ID交換掲示板から複数交流型へのシフトの流れ…警察庁、子供のネットトラブル現状報告発表(2016年)(最新)

2016/04/15 11:09

警察庁は2016年4月14日付で、2015年通期における「出会い系サイト」などに関連した事件の検挙状況をはじめ、各種インターネットと児童に絡んだ諸犯罪に関する現状の報告書「平成27年における出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」を発表した。それによれば2015年通期における「出会い系サイト」の被害児童数は93人で前年同期比マイナス50人と、減少の傾向にあることが分かった。他方「コミュニティサイト」(以前は「出会い系サイト以外のサイト」と呼ばれていたもの。SNS、プロフィールサイト、掲示板など、ウェブサイト内で多人数とコミュニケーションがとれるウェブサイトのうち、出会い系サイトを除いたものの総称)では、被害児童数は1652人で前年同期比で231人のプラスとなった。なお被害児童数において「コミュニティサイト」は「ミニメール型」「チャット型」「ID交換掲示板」「複数交流型」で大別されているが、個々のサービスの上位3サイトの被害者合計を比較すると、2014年ではもっとも数が多かった「ID交換掲示板」が大きく減った代わりに「チャット型」「複数交流型」が大きな増加を示している。警察庁では「ID交換掲示板やミニメール型は継続して減少しているが、複数交流型は増加傾向。チャット型は前半年期比では減少したが以前として多い傾向にある」とし、コミュニティサイトにおける被害数の増加に対し警告を発すると共に、被害児童の多いサイトにおける被害実態把握のための詳細調査の実施、さらにはその調査結果を踏まえた事業者対策の実行を求めている(【警察庁:サイバー犯罪対策リリース・統計一覧ページ】)。

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出会い系は減少、ID交換掲示板も規制強化で減少するが…な被害児童数動向


子供のネット界隈での問題は【子供がネットトラブルを起こしそうな場所、親はちゃんと把握して……ない!?】【多種多様な問題点が浮き彫りに...シマンテック発・子供のインターネット利用実態】など、多数の事例で解説している通り、従来型携帯電話、スマートフォンなどのインターネットへアクセスできるデジタル機器が若年層に浸透していくにつれ、これまで想定できなかったような問題が発生し、深刻化している。それに伴い、運営各企業やセキュリティ関連会社をはじめ各方面で対策や啓蒙が行われている。

警察庁では今件のように半年おきに出会い系サイトなど、インターネットを介して発生する子供の「リスク」事例を集計精査データ化し、公開している。その公開統計値が確認できる2008年以降の動向を見るに(今回発表分から集計の仕切り分けが再構築された)、「リスク」の発生場所がかつて社会問題化しスポットライトを浴びた出会い系サイトから、一般的なコミュニティサイトに移りつつあることを再認識させられる。さらにそのコミュニティサイトにおいても、不特定多数同士が交流する場におけるやりとりによる事案では無く、当事者同士が直接対話・チャットを行える無料通話アプリのIDを交換する掲示板(ID交換掲示板)を介して生じる事案も生じるなど、新しいシステムを用い、規制の網を潜り抜けるべく、問題構造が常に形を変容する状況が把握できる。

今報告書にまとめられている2015年通期分までの値の限りでは、コミュニティサイトで生じる「リスク」が出会い系サイトをはるかに超える値であること、そしてこの数年では双方とも減少傾向にあったものの、2013年通期でトレンドが転換してコミュニティサイトは大幅な増加(悪化)に転じてそれが継続中であること、そのトレンド転換も新しいスタイルのサービスでの事案の増加と規制強化、新たなサービスへのトレンドシフトとそのサービスでの被害数の増加といった、いたちごっこ的な状況の中で生じていることが確認できる。

また被害事案の多分において、フィルタリングを利用していなかったことも明らかにされている(直近2015年通期では利用の有無が判明した被害児童のうち非利用者は94.8%にも達している)。

・ミニメール型…コミュニケーションの主たる手段として面識のない利用者同士がミニメールなどにより交流するコミュニティサイト

・チャット型…コミュニケーションの主たる手段として面識のない利用者同士が1対1のチャットにより交流するコミュニティサイト

・ID交換掲示板…コミュニケーションの主たる手段として面識のない利用者同士が無料通話アプリのIDを交換することにより交流するコミュニティサイト

・複数交流型…上記以外で広く情報発信や同時に複数の友人等と交流する際に利用されるコミュニティサイト

↑ 主なコミュニティサイト種類別の被害児童数推移(-2015年通期)(各種類ごとに被害児童数の多い上位3サイトの合算)
↑ 主なコミュニティサイト種類別の被害児童数推移(-2015年通期)(各種類ごとに被害児童数の多い上位3サイトの合算)

↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数推移(2015年上半期と下半期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数推移(2015年上半期と下半期)

↑ 出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の被害児童数(人)
↑ 出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の被害児童数(人)

・各種規制の強化や啓蒙が実を結び、出会い系サイトによる児童の問題数は減少傾向。

・コミュニティサイトの児童関連問題は増加の一途にあった。しかし2010年で頭打ちとなり、2012年までは減少傾向を見せた。ところが2013年に入るとID交換掲示板が大いに悪用され、ミニメール型は減っているものの、チャット型や複数交流型と合わせ、被害数は増加。コミュニティサイト全体としての被害児童数は増加(悪化)に転じてしまっている。その傾向は2014年でも継続。

・2015年に入ると各種規制や対応に伴い、ID交換掲示板は大きく減少する。しかしチャット型や複数交流掲示板の増加傾向は止まらず、コミュニティサイト全般の被害数は増加を継続する形となっている。

出会い系サイトは、2008年の「出会い系サイト規制法」の改正により事業者の届け出制が強化され、さらに各種フィルタリングが功を奏する形となり、現在に至っている。コミュニティサイトでは出会い系サイトからの転向組も後押ししたこともあり、計測を始めた2008年以降増加を続けていた。しかし2011年から2012年には各種啓蒙・規制の厳格化に伴い、減少傾向を示していた。ところが2013年は継続して大幅な増加が確認されている。

これは「LINE」に代表される無料通話アプリの加速度的な普及で、そのIDを交換する掲示板をトリガーとした事案が大幅に増加したのが原因。スマートフォンをはじめとした各種モバイル機器の若年層における急速な普及浸透に伴い、ソーシャルメディアなどの利用者数自身が急増したものの、それに対する規制も強化されたことで、運営側が状況を把握しにくく規制で取り締まりにくい、ID交換掲示板に加害者側が大きくシフトした形だった。

そして上記の通り、そのID交換掲示板でも規制が強化されると、IDを交換した上で大手のサービスでやり取りをするのではなく、直接チャットによる交流サイトや普通の情報を交換するサイトなどを通じての被害が再び増える事態となっている。特にID掲示板の規制強化後は、直接1対1のチャットが可能なチャット型サービスによる被害が急増している。

例えば今回の報告書にある検挙事例の表記では「コミュニティサイトで知り合った女子児童」「無料通話アプリで知り合った女子児童」とあり、IDベースの出会い系サイト的なID掲示板では無く、何らかの手立て(通常の情報のやり取りを不特定多数間で行うコミュニティサービスでの情報発受信や、チャットサービスにおける検索)を用いて特定の個人へのアプローチの符牒を手に入れ、それを元に1対1のチャットで意思疎通をはじめていることが示唆される。例えるならば街角の電信柱で見かける「家庭教師募集」の貼り紙と電話番号が書かれた切り取り用の用紙が切り取り線付きで用意されている状況が、ネット上で展開されている次第である。

次のグラフは上記の年ベースでは無く、半年ベースでの主要コミュニティサイトにおける被害児童数推移。

↑ 主なコミュニティサイト種類別の被害児童数推移(人)
↑ 主なコミュニティサイト種類別の被害児童数推移(人)

チャット型は直近半年期では減少に転じているが、その分複数交流型が増加しており、上記の例ならば直接チャット型の検索機能などでアプローチの相手を抽出するのではなく、普通の交流型サービスで相手を特定した上で、そのサービス自身またはチャット型サービスに移行して事犯に及ぶ事例が増えている状況を示唆するものとなっている。

低年齢層が多いコミニティサイト関連事象


今回発表された報道資料によると、変化傾向としてスマートフォンの利用が増えていることが確認されている。もっとも児童が利用する携帯電話はその多くがスマートフォンである以上、被害者における利用端末がスマートフォンが多数に及ぶのも当然の話。他方、パソコン経由の被害数は減っているが、「その他」の値が増加(2014年は90人、2015年は135人)しており、例えばゲーム機やタブレット型端末、携帯音楽プレイヤーからの利用による被害が増加している点には注目すべきである。

↑ コミュニティサイトにおける被害児童のアクセス手段(人数)(2010年は重複換算)
↑ コミュニティサイトにおける被害児童のアクセス手段(人数)(2010年は重複換算)

コミュニティにおいて問題の発生を完全に防ぐことは難しい。また確率論的視点で見れば、対象人数が増えるほど問題事案「数」も増加する。だが「比率として低いから『多少の問題件数は仕方ない』と妥協する」わけにはいかないのが犯罪であり、その防止対策である。

「コミュニティサイト」は元々普通のコミュニケーションを行うための場所であるのに加え、昨今では端末利用者の低年齢化に伴い、出会い系サイトと比べて参加年齢層が幅広く、結果として児童被害者が出会い系サイトよりも低年齢なことも問題視されている。コミュニティサイトでは特に相手の素性(とりわけ年齢)が分かりにくいのも要因に違いない。もっとも今件報告書の事例では「被疑者(中学生・男・14歳)」との表記もあり、被害側だけでなく加害側もまた児童である可能性は否定できない。

↑ 出会い系・コミュニティサイトにおける児童(18歳未満)の被害者数(2015年通期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトにおける児童(18歳未満)の被害者数(2015年通期)

15歳以下で区切れば「出会い系」が全体の40%なのに対し、「コミュニティサイト」では49%とほぼ半数に達している。

携帯電話キャリア、そして携帯電話上で運用される各種サービスを提供する業界としては、急速に若年層にも普及するスマートフォン向けのサービスにおいて、十分過ぎるほどの安全性を確保し、今回対象となった事案の発生確率を極力下げ、ゼロを目指す最大限の努力を継続する責務がある。特に情報機密性が高い無料チャットアプリ・通話アプリの場合、IDの交換は電話番号・住所の交換に等しいことを啓蒙し、未成年者の利用について十分以上の注意喚起を成し、必要に足る規制を行う必要が求められる。

同時に保護者や教員など児童の周囲に居る人達もまた、啓蒙・周知を徹底しなければならない。そのためには自らも状況の正しい把握と学習が求められる。携帯電話(とりわけスマートフォン)やインターネットの利用が「当たり前」となった現在では、保護者による子供への啓蒙・周知責任は、日常生活を安全に過ごしていくには欠かせない一般常識「電話のかけかた」「横断歩道の渡り方」「信号の意味」「お買い物の仕方」と同レベルの重要性を持つことを心がけねばならない。

さらにコミュニティサイト経由を問わず、画像・映像の提供は(昨今の炎上事案に代表されるように)プライバシーの観点で非常にリスクが高いこと、ましてや対象がどれほどまでにていねいな、大人しい対応をしていたとしても、若い年齢であることを語っていたとしても、見知らぬ対象との直接の対面は大きなリスクを伴う事実を十分以上に認識させる必要がある(その語りが事実である保証は無く、さらに語りの通りの年齢だとしてもそれが安全を保証するものにはならない)。

抜本的な対策がなされない限りコミュニティサイトを用いた事案は今後も増加を続け、近い将来には資料タイトルから「出会い系」が抜け、「コミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について」になりかねない。もっとも、コミュニティサイトは基本的にインフラのようなもので、利用そのものは便利なことこの上なく、事案の多分はその悪用によるもの。コミュニティサイトを用いた各種事案を皆無にするとの題目は、自動車事故を無くす方法論の模索に等しいところがある。

関係方面は最大限の知恵を働かせ、努力を尽くし、より使いやすく安全なサービスの提供にまい進することを願いたい。


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