安定傾向続く、穀物は前月比6.1%の下落(2013年9月分世界食糧指数動向)

2013/10/07 15:45

2013年10月3日付で国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)は、毎月定期的に更新発表している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】の2013年9月分について発表を行った。この値は1990年以降にFAOが世界の食料価格の変化を月単位で定期的に集計、計算した上で発表している。今回は先月記事に続く形で、この9月分の最新発表値を基に複数のグラフを生成し、世界規模における食糧価格の推移を精査していくことにする。

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金融危機で上昇し、高値安定。昨今はいくぶん下げ基調に


今記事中にあるデータの取得元、用語の解説に関しては、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。そちらで確認してほしい。

最初に生成した図は、現時点の最新値(2013年9月分)までを反映させた、FAOで公開されている全データを使った折れ線グラフ。1990年以降の中長期的な食料価格の変移概要が一目で把握できる。概要を俯瞰できる点では有益なものである。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年9月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2013年9月)

砂糖は相場関係の話、あるいは物語でしばしば話題に登るように、価格変動性が高い食料品。その砂糖の動向を表す砂糖指数(グラフ中ではオレンジ色の線)は、他と比べると上下の値動きが激しく、その実態が明らかにされている。一方、それ以外の項目は大きな動きは無く、2005年前後までは下限を50、上限を150とした領域(水準値を100とし、プラスマイナス50内手のボックス圏)での値動きを示していた。

ところが2005年終盤以降、全体的に少しずつ上昇の気配を見せるようになる。そして直近の金融危機のきっかけとなる「サブプライムローンショック」(2007年夏-)の時期になると、大きく上昇の気配が見えてくる。その後は上昇の反動による急降下、さらには「リーマンショック」(2008年9月以降)を経て、現在の高値安定の動きに至る。2007年を区切りとし、平均がほぼ2倍から2.5倍に突如底上げされた雰囲気だ。

直近では2011年後半期から、各食品項目により下げ率に違いはあるが、少しずつ値を落としている。この数年間上昇一本槍の砂糖指数の動きもブレーキがかかり、さらには反動の下落状態に転じている。だが確実に下落を継続しているのは砂糖と油脂のみ。他は上下を繰り返しながらも全体的に高値維持の状態にある。またこの数か月に限れば、砂糖が底値を打って高値に転じ、穀物の急落の流れが確認できる。食糧市場にも新たな動きが見えてきた。

続いて、グラフ生成開始時期を金融危機が世界を動かし始めた2007年にして、描写対象期間を短くし、金融危機以降の動向を詳しく見ていくことにする。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年9月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2013年9月)

2010年初頭からジェットコースターのような急落と急上昇が砂糖指標で確認できるが、これは当時過熱感のあった砂糖相場において、豊作の報をきっかけとした相場反動(反落)が起きた結果が表れている。しかし中期的な価格上昇の原因となる「需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感」は解決しておらず、必然的に同価格は再び上昇している。

直近の一、二年では、2011年中旬の約400を天井に、そこから少しずつ、そして確実に値を落とす流れにある。やはり豊作による供給の増加、景気後退に伴う甘味需要の減退が主な原因。先月はこの後「各国で景気回復機運が高まる中、そろそろ反転の動きがあってもおかしくは無いのだが」としたが、今回月のデータを見ると、2013年7月を底に再び上昇に転じた気配がある。これが一時的なリバウンドでなければ、砂糖指数は再度上昇に向かうことだろう。

前月比と前年同月比の動き


昨今、さらには直近の食料価格の動向を確認するため、各指標の元値から「前年同月比」と「前月比」をそれぞれ算出し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年9月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2013年9月)

総合指数は前月比でマイナス1.9%と先月に続きわずかながら下落、前年同月比ではマイナス5.1%とこちらも先月同様の下落。全般的な指数の下げが昨年来、今に至るまで継続しているのが分かる。

個別項目を確認すると、前年同月比では乳製品が唯一大きなプラス。これは先月から変わらず。穀物・油脂・砂糖の3項目が大きなマイナスで、こちらも先月からの継続。一年間という流れでは、これらがそれぞれ大きな上昇、下降を示していることになる。

一方、前月比では穀物がやや大きな下げを見せているが、それ以外は概して小幅な値動き。この数か月に限定した値動きならば、各食糧価格は安定しているようだ。ただし穀物はやや下げ幅が大きく、砂糖は上げ幅が他と比べて大きめ。今後の値の変化につながる動きとなるのか、注視する必要がある。

特に穀物についてリリースでは「穀物指数は大きな下落。今回月で下落を示した主要因は、トウモロコシと米における大幅供給増加期待による価格下落を起因としている。一方、3か月連続して大幅下落の中にあった小麦価格は、南半球での需要増加と供給面での不安感を原因とし、ほぼ横ばいで推移することとなった」とコメント。今回月の下げが、主に米とトウモロコシの豊作期待による価格下落が原動力であることを説明している。

食糧を消費する需要側、生産をする供給側双方の立場から、食糧価格は安定することが一番望まれる形である。需要側は安ければ安い方が良いように思われるが、その状態が続けば供給側が疲弊し、生産力そのものが減退し、生産量が減少、そして価格は高騰しかねない。中長期的な視点では、需給共にそこそこ妥協できる線の維持が望ましい。

農林水産省のレポートで現状を確認


人口増加と諸国の生活水準の向上は概して継続的なものであり、食糧の需要は拡大する。戦争や大規模な疫病の発生など、イレギュラー的なマイナス要因が無い限りは、そしてかつての「緑の革命」のような劇的な食糧増産の仕組みが展開されない限り、中期的には相場動向による上下変動を経ながら、食糧価格は上がり続ける。

かつて原油輸出国だった国が、自国の発展と共に石油の消費量が増え、輸入国に転じる仕組みと同じである。さらに昨今ではバイオエタノールのように、直接口にする以外のルートからも需要が発生、拡大し続けており、価格上昇の機運はますます増加している。

今記事で毎月精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の2013年9月分で最新の動向を確認すると、監視対象の主要穀物品種すべて、小麦・とうもろこし・大麦・米で生産量が増加し、史上最高の量となる見込み。具体的項目では、小麦は作付け面積の増加、収穫効率の向上などで主要生産地域で増加。とうもろこしはアメリカの昨年における高温・乾燥からの復活とウクライナやEU、中国などでの増加。米はインドやタイなどで増産され、それぞれ史上最高の見込みが立っている。

一方消費量も小麦・とうもろこし・大麦・米の全項目で増加し、こちらも史上最高の量となる見込み。具体的項目ではとうもろこしはアメリカで飼料用・エタノール用、中国で飼料用増加による増加。米は中国やインドなどの需要増で増加し、それぞれ史上最高を見越している。

結果としては期末在庫量見込みは生産量が消費量を上回ることから、前年度より増加して4.7億トンとなり、期末在庫率も19.5%と上昇する見込み。つまり9月時点における穀物需給予測動向は、8月から大きな変化はないことになる。上記で「価格そのものは安定の方向にある」としたのは、これも一因である(ちなみに期末在庫量予想値は前月から0.1億トン増加している)。

昨年はアメリカや欧州を中心とした高温・干ばつに伴う食糧生産量の減少で食糧事情の悪化が懸念されたが、現在はその危機感を覚える状況からはいくぶん改善の動きを見せ、在庫予想も増加傾向にある。しかし気候は人の手でコントロールできるものでは無く、それに容易に連動する食糧生産量もまた、自然任せの部分が多い一方、消費量は継続的に増加し続けていることを忘れてはならない。

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