オリンピック招致効果か、ラジオ以外は堅調(経産省広告売上推移:2013年10月発表分)

2013/10/17 11:30

経済産業省は2013年10月9日付で同省公式サイトの「特定サービス産業動態統計調査」にて、2013年8月分となる速報データ(確定値に先立ち公開される値)を発表した。その公開値によると、2013年8月の日本の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス9.2%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事で精査対象となる5項目(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット)中では「ラジオ」がマイナス5.8%と、唯一低迷しているのが確認できる(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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新聞1.7%・雑誌は3.5%のプラス、ネットもプラスに


「特定サービス産業動態統計調査」に関する解説は一連のまとめ記事(【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】参照のこと)で行っているので、そちらを参考のこと。なお最新のデータ以前の値(今回なら2013年8月分以前)は、速報値の後に発表される確定値で修正された数値を用いている(入力し直している)ので、値が前月展開した記事とは異なる場合がある。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2013年7-2013年8月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2013年7-2013年8月)

前月分との比較がしやすいよう、前回記事分(2013年7月分)データ(確定値に修正済み)と並列してグラフ化している。今回月では従来4マス中「ラジオ」は相変わらず軟調のままだが、それ以外の「新聞」「雑誌」「テレビ」は軒並みプラスを示し、好調な動きを見せることとなった。「ラジオ」の一年前もマイナス値であることから、前年同月の反動では無く、継続的な低迷状態にあることが分かる。また、インターネットは12.1%のプラス。対象5項目の中では一番の大きな伸びを示している。

該当月、つまり2013年8月における大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事【ネットが強し、一般広告はオリンピック招致効果?(電通・博報堂売上:2013年8月分)】で確認すると、4マスではラジオの軟調やインターネットの強い値動きがあり、ほぼ連動した形となっている。またその記事でも触れている通り、オリンピックの招致関連の効果が大きく出ているようで、一般広告の強さが見て取れるが、特定サービス産業動態統計調査でもそれが確認できる。特に海外広告が異様なまでの伸び率を示しており、先の「電通・博報堂売上:2013年8月分」の記事での推測の裏付けにもなっている。

↑ 4屋外広告などの広告費・前年同月比(2013年8月)
↑ 4屋外広告などの広告費・前年同月比(2013年8月)

上昇続けるネット広告、ラジオの6倍近くに


今回も該当月(2013年8月分)における、各区分の具体的売上高をグラフ化する。広告代理店業務を営む日本の企業は、最大手の電通と博報堂のみだけではない。また、各広告種類の区分が業界内で統一企画化はされておらず、当サイトで月次更新している「電通と博報堂の-」との額面上での完全一致性は無い。今調査内のみの月単位での、比較用の参考値として見てほしい。

↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2013年8月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2013年8月、億円)

金額面では「インターネット広告」の額面が「新聞」の額を超える月が継続中。今記事で抽出している主要5項目内では「テレビ」に続き第2位の地位にある……とはいえ、両者間の差はあまりにも大きく、順位が入れ替わる状況は想定しにくい。

躍進続けるも相手の背中がまだまだ遠い「インターネット広告」だが、他のメディアと比べると、額面上の起伏が大きい。また先月発生した、過去のデータにおける大幅修正のような「ぶれ」も多分にある。見方を変えればそれだけ柔軟性・機動力に富んでおり、広告出稿側も臨機応変な切り替えができる、機動力の高い広告媒体ともいえる。ただしこの一、二年ほどは成長率が鈍化している感も否めない。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2013年8月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2013年8月)

次のグラフは公開されているデータの中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れをグラフに起こしている。

↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2013年8月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2013年8月分まで)

各項目の動向を概略的にまとめると「インターネットは2009年前半に数か月に渡る低迷を記録するが(多分にリーマンショックによるところが大きい)、その後回復。それ以外は概してプラス圏にあり、順調に成長中。ただし2012年以降は成長が鈍化の兆し」「テレビは2010年から回復基調。震災時は落ち込むが、それ以降は金融危機以前よりも復調。特に今年に入ってからの動きが良い」「ラジオはマイナス圏。継続的に縮小方向の流れ」「雑誌はリーマンショック(2008年秋)で一番大きな痛手を受け、震災でも大きくマイナス。その後も厳しい状態が続くが、この数か月はやや平穏化か」「新聞は雑誌とほぼ同じ動き。ただし短期間の起伏が大きく、世情動向に左右されやすい」という具合になる。

また今グラフ期間中には「2007年夏の金融危機ぼっ発(サブプライムローンショック)」「2008年秋のリーマンショック」「2011年3月発生の東日本大地震・震災」と、3つの経済的に大きく打撃を与える事象が起きており、各時期で押し並べて各媒体の広告費が下落しているのが一目で分かる。一方、下がり方やその後の回復動向は一様では無い。個々媒体の柔軟性、景気動向への適応力の相違が分かる。さらにマイナス域での値動きが多い「新聞」「雑誌」「ラジオ」は、中長期的に見ても厳しい状態に置かれていることは容易に想像できよう。



技術の進歩や社会情勢の変化に従う形で、需給は大きく変化していく。広告業界は他人に注目されるのが華であることから、他業種よりも敏感な対応性が求められる。そして業界全体としては金融危機や震災のような「アクシデント」により、敏感さと適応力が必要な状況におかれ、構造変化が起きている。またその変化による適応力の差が、それぞれの業界内の各媒体の成長動向に浅からぬ関係があるように見える。

今回月では多くの項目でプラスを示すこととなったが、その小さからぬ要因と思われる「2020年夏季オリンピック・パラリンピックの東京招致」に関する効果は、しばらく続く。それと共に、オリンピックに向けた周辺環境の変化に伴い、あるいは先行する形で、広告業界もさらなる変化が起きていく。広告費の増減だけでそのすべてを知ることは不可能だが、鱗片位はつかみ取ることができるはずだ。

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