ネット躍進、テレビも強め、新聞は去年の反動で伸びる(電通・博報堂売上:2013年9月分)

2013/10/10 11:30

博報堂DYホールディングスは2013年10月9日付で、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)における2013年9月の売上高速報を公開した。また電通ではそれに先行する同年10月7日に単体売上高を発表している。これにより日本国内の二大広告代理店における2013年9月次の売上データが出揃う形となった。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比を抽出、独自計算して各種グラフを生成し、それぞれの広告売上動向、さらには広告業界全体の動きの精査を行う。

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4マスはテレビと新聞が健闘、ただし後者は前年のリバウンド


データ取得元の詳細、各項目に関する算出上の注意事項については、まとめ記事【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で確認のこと。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年9月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2013年9月分種目別売上高前年同月比

2011年3月に発生した震災での混乱により、消費者の消費性向は大きな落ち込みを見せた。広告関連でもその影響は大きく、両社の売上もダイナミックな下げ方を記録している。しかし月日の流れと共にそれも収束に向かい、現在は震災より前における業界動向を基本的に継続する形で状況は推移している。

その流れは「従来型メディアの4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の影響力低下」「インターネットの伸長」というもの。一方で震災後は「テレビの復調」「従来型広告の復権」という流れも見えている。前者は高齢化に伴うテレビ視聴者の人口比率上の増加(概してシニアはテレビ好き)、後者は震災を経て中長期的に浸透しつつある節電志向によるものとされている。

今回の9月分を確認すると、4マスにおいては両社の新聞とテレビが大きくプラスの値を示している。きっかり1年前の状況を精査した記事で確認すると、新聞は電通がマイナス17.2%・博報堂がマイナス25.6%を示しており、その反動によるものと考えられる。実際、2年前比を算出すると新聞はそれぞれマイナス7.5%・マイナス21.5%であり、今月のプラスがリバウンドであることが十分理解できる。

他方テレビは前年同月では電通がマイナスだったものの博報堂はプラス、2年前比を算出しても両社ともプラスであることから、単純な反動ではなく、手堅い伸びを示していることになる。またインターネット広告は両社とも大きく成長。同項目は元々振れ幅が大きいが、この数か月は押し並べてプラスを維持しており、確実かつ堅調な伸びのさなかにある。

興味深いのは一般広告の動き。クリエーティブ部門がややへこんでいるが、それ以外は概して堅調。特にマーケティング・プロモーション部分が強い(博報堂の「その他」は昨年同月がマイナス41.7%だったことの反動。2年前比ではマイナス4.1%である)。

電通の総額推移など具体的金額をグラフ化してみる


次のグラフは電通の各年9月の広告売上総額推移を抽出した上でグラフ化したもの。同じ月の推移を確認することで、季節属性(季節や月により広告出稿の大小が生じる)に左右されることなく、年ベースでの該当月の動向を知ることができる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年9月、億円)(-2013年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年9月、億円)(-2013年)

電通の9月における総額動向を見ると、リーマンショック(2008年秋)、さらには震災(2011年3月)のダメージからはそれなりに回復した感はあるものの、直近の金融危機(2007年夏以降)直前の水準までにはまだ手が届いていない。先月は「手が届いていた」が、これはやはりオリンピック招致効果による一時的な底上げだったと考えられる。売上がこの水準で安定化するのか、あるいはさらに上昇を見せるのかは不明だが、景気動向に多分に左右されることは間違いない。

一方でこの電通の売上総額に限らないが、仮に昨年やそれ以前の売上総額を比較し、同レベルのものだったとしても、売上を構成する要素には過去と比べて大きな変化が生じている。具体的には上記にある通り「テレビ以外の4マスが漸減」「テレビ・インターネット・従来型が漸増」というもの。シェアも当然、少しずつ、確実に変化している。

なお今記事の最上位にある項目別の前年同月比を示したグラフは、あくまでもそれぞれの企業における項目別の比較。比率と金額を同じ目線でとらえてしまい、例えば「マーケティング・プロモーション部門では電通が8.2%・博報堂が24.8%だから、同項目の『売上』は博報堂が電通の3倍である」と誤解する向きがある。これはもちろん間違いである。

下記に具体例をいくつかグラフとしてまとめたが、個々項目では電通の方が概して額面は大きい。そして項目別では新興勢力の雄であるインターネット分野の市場規模は、従来4マスの最大勢力であるテレビにははるかに及ばない。

↑ 電通・博報堂DYHDの2013年9月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂DYHDの2013年9月における部門別売上高(億円、一部部門)

今月は先月に続き、電通のその他部門でオリンピック招致効果によるものと思われる東京本社での飛躍が著しく、これを受けて売上も伸び、博報堂との間で大きな差異が生じている(約12倍)。

震災直後に比べれば状況は改善されたが、以前として電力の浪費(と見られがちな見た目のもの)に対する風当たりは非常に大きい。むしろ無意識的に判断が下されている感すらある。新しい広告手法として注目されている「デジタルサイネージ(デジタル系、インターネット系技術を取り入れた従来型広告の発展版。液晶パネルの利用が多い)」も、この心理変化を受けて立場が弱くなっている。昨今の従来型広告の堅調ぶりも、電力関連での懸念が要らないことが一因だろう。

従来型広告、4マスに目を向けると、テレビの手堅さとテレビ以外の後退感が対象的。テレビの動きは上記にある通りシニア層によるところが大きく、質の向上の結果としての成果では無いのが残念。またそれ以外の3マスは「メディア力」「訴求力」が低下したと広告出稿側に判断されていると考えられるが、それが確かな認識なのか否かは、多くの視聴者が知るところではある。

2020年夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催決定で、広告市場もまた、それを見越した消費行動へのアプローチを始めている。一方消費税引き上げに伴う駆け込み需要への期待や、その後の反動への懸念も広告出稿には多分に影響する。今後電通・博報堂両社の広告売上もまた、小さからぬ動きを見せることだろう。

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