の売却や赤字部門の縮小、子会社化による分割、さらには撤退などのリストラクチャリングを進めている。直上グラフは営業利益では無く最終利益(本業以外の損益をも合わせたもの)であることから、本業の売上が減少していても利益を出しているところが多い結果が出ている(ぎょうせいに関しては2012年にMBOが行われており、その影響があるのだろう。同社の2011年度純利益は27.0億円、売上高純利益率は12.6%である)。

大規模出版社ほど経営は楽、かな?


今回のデータに関して「売上高上位30社」「売上高上位31位以下」の2グループ、要は大手出版社と中小出版社に区分し、それぞれのグループの売上高や損益動向をまとめたのが次のグラフ。

↑ 出版社売上高2期動向(売上高順位グループ別)
↑ 出版社売上高2期動向(売上高順位グループ別)

↑ 出版社損益2期動向(売上高順位グループ別)
↑ 出版社損益2期動向(売上高順位グループ別)

売上高上位10社内では概して低迷していた状況だが、グループ化してもやはり上位陣の方が不安定な状態にある雰囲気に見える。小回りが利きにくいからか、あるいは中小においては赤字続きで吸収合併をしたり閉業したところが多く、淘汰の結果として増収企業がカウントされやすいのかもしれない。

他方最終損益の観点では、圧倒的に売上高上位企業の方が状況は良い。これは上記で説明している通り、本業以外のやりくりをしたり、合併や吸収、グループ企業の再構築を行うなどして最終的な利益を上げると共に、収益構造の改善を目指した結果といえる。もっとも後者は今後その成果(利益を出せる体質となったか否か)が出るかどうかを見極める必要がある。

【角川GHD、アスキー・メディアワークスや角川書店、エンターブレインなど9子会社を吸収合併、社名を「KADOKAWA」に変更・事業会社化へ】などで伝えており、今件リリースでも言及しているが、角川グループでは角川書店をはじめとした連結子会社を合併するなど、大規模な組織再編を行っている。これも同社が出版業界、特に雑誌の苦境を十分認識した上での動きであり、雑誌部門の比率が高く、当然痛みが大きい大手出版社ならではの動向といえる。

今後は電子出版のさらなる浸透と共に、出版社サイドとしてどのように付き合い、ビジネスとして領域を拡大していくのか。そしてそれと共に減退著しい紙媒体の雑誌分野をどのようにかじ取りしていくのかが、大手を中心に最優先検討課題となる。そしてその検討結果が事業スタイルの変化、そして業績にも反映されていくに違いない。


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