2016年9月の熱中症での病院搬送者は4012人、前年同月比では2588人多い値に

2016/10/14 05:08

総務省消防庁は2016年10月12日付で、同年9月の熱中症を起因とした全国の救急搬送の状況(確定値)を発表した。それによれば同年9月における熱中症による救急搬送者は4012人となった。前年の同月の値である1424人と比較すると、2588人の増加となる。一方、搬送者の年齢階層別では同一条件下で比率算出が可能な2008年以降で比較すると、高齢者(65歳以上)の全体比は中期的に増加しており、公開値において最古の値となる2008年の同月比では6.7%ポイント増の43.0%を計上する形となった(【消防庁:発表リリース一覧ページ】)。

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今年の9月は秋雨前線が本州付近に停滞しやすかった影響や台風がたびたび接近・上陸したことによって、東・西日本、沖縄・奄美では曇りや雨の日が多く、月間日照時間がかなり少なかった。特に、西日本日本海側では月間日照時間が平年比64%に留まり、統計を開始した1946年以降で最も少ない値を計上している。中旬の終わりから下旬の初めにかけて北・東日本を中心に一時的に寒気が流れ込んだ他は、強い寒気の南下はなく、日本の南海上で太平洋高気圧が強かったこともあり、南から暖かい空気が入りやすく、気温は全国的に高く、沖縄・奄美ではかなり高かった。地域別動向でも西日本の搬送者数が増加しており、中でも10万人当たりの搬送者数では「全国の比較で」鹿児島県がもっとも多く9.70人、熊本県が7.44人、宮崎県が7.06人と九州の各県が上位を独占する形となっている。

今回の発表によれば、2016年9月の全国における熱中症による救急搬送人員は4012人。昨年2015年は1424人、よって約182%の増加となる。

↑ 熱中症搬送人員(2010-2016年、各9月、人)
↑ 熱中症搬送人員(2010-2016年、各9月、人)

↑ 熱中症搬送人員(2010-2016年、各9月、人数比)
↑ 熱中症搬送人員(2010-2016年、各9月、人数比)

気象状況に多分に影響を受けるため(特に2009年は冷夏的な状況となり、非常に少ない値を計上している)多少のぶれを見せながらも、新生児・乳幼児、少年、成人の搬入者数は全体としては減少傾向にある。高齢者も数は減っているものの、減少度合いは中堅層までと比べるとやや穏やかで、全体比率を算出すると逆に増えている結果となっている。これは高齢者の人数そのものが増加の一途をたどっており、気候状況などで熱中症リスクの軽減が生じても、母数が増えていることで人数の減少度合いがおとなしめになってしまった結果による。さらに高齢者区分に属する人において、一層歳を取っている人の数・割合が増加している(高齢化・高寿命化)のも要因と考えられる。

直近となる2016年では高齢者の全体比率は前年に続き4割を超えて43.0%。これは記録が確認できるもっとも古い2008年の値と比べると、6.7%ポイントの増加となる。なお8月と比べて高齢者の比率がやや落ちているのは、9月に入ると学校などで運動会の準備が行われ、その練習により集団の熱中症の発生・搬送事例が多分に生じ、少年区分の人数・比率が上昇するからに他ならない。

搬送時の初診傷病程度は次の通り。人数は毎年の搬送者数全体に寄るところが大きくまちまちだが、比率で見ると大よそ軽症が7割、中等症が1/4強で推移している。

↑ 熱中症搬送人員初診時傷病程度(2010-2016年、各9月、人)
↑ 熱中症搬送人員初診時傷病程度(2010-2016年、各9月、人)

↑ 熱中症搬送人員初診時傷病程度(2010-2016年、各9月、人数比)
↑ 熱中症搬送人員初診時傷病程度(2010-2016年、各9月、人数比)

ちなみに各症状の具体的内容は次の通りとなる。

軽症:入院を必要としない程度

中等症:重症または軽症以外の病状

重症:3週間の入院加療を必要とするもの以上

死亡:医師の初診時に死亡が確認されたもの

「軽症」と「重症」の容体を比較した上で勘案すると、「中等症」とは「3週間未満の入院を必要とするもの」と判断できる。つまり「重症ほどではないが、搬送時には相当状態が悪化しており、入院措置が必要な状況」。本人の無理がたたった、または他に誰もいない環境下で気を失い、第三者による発見が遅れたことが想定できる。見方を変えると2016年9月の該当期日においては、ほぼ7割の熱中症による救急搬送者(緑色の領域)は入院をせずに済んだことになる。

自分自身への注意を怠りなくするのと共に、異常を覚えたらすぐに水分補給、涼しい場所への移動、楽になる姿勢を保つなど各種対応を行うのは常識論のレベル。それと同時に身の回りに体力の不安な人(療養中や病症で通院中の人)、身体の衰え(老化)などの理由から適切な反応が期待できない人が居る時には、積極的に声をかけるなどして、熱中症の発生を極力防ぐ姿勢を望みたい。

なお熱中症は短時間で具体的な発症が生じるケースが多々あるため、対応策では無く予防策、さらにはリスクそのものを避ける行動選択がベストとなる。具体的には日頃から十分な睡眠と栄養補充による体力の充足、適度な温度設定によるエアコンの稼働のある場での生活活動を心がける、日が差している時には極力外出を避けるなどである。特に子供やお年寄りは、自分の体力の上限を把握しきれず、気が付くとリミットを超えた行動をすることから、周囲による留意が欠かせない。

なお今回の確定報により今年分を反映することができた、各年6月分以降の累積搬送者数の動向は次の通り。2008年・2009年は7月からの計測となっているため、7月分以降の累計の動向も併記しておく。

↑ 夏期熱中症救急搬送人員(2010-2016年)(各年6月-9月までの累計)
↑ 夏期熱中症救急搬送人員(2010-2016年)(各年6月-9月までの累計)

↑ 夏期熱中症救急搬送人員(2008-2016年)(各年7月-9月までの累計)
↑ 夏期熱中症救急搬送人員(2008-2016年)(各年7月-9月までの累計)

報告書では注意事項として「熱中症を予防するには、こまめな水分補給、エアコン・扇風機を用いた室温調整及び適度な休憩をとること等が大切です。また、高齢者は暑さを自覚しにくいため、喉の渇きを感じにくく、小さな子供は汗腺が未熟なため、体温調整がしにくいという特徴があります。周囲の方の気遣いが熱中症発生の予防につながります」とし、熱中症発症への注意喚起を行っている。

熱中症への対策は、多分に身体の健康管理そのものにもつながる話。これまでの経験、情報を有効に活かし、体調全般を管理する視線で自分の、そして周囲の体を気遣い、その中で熱中症に対する注意と配慮をしてほしいものである。


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