消費税引き上げ前の駆け込み需要やオリンピック期待で上昇…2013年9月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2013/10/09 13:45

内閣府は2013年10月8日、2013年9月時点における景気動向の調査、「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると現状判断DIは先月から転じて6か月ぶりに上昇して52.8となり、水準値50は上回る状態を維持した。先行き判断DIは先月から転じて5か月ぶりに上昇し54.2となり、引き続き水準値の50以上は維持している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は先月からやや上向きの「景気は、着実に持ち直している」となっている(【発表ページ:平成25年9月調査(平成25年10月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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オリンピックと消費税で左右される景況感


調査要件や文中のDI値の意味に関しては、今調査の解説記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらでチェックしてほしい。

2013年9月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス1.6ポイントの52.8。
 →6か月ぶりの増加。「良くなっている」「やや良くなっている」が増加、「変わらない」「やや悪くなっている」が減少している。
 →家計ではコンビニや飲食店で客足の鈍化による低迷があるものの、新型車や高額品の販売が堅調。消費税引き上げ前の駆け込み需要から住宅関連が好調で上昇。企業は受注や生産の増加、雇用は建設業などで求人増加により上昇。

・先行き判断DIは先月比で3.0ポイントプラスの54.2。
 →消費税値上げによる消費者のマインド低下への懸念はあるが、対応政策への期待やオリンピック、駆け込み需要などへの期待から全部門で上昇。
概してオリンピックと消費税に左右される感が強い景気動向という感はある。一方企業現状で受注や生産の増加という、確かな動きが確認できるのは喜ばしい話だ。

ファストフードの低迷感が実体化している現状判断DI


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向を簡単にではあるがチェックしていく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2012年9月)
↑ 景気の現状判断DI(-2012年9月)

今回発表分では飲食関連が客足の鈍化を受けてマイナス値を示している。この傾向は4月以降継続しているが、ファストフード業界全般の不調さがそのまま表れているといえる。中食の浸透に伴いスーパーやコンビニがシェアを侵食しているという状況が、改めて確認できる。

その飲食以外は押し並べてプラス。特に消費税関連で駆け込み需要が起きている住宅の上げ幅が大きい。一方、特需的なものではなく、非製造業で受注・生産の増加によるものと思われる大きめな上昇が確認できるのは頼もしい動き。またこれに合わせてか、雇用も60前後を維持し、安定した値動きを示している。

続いて景気の現状判断DIの動向を、資料にある長期チャートで確認する。主要指数の動向の中でも、傾向的に一番下落しやすい「雇用関連」の指数の下がり方が把握できるよう、前回の不景気時、具体的には2001年当時における下げの最下層時点の部分に赤線を新たに当方で追加し、昨今の動向との比較をしやすくする。

↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年9月)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)(-2012年9月)

2007年夏以降に顕著化し日本にもその波が到来した、世界規模の直近における金融危機・不景気(サブプライムローンショック)は、2008年後半に発生したリーマンショックを経て、事態はさらに悪化していく。各指数はITバブル崩壊時(2001年当時)を超えて下落し、ゼロすら目の前に迫る勢いとなる。その後リバウンドの形で上昇するが、経済そのものに加えて市民の心理が受けた傷は大きく、合計値は基準値50を超えるまでには至らず、天井とする形で推移する。

そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災で再び大きく、勢い的にはリーマンショック以上のスピードで各値は下落してしまう。リバウンドによる上昇で基準値50を超えることもあったが、通常の低迷感はより一層強いものとなった。

2012年11月以降は日本国内で大きな政情変化があり、期待感とその期待に応える形で株価・為替の動きが起き、各指数も上昇していく。今年春先以降は海外要因などを受けて勢いは停滞、失速の感はあるが、合計値をはじめ多くの指数が50超えを維持している。直近では消費税の引き上げ、オリンピックへの期待、昨年までの負の遺産ともいえる電気料金の値上げの圧力などが変動の主要因となっている。

景気の先行き判断DIも現状とほぼ変わらないが、飲食と住宅で現状とは正反対の動きを示している。これは前者が各種対応の成果を期待してのもの、後者が特需の反動懸念によるものである。

↑ 景気の先行き判断DI(-2013年9月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2013年9月)

もっともマイナス値が大きいのは住宅関係のマイナス4.8。これは直上にある通り消費税引き上げに伴う駆け込み需要への反動懸念、そしてこの数か月間に渡る景気回復期待からの急激な上昇に伴う反動によるものである。一方、雇用は現状値同様60前後をキープする安定した値動きが継続している。

次の折れ線グラフ上の過去の動きで確認できるが、雇用関連の値は他の指数に先行するパターンが繰り返されている。さらに雇用が合計を下回ると、(過去2回の事例では)大規模な「全体値」の下落、そして景気の落ち込みが生じている(2001年前半と2008年前半)。いわゆる「アノマリー」と呼ばれる類のものである。今回月では雇用値は前月から再びプラスに転じ、上げ幅も合計値以上のものを示している。現時点では景気下落の前兆となるアノマリー発生の状態には無い。

↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年9月)
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)(-2013年9月)

変動傾向は現状指数とほぼ同じだが、2007年夏の金融危機のぼっ発、そしてリーマンショック後におけるリバウンドなど、経済上の難局面における下落後における上昇時の戻りは、現状指数と比べると鈍い。これは先行きの不信感・不透明感が大きいのが最大要因。また日本人特有の心配性的な性質や悲観論志向も多分にある。「先の見通しが立たず、希望も持てず、心理的な『景況感の回復』が見られにくい状態」と考える人が多く、結果として値も低迷してしまうわけだ。さらに経済上の苦境に加え、先の震災が人々により一層のプレッシャーをかけることになる。

また現状指数と同じ事由による動きだが、2012年11月以降は政局の変化で今までの不透明感が大きく好転し、これまでとは異なる勢いでの上昇を見せている。そしてここ数か月はやはり現状指数同様にさまざまな要因から失速、不安定な値動きを示すこととなる。

消費税とオリンピックで一喜一憂


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたり、その判断理由を詳細に連ねたデータも収録している。そこでその中から世間一般で一番身近な「家計(現状・全国)」「同(先行き・全国)」の事例を抽出したのが次の一覧。

■現状
・現行の消費税率が適用される請負工事契約の締結時期の影響により、9月末までの契約を要望する客が大半であり、新築、リフォーム工事の商談及び受注は大幅に増加した(住宅販売会社)。
・上期は宝飾品、特選などの高額品が堅調に推移してきたが、その他の商品群でも単価上昇の動きが出てきた(百貨店)。
・新型ハイブリッド車の投入により、受注の勢いが増している(乗用車販売店)。
・消費税増税を控え、リフォーム案件、太陽光発電、大型家電の動きが良い(家電量販店)。
・今月中旬頃まで残暑が厳しく、秋物が苦戦したが、下旬になって気温が下がり、レディースを中心に秋冬物が動き始めた。トータルでは微減という感じである(衣料品専門店)。
・前年の記録的残暑の裏年のため、飲料やアイスの落ち込みが大きい。来客数への影響も顕著に表れている(コンビニ)。
・台風、大雨など悪天候が客足に影響し、連休中の来客数は前年を若干下回っている(高級レストラン)。

■先行き
・年末にかけて消費税増税前の駆け込み需要が徐々に増え始める。また、少しずつではあるが、冬の賞与の増額などで、経済政策のプラス効果を実感する層が拡大してくるとみている(百貨店)。
・オリンピックに向けて健康をキーワードにイベントを仕掛けて、売上を作っていく。消費税増税前の駆け込み需要に期待している(衣料品専門店)。
・消費税増税前の駆け込み需要などで大きい買物に回ってしまい、こちらには財布のひもが厳しくなるのではないかと思う(一般小売店[和菓子])。
・消費税率は引上げになりそうであるが、商材としては駆け込み需要は期待できない。むしろ増税が正式に発表されることで、しばらくは消費者の買い控えが出るように感じる(一般小売店[衣服])。
・注文住宅の受注については、9月契約の請負工事の消費税経過措置は終えるが、客の様子から、その後は、3月末引き渡し可能な建売棟の販売が見込める。しかしながら、今月と比べるとやや悪くなると考える(住宅販売会社)。
今年は去年以上の猛暑となったが、その分(台風などの多数到来もあり)残暑が比較的ゆるやかなものとなったため、9月における売れ行きについて小売などでの低迷感を覚える声が多い。また、消費税やオリンピックに関連する思惑が多業種に及んでいるのが分かる。

なお上記は家計動向のためほとんど目に留まる言及は無いが、為替動向に伴う企業の一喜一憂、原材料価格の値上げに伴い企業が経費負担の上昇に頭を抱える様子も見受けられる。



政策効果の
実態が少しずつ企業に
プラスの効用として
表れつつある。
消費税とオリンピックは
多種多様な業界へ
プラスとマイナスの効果を
波及的にもたらしている。
他方原材料費の上昇で
コスト高を懸念する企業も
増えている。
直近の不況は2007年夏にはじまる金融危機、リーマンショック、震災と、3つにも及ぶ要因で加速化し、人々の心に深く刻まれることになった。とりわけ震災は直接生命の危機にさらされる人が多数に及び、老若男女を問わず経験したこともあり、保守化・守りの傾向を色濃くしている。家族をはじめ身近な人たちとの絆を深める動きは喜ばしい話ではあるが、例えばそれに伴い中食のさらなる浸透により、外食から足が遠のくなど、これまでは想定しにくかった事態が生じている。

先日決まった2020年の東京オリンピック・パラリンピックを受け、マインド的な昂揚感は大きく、各方面で積極的な動きが見受けられる。少なくとも「先が明るい」見通しは、人々の心にプラスの影響を与え、消費性向をも後押しすることになる。

一方これまでの状態における負の遺産、電気料金の負担は家計だけでなく企業にものしかかっており、また外部的要因が強い原材料価格の高騰は確実に企業や家計への重圧として表れている。また消費税も業界によって多様な反応があるが、最終消費者となる世間一般の消費者の立ち位置としては、ネガティブな意見の方が多い。これが消費性向にマイナスの影を落とすのは容易に想像される。

今回月は現状・先行き共にプラスを示すこととなったが、次回月では消費税引き上げ確定後における、最初の測定結果となる。現時点ではアメリカの予算問題・債務上限問題の混乱が続いており、世界的に経済・金融面で不安定な状態となっており、これが日本にも影を落とし始めている。この流れがどのように影響を与えるのか、気になるところだ。

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