欧州全体ではやや改善の動き、ギリシャの若年層失業率61.5%に…EU失業率動向(2013年8月分)

2013/10/02 11:30

EU(欧州連合)内外の統計情報を整理集約し、各媒体で提供をし、各国の政策を統計情報の面で支援するEU統計局(Eurostat)は2013年10月1日、関連諸国の失業率データに関して最新値の2013年8月分を公開し、その分析レポートも合わせて発表した。今回はその値を基に、主にEU諸国における失業率、とりわけ若年層の値にスポットライトをあて、状況の精査を行う。今回月では一部諸国でさらなる悪化があるものの、全体としては改善の動きが見受けられる。

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ギリシャ全体では悪化中、まもなく28%に


データ取得元の詳細、グラフ中などに出てくるEA17・EU28の構成国、状況の変化については一覧ページ(【定期更新記事:ヨーロッパ諸国の失業率動向(EU統計局発表)】)上の解説部分をしてほしい。

ILO基準における2013年8月時点の失業率は次の通り。EU28か国では10.9%・EA17か国では12.0%を記録している。双方とも先月分(速報値から修正済み)と変わらないものの、直近のピーク(それぞれ2013年4月の11.0%、6月の12.1%)と比べると横ばい・やや下落の動きを示しており、欧州地域全体における失業率動向は改善の雰囲気を覚えることが出来る。

このグラフもあわせ今記事では、直近2か月分のデータがEurostat上で未収録だった場合、掲載時点で公開されている最新月分のデータを代用している。例えばギリシャは今回更新時点では2013年6月分までの値(27.9%)が公開されているため、ここでは8月分として収録・掲載している。

↑ 2013年8月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)
↑ 2013年8月時点でのEU諸国等の失業率(季節調整済)

今回月も失業率トップはギリシャとなり、スペインはそれに0.7%ポイントの僅差をつけての2位。ギリシャの値は上記にある通り最新値は2013年6月時点のもののため、単純比較はやや問題があるが、同月の値同士で両国の値を比較すると、スペインは26.3%。やはりギリシャの27.6%の方が上。

今回最新値を入力した上で気になる点は、上記にある通り全般的としての天井感、そして一部の国における継続的な悪化。見方を変えれば全体的な回復基調に、一部の国が取り残されている感がある。例えば今回、前月比で0.5%ポイントの悪化を示したキプロスだが、同国の失業率は上昇する一方である。
↑ 2012年5月-2013年8月でのキプロスの失業率(季節調整済)
↑ 2012年5月-2013年8月でのキプロスの失業率(季節調整済)

これは何度となく繰り返し解説しているが、同国は欧州債務危機においてホットスポットの一つにあたるギリシャと深い関係があり、そのあおりを大きく受けているのが要因。この1年で5%近い失業率の悪化を示しているとなれば、雇用市場はもちろん、経済状態そのものの悪化も手に取るように分かる。

このキプロスに限った話ではないが、グラフの左側に位置する、つまり失業率の高いポジションの常連国、具体的にはスペインやギリシャ、クロアチア、ポルトガルなどは、財政・債務問題で話題に登る国々でもある。失業率は雇用市場の問題が単独で発生しているのではなく、経済・財政問題と深い連動性を示しているのが理解できよう。

今回も該当月の前月(2013年7月)の値との差異を算出し、その結果をグラフ化する。Eurostatでは最新値を発表した際に過去データも逐次修正しているため(これは各国が発表しているデータそのものが変更されるのが原因)、前月分もその修正を反映した上で算出されている(【Data Explorer】上の値を使用)。

↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年7月→2013年8月)(またはデータ最新一か月前→最新)
↑ EU諸国等の失業率変化(プラス=悪化)(季節調整済・2013年7月→2013年8月)(またはデータ最新一か月前→最新)

経験則的上、国内人口の少ない国では統計値がぶれやすい。またそれとは別に誤差が生じやすい国もある(毎月数か月分の修正が行われる国もある)。そこで今件ではプラスマイナス0.5%ポイント以内は「誤差」と見なし、留意対象からは外している。その観点で見ると、上記で言及したキプロスの悪化ですら一応「0.5%以内」となるのでチェックからは外れてしまう。もっとも同国の状況が悪い方向に進んでいるのは上記に示している通りで、今後さらにこのペースで悪化が続けば、クロアチアを抜いてギリシャ・スペインに次ぐ失業率を示すことになる。なおアイスランドの改善は多分にぶれの部分が多いので、今回は言及しない(同国は人口が少ないため、他国よりも振れ幅が大きい)。

ギリシャ6割継続、スペインも悪化中…若年層失業率


先進諸国・中堅国の失業問題で、特に注目を集め問題視されているのが、雇用上の立場では弱い立場の若年層における失業率。直近の2013年8月時点では25歳未満の失業率はEA17か国で23.7%・EU28か国でも23.3%を記録しており、5人に1人以上が失業状態にある。とはいえ上記の「就労可能世代全体における失業率」の改善同様、若年層でも全体としてはほんのわずかながらも改善の雰囲気が感じられる。

全体の失業率上位でもお馴染みのギリシャの61.5%(2013年6月)、スペインの56.0%を筆頭に、クロアチア、キプロス、ポルトガルなど、経済的に不安定な状態にある国の高さが際立つ。特にクロアチアは全体の失業率ではスペイン・ギリシャと比べて10%ポイント前後の差異があるにも関わらず、若年層失業率ではその2国に競る状況に陥っており、同国の雇用市場、特に若年層の雇用状況が著しく劣化していることがうかがえる。

↑ 2013年8月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(8月データが無い国は直近分)
↑ 2013年8月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率(季節調整済)(8月データが無い国は直近分)

↑ 2013年8月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(8月データが無い国は直近分)
↑ 2013年8月時点でのEU諸国等の25歳未満の失業率・前月比(季節調整済)(8月データが無い国は直近分)

上記にある通りプラスマイナス0.5%ポイント以内を誤差基準としているので、今回月ではノルウェーの悪化、スロバキアの改善が確認できる。ノルウェーは現時点でもEU非加盟国なので今回は言及を避けることにする。一方スロバキアでは直近における経済関係のニュースは見つからなかったものの、欧州全体同様に去年の末から今年の頭をピークとし、失業率の上では改善の動きを示しており、今後の動向にも期待が出来る。

↑ 2012年5月-2013年8月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スロバキア)
↑ 2012年5月-2013年8月での25歳未満の失業率(季節調整済)(スロバキア)

若年層の1/3近くが失業状態にある状況は健全とは言い難いが、少なくとも見通しの上では期待がもてそうな動きをしているのが幸いである。もう少し状況の改善がはっきりとしたものとなれば、EAやEU全体とも合わせ、中期的な動向を確認することにしよう。



欧州の債務問題は「緊縮一本槍」から「緩やかな緊縮と経済の成長」へとかじ取りを変えている。先日もIMFが性急な歳出削減は避けるべきであるとの言及をしており、その方針を再確認できる(【IMFが性急な歳出削減警告、財政健全化への具体策示さず(ロイター、2013年9月18日付)】)。これもIMFや欧州委員会、構成各国が(一部を除き)債務問題において最大の山場、危機を脱したとの認識に基づいた判断といえる。

例えるならば現在は緊急手術を終え、ICU(集中治療室)から、24時間モニタリングを行う個室の病室に移されたようなもの。要安静には違いないが、この時点で劇薬を与えては再び病状が悪化しかねないという次第である(先のIMFの警告でも財政緊縮化が急すぎると成長への期待が失われ、それが投資家の信頼を損ない、状況がさらに悪化してしまうと指摘している)。

一方、上記のキプロスに代表されるように、全体としては状況が安定・改善化にある中で、さらに雇用情勢が悪化する動きが確認できる国もある。雇用市場がその国の経済すべてを指示しているわけではないが、重要な指針には違いない。他国と異なる方向性を示すこれらの国々の動向を、今後も注意深く見守る必要があろう。

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